軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

57話 再び原発跡地へ

ダンジョンの深層に飛ばされたり、ギルドの女の子に嫌われたりと色々とトラブルで、のびのびになっていた原発処理の仕事を再開することになった。

前と違うところは、姫とカオルコが一緒のとこか。

俺から未整備のダンジョンの話を聞いて、行きたくなったのだろう。

役所の担当である晴山さんに相談して、一緒に行けることになった。

3人で原発跡地に到着して、仕事を始める。

晴山さんのあとをついて現場に到着すると、真新しいプラ製のタンクが6つあった。

中にはすでに、処理水が満タンに詰められている。

タンクはアイテムBOXの中に10個入っていたが、ダンジョンの中に3つ投棄してしまい、残り1つには、ダンジョンのお湯が入っている。

そういえば、お湯の使い道がないんだよなぁ。

売ったりしてなにか問題があるとマズイし。

アイテムBOXに残っているタンクは6つだ。

「それじゃ、俺の収納に入っている残りのタンクを出しますね」

スペースを作ってもらい、白い巨大なタンクを6つ並べた。

俺が帰ってくるまでに、このでかい入れものに処理水を満タンにしてもらう。

「おおお~!」「相変わらずスゲー!」「今日は偉いべっぴんさんを連れてるじゃねぇか」

現場の作業員たちも、姫たちの存在が気になっているようだ。

まぁ、仕方ない。

ここには、あまり女性がいないしな。

姫たちはローブを深く被り身体を隠しているのだが、その下はビキニアーマーやら乳暖簾装備だ。

そんなのを見たら、驚いて夢に出るかもしれんな。

「収納!」

処理水が入っているタンクをアイテムBOXに入れた。

「ありがとうございます」

「残りの日数はどのぐらいですかね?」

「この感じだとあと数日で終わるかと」

「本当にあと少しってところで、トラブルに巻き込まれてしまいましたから……申し訳ない」

「いえいえ、総理としてもこちらとしても、無理をいっている自覚があるので」

「いやぁ、怒っているんじゃないかなぁ――と、暗いダンジョンの中で悩んでいました」

「そんな――命が危ない状態で、それどころでは……」

「まぁ、そのとおりなんですが、ははは」

晴山さんの話では、ダンジョン内の事故ということで、もう俺は戻ってこないんじゃないか?

――ということになっていたらしい。

戻ってこないとなると、かなりの量の処理水を処分したあとなので、あとは自力でダンジョンまで運んで投棄する。

そういう計画が上がっていたようだ。

8割~9割ぐらいは完了しているので、あとはそれでなんとかなるかもしれない。

「さて、行きましょうか?」

「はい――あの、のこりわずかでヘリは使えないということで、私の車で移動になってしまうのですが……」

「ああ、構いませんよ」

行って30分、帰って30分って感じだ。

残りも少ないし、慌てることもない。

「ありがとうございます」

彼女と一緒に車の所に向かう。

「彼女たちは、処理水を捨てる未整備のダンジョンに潜ってみたくて、ここまでやって来たんですよ」

「ああ、やはりそういうことでしたか」

「ご迷惑をおかけいたします」

「そんなことありませんよ」

桜姫が来るということで、色々と改善されたことがあるらしい。

「……」

姫たちが後ろをついて来る。

駐車場に到着した。

「あれ? 今日は車が違いますね?」

前は普通のワゴンだったが、黒いワンボックスカーになっている。

その隣には、白いキャンピングカーが停まっている。

キャンピングカーというか、マイクロバスサイズだな。

見たこともない車種なので、特注だろうか。

「あはは――あの、桜姫さんたちが来るということになったら、車が提供されてきまして……」

どうやら、これが改善されたことらしい。

「へ~、コレは上等な車ですね」

「こちらのキャンピングカーもそうですねぇ」

「ええ? スゲー!」

これで、完全お泊りOKじゃねぇか。

さすが金持ちのレベルが違う――マジ半端ねぇ。

「でも、お偉いさんの御子息が来るから現場をすぐに掃除しろとか、片付けろとか――突然の命令があったりして」

現場の様子を告げ口されるとか思ったのだろうか?

「はは、それは良し悪しですねぇ」

「くっ!」

後ろで姫が、複雑な顔をしている。

本人は家を出たつもりだが、飛行機といい車といい、グループの掌の上だ。

これじゃ、本人だけの実力で成り上がったと言うのが難しい。

まぁ、生まれついてダイヤモンドの匙を持っている時点で、そもそもが違うんだし。

「姫、この車に乗りたくないなら、お留守番しててもいいけど」

「そんなことをするはずがないだろ!」

彼女がスライドドアを開けると、カオルコと一緒に勝手に後ろに乗り込んだ。

「地上を走って、変な連中に襲われたりしないでしょうね?」

「はい、護衛はついているから大丈夫ですよ」

「襲われた部隊に、生き残りが1人いましたが、なにか解りましたか?」

「いえ~、あの――私にはなにも聞かされていないので……」

「それじゃ総理に聞いたほうが早いか」

「そうですねぇ」

俺は助手席側のドアを開けた。

ありゃ、狭い――そう感じた。

シートのすぐ後ろに窓がついた壁があるのだ。

これじゃ、シートを後ろに下げたり倒したりはできないな。

完全にショーファードリブンの車だが、普段の車と比べて格段に上等なのは間違いない。

「こんな高そうな車を運転するのは初めてですよ」

晴山さんが、あちこちをいじっている。

「運転、大丈夫ですか?」

「ええ、平気ですよ」

車はしずしずと走り出した。

高い車だけあって、乗り心地がいい。

「これって、使えるのは姫が来ている間だけですかね~」

「多分、そうだと思いますよ。回収されるまで使わせていただきますけど」

彼女がハンドルから手を離している。

AIの自動運転に対応しているらしい。

後ろと前を護衛っぽい車がついてきているような気がする。

とくに今回は、八重樫グループのご令嬢たちも乗っているし、なにかあったら政府の面子が潰れるだろうしな。

姫たちは、お気楽についてきたかもしれないが、現場はてんてこ舞いのはずだ。

もしかして、恨まれているかも……。

車はAIの運転で順調に走っていく。

世界が静止する前に、高速などで自動運転が実現していたが、今は物資不足なのでコストが優先されており、高級車――しかもオプションでしか搭載されていない。

「は~、こいつは楽ちんだな」

「そうですよね~」

自動運転といいつつ、彼女は前を見ているし、ハンドルに軽く手を添えている。

100%信頼できるものではないからだ。

「む~!」

「うわ!」

突然、後ろの窓から姫が顔を出していた。

昔、映画で観たシーンがフラッシュバックしてしまう。

「ダーリンは、私のダーリンだぞ!」

姫はわけのわからないことをいい出した。

「ええ?! 丹羽さんと桜姫さんってそういうご関係なんですか?」

「そりゃそうだよ。それでなきゃ一緒に来ないでしょ?」

「え~タダの冒険者仲間かと……お歳も離れてますし……」

「離れろ~」

今度は窓から手が出てきた。

「サクラコ様! いい加減にしないと、ダイスケさんに嫌われますよ」

「ぐぬぬ……」

「すみません、ちょっと車を止めていただけますか?」

「は、はい」

彼女が自動運転から手動に変えて、道端のスペースに一時停止した。

ドアを開けて、後ろに移る。

姫が、うるさいから仕方ない。

「ダーリン!」

姫が俺の膝に乗って抱きついてきた。

「あいたた、ちょっとアーマーがあるから、あまり強く抱きつかないで――すみません、晴山さん」

「大丈夫ですけど――ちょっとお待ちください」

「はいはい」

「車の機能を調べているので――あった! これかな? 『聞こえますか?』」

車のスピーカーから、晴山さんの声が聞こえてきた。

「ああ、なるほど、これで後ろと前とで会話ができるんですね」

『そうです』

「姫、これで話すならいいだろ? 仕事の話もあるし」

「……いいけど」

「面倒くさ……」

カオルコが呆れた顔をしている。

「面倒って言うな!」

『それじゃ出発します~』

「すみません」

『いいんですよ』

車が走り出した。

『丹羽さん、ダンジョンの深層ってどうなってたんですか?』

晴山さんが、それについても聞きたいと話していたな。

もしかして、総理が聞きたがっているのかもしれない。

「天井が高くて、ドラゴンなどの大型の魔物がいましたね」

『丹羽さんの動画で観ましたよ! すごく大きかったです!』

なんだ、動画観ているなら、どういう所か解っているんじゃないのか?

「あと、未整備なので崖などが大変でしたね。それをクリアするためにタンクを使ったりしてしまいましたが……」

『ああ~なるほど、そういうわけですか』

「あと、温泉がありましたよ」

『え?! 温泉ですか?!』

「はい、7層ですね。あそこまで攻略が進んで、鉄道などが通るようになれば、観光地やら宿ができるかも」

「無理だろう――魔物が強力すぎる」

姫が茶々を入れてきた。

「あそこは安全地帯になっている感じだったから、通路さえ確保できたら、だめかなぁ~」

『すごい! 楽しそうですねぇ』

「ちっとも、楽しくなんてないが」

どうにも姫は、俺と晴山さんが、楽しそうに会話をしているのが気に入らないらしい。

まぁ、ダンジョンに到着したら、姫とカオルコは中に入ってみるのだろうし、俺は跡地に戻らなければならない。

帰って30分、戻って30分――つまり1時間ある。

そのときに、色々と話せばいい。

「はいはい、わかった。姫はヤキモチ焼いているんだよねぇ」

「そんなもの焼いてないが……」

「可愛いね~」

なでなでしてやる。

姫のご機嫌を取りながら、ダンジョンにやって来た。

駐車場に車を止めて皆で降りると、警備員が立っているゲートを通る。

以前とは風景が違う――重機の台数が増えて森が切り開かれていた。

本格的にダンジョンを整備するのか、それともなにか他の施設を建設するのか。

4人で一本道を歩いていくと、谷間にコンクリートで固められたダンジョンの入口が見えてきた。

ヘルメットを被った作業員がなん人かいて、作業を行っているようだ。

「お疲れ様で~す!」

「う~っす!」「っす!」

晴山さんが声をかけると、男たちの反応が返ってきた。

作業服を着た現場監督らしき人が走ってきて、彼女と打ち合わせを始めたので、俺はダンジョンの入口に向かう。

「アイテムBOXの人~今日はドンパチはないだろうな~?」

髭面の作業員が話しかけてきた。

前にいたと同じ人か?

「はは、大丈夫だと思いますよ」

「だといいがねぇ」

「あの騒ぎのあとも同じ職場で作業してるんですか? 根性ありますねぇ」

「わはは、ここは給料がいいからなぁ」

男と話していると、作業員が集まってきた。

新しい若い子もいるようだ。

アイテムBOXから缶コーヒーを出して配ってやる。

晴山さんは、民間人からものをもらうと収賄になるからと断っていたが、作業員はいいのか。

「おっと、こいつはかっちけねぇ」

「お、江戸っ子だね?」

「ははは、食いねぇ食いねぇ、寿司食いねぇ」

「ナンスカ、それ?」

オッサンのギャグに、若いやつらが白い目で見ている。

「若い人たちは、ここで銃撃戦があったって聞かなかったのかい?」

「いやぁ、聞いたっすけど……ぶっちゃけ金がいいんで。そのときにも死んだやつは出なかったって話ですし……」

「まぁ、そうだけどなぁ――そちらの女の人は?」

「あの美人さんたちは、あそこのダンジョン目当てにやってきた冒険者なんですよ」

姫たちの紹介をする。

「へ~、スゲーんだな」

作業員の中の若い男が手を挙げた。

「あの――あの人たちって、もしかして――桜姫さんとエンプレスさんですか?!」

「はは、そうだよ。彼女たちも大概有名人だな」

「すげー!」

男たちと話していると、晴山さんが走ってきた。

「丹羽さん、OKです!」

「よっしゃ、それじゃ始めるかぁ!」

「「「おう!」」」「っす!」

「姫たちは、ちょっと待っててくれ」

「いったいなにをするんだ?」

「タンクの水を捨てるんだよ」

俺はダンジョンの入口に陣取ると、アイテムBOXからタンクを出した。

「「「おおお~!」」」

久々なので、また作業員たちから歓声があがる。

「あとは頼むよ」

「よっしゃ!」

作業員がタンクに群がり、下についているバルブを開くと水が勢いよく流れ出た。

その音は徐々に増していき、ついには轟音となり、巨大な滝のようだ。

水はダンジョンの中へと急降下し、地面にぶつかると激しい音を立てて跳ね返る。

その勢いで周囲に水しぶきが飛び散り、空気中には微細な水の粒子が舞い上がった。

流れ出る水の量は圧倒的で、すごい迫力だ。

子どもの頃、川などをせき止めて小さなダムを作ったことがあるが、溜まった水を一気に解放するときがたのしい。

こいつはそれを拡大したようなもので、ちょっとワクワクしてしまう。

水の流れは一瞬も途切れることなく続き、力強い流れはダンジョンの中の瓦礫を押し流し、道を切り開いていく。

周囲の土や石が洗い流され、流れる水によって形成された新たな経路が見えてくる。

その流れは川のように幅広くなり、地面を覆い尽くしていく。

その光景は、水の持つ圧倒的なエネルギーを感じさせる。

ダイナミズムってやつだ。

すぐに空になったので、タンクを収納して、次のタンクを出して水を流す。

これの繰り返し。

楽な仕事だが、アイテムBOXというチートがなければ、かなり大変だろう。

大型トレーラーなどで、タンクを運んできて、クレーンで釣り上げて――。

しかも、ダンジョンの入口では通常の重機は使えないから、蒸気クレーンかなにかで……とまぁ、考えるだけで気が遠くなるな。

最後のタンクを出したところで、姫たちの所に戻ってきた。

「姫、すぐに流し終わるから、そのあとなら入ってもいいと思うぞ」

「承知した」

「けど、水で押し流されてしまって魔物はいなくなっているかも」

「雑魚には用はないから、構わん」

「俺が原発まで行って帰ってくるまで1時間しかないけど……?」

「1時間だな――よし!」

「大丈夫か?」

「戻っていなかったら、そのまま流し込んでも問題ない」

姫の言葉に俺は呆れた。

「はぁ? 本当か? そういうことを言うと、マジでやるぞ?」

「どんとこい!」

マジかよ――まぁ、高レベル冒険者が、水で流されたぐらいでどうにかなるはずもないような気もするが。

「まぁ、タンクから出た水も最初は勢いはよいが、徐々に拡散していくだろうから、深層では大した流れじゃない気もするし」

「私も、そう思います」

カオルコがそう言うと、自分のアイテムBOXから時計を出した。

ダンジョンの中は電気が使えないので、機械式のアナログクロノグラフだ。

たくさんの冒険者が求めるため、機械式の時計の値段が高騰しているという問題もある。

世界が混乱している中で、新しい機械式の時計などあまり生産されていないからな。

かつては世界の工場だった大陸も、混乱の真っ只中だし。

そんなわけで、かつては安価で売られていた某国産の機械式時計などが人気になっている。

これらは、有名な機械式ムーブメントのコピーであり、性能も中々よい。

名機のコピーなので、修理できる人が多いなどのメリットもある。

人によっては昭和の時代に使われていたピンレバー式の腕時計などを使っている人もいるようだ。

まぁ、眼の前にいる2人が使う時計となると――そんな安物の筈がない。

なんだかすごいクロノグラフを持っている。

多分、1つ数百万円とかするやつだろ?

ダンジョンは姫たちに任せて、俺と晴山さんは、原発跡地に戻ることになった。

来るときには、俺と彼女が一緒なのを怒っていた姫だが、今は意識がダンジョンのほうへいってしまっている。

余計なツッコミをせずに、彼女の機嫌がよいうちに速やかに行動する。

「彼女たちは大丈夫ですか? ここは完全に未整備なんですが……」

晴山さんが、2人の心配をしている。

「2人ともトップランカーだし、ヘーキヘーキ」

「なにかあると、私たちが困るのですが……」

「そのときは、冒険者なんて最初からいなかった――もしくは、未整備ダンジョンに勝手に潜り込んだでいいよ。冒険者ってのは、すべて自己責任だし」

「う~ん」

彼女も困っているのだが、総理が冒険者の参加を了解したってことは問題ないってことなんだろう。

姫たちがダンジョンに入るのを見送ると、俺と晴山さんは車に戻った。

「ふう……」

「あの――」

「なんですか?」

「おふたりがお付き合いしているのは、本当ですか?」

「これまた、藪から棒ですね」

「すみません」

「本当ですよ」

晴山さんが、車を発進させた。

「いったい、どういった経緯で――やっぱり、冒険者仲間でのおつき合いですか?」

「ダンジョンの深層に飛ばされたとお話ししましたよね?」

「はい」

彼女が、車を自動運転に切り替えた。

「あの2人も飛ばされていたんですよ。そこで地上まで戻るために協力しているうちに、意気投合って感じですかね~」

「そ、それじゃ――丹羽さんが、ここで作業をしていたときには、おふたりはつき合っていなかったんですか?」

「まぁ、そうですねぇ」

「はぁ~~~~」

俺の話を聞いた彼女は、デカいため息をついた。

「なんですか、そのため息は?」

「現場にいたときに、アタックしていれば私にも可能性があったってことですよね?」

「はぁぁぁぁぁ?」

俺は突然の彼女の言葉に素っ頓狂な声を上げてしまった。

「あ、あのとき、行動していれば……」

「こんなオッサンにマジなの? なんの取り柄もない普通のオッサンなんだよ?」

「え?! アイテムBOXがあるじゃないですか! それに、とんでもない大金も稼ぎそうですよ!」

「まぁ、そう言われればそうですが……」

オッサンというのは障害にはならないんだろうか。

「はぁぁぁぁぁ」

彼女がハンドルに突っ伏した。

そんなにショックなことなのだろうか?

ここで言い寄られても、乗り換えるつもりなどは、毛頭ないのだが。

気まずい雰囲気のまま、車は走り続けて、原発跡地に帰ってきた。

俺が置いていったタンクには、すでに処理水が満タンになっている。

空になったものを出すと、満タンのタンクを再びアイテムBOXに収納した。

車に乗り込むと、ダンジョンに戻る。

しばらくはこれの繰り返し。

普通なら、美人と一緒でそれなりに楽しいドライブになるはずが、少々気まずい。

2人で黙っていると、彼女が口を開いた。

「現地妻とか、愛人でもいいですよ?」

「はぁ? この仕事がない時代に、1種公務員になったんだからもったいないじゃない」

「そ、それはそうなんですけどぉ……」

なんだ、働きたくないんだろうか?

いくら金があっても、たかられるのは嫌だなぁ……。

なにか目指していて、援助してください――ってのなら、話は解らんでもないのだが。

「とりあえず、女には困ってないので、遠慮するよ」

「え~? 丹羽さんって、そんなにモテモテなんですか?」

「こんなオッサンなんだが、なぜか最近モテる。もしかして、冒険者になったせいかもな、ははは」

高レベルになったのも、本当に偶然なんだが。

「ううう……完全に乗り遅れた」

「乗り遅れるとかそういう問題なのかな?」

「これって千載一遇のチャンスでしたよ?」

「まぁ、俺もまさかあんなことになるとは、つゆ知らずだし」

「やっぱり、『これは!』ってときに、ガーッ! っといくべきでしたね」

普通に公務員の仕事をこなしているだけのように見えたのだが、こんなことを考えていたとは……。

呆れていると、彼女がブラウスのボタンを外し始めた。

「ほら! 実は胸もあるんですよ!」

彼女が胸の谷間を見せつけてきた。

やりたい盛りの高校生の男の子なら喜ぶかもしれんが、オッサンに見せられてもな。

「ほう?」

「揉みます?」

「晴山さん――実は痴女の人だったのか……」

「ち、痴女じゃないですから! なんですかもう! こんな恥ずかしいことをしてるのに!」

「こんなオッサンじゃなくて、同僚の男の子を捕まえなさいよ。省庁勤めなら、みんな高給取りじゃないか」

「むう……」

彼女は納得しない様子だが、しらんがな。

しょーもないことを話しつつ、ダンジョンに戻ってきたのだが、姫たちが戻っていない。

「ああ、しゃーない。約束どおり、そのまま進めるぞ~」

「え?! いいんですか?」

作業員たちも心配している。

「ああ、いいよいいよ。高レベル冒険者はそう簡単には死なないから。ポーションもたくさん持っているし」

カオルコが持っているアイテムBOXに、俺が渡したポーションが入っている。

結構な数が入っているので、問題ないだろう。

俺がアイテムBOXから出した巨大なタンクから、大量の水がダンジョンに流し込まれる。

6基全部のタンクを空にしたのだが、姫たちが戻ってくる気配はない。

排水が終わると、晴山さんと一緒に車に戻り、原発跡地へ向かう。

何回か繰り返していると、姫たちがダンジョンの中から帰ってきた。

ほら、やっぱり問題ない。

そんなことを数日繰り返す。

夜は、跡地にあるキャンピングカーに泊まるが、中には生活に必要なものはすべて揃っている。

装備も豪華で、申し分なし。

姫たちとの無制限1本勝負にもびくともしない。

そんなことを繰り返し、処理水も残りが少なくなったある日――。

最後のタンクを空にする頃には、上空にはオレンジ色のグラデーションがかかり始めた。

「今日は、これで終わりだな」

「そうですね……でも、女性たちが戻ってきませんよ」

「時計を持っているから、そろそろ夕方だって解っているはずだが……」

ダンジョンの内部では多少の時間のズレがあるのだが、このぐらいではそんなに違いはないはず。

皆で姫たちを待っていると、なにやら地鳴りが響いてきた。

「な、なんだ?!」「地震か?!」

作業員たちも、周りを見渡している。

地震にしてはちょっと変だ。

ダンジョンから伝わってきているような気がするのだが……。

「ダ――――リ――――ン!」

ダンジョンの暗闇から、姫の声が聞こえる。

「どうしたァァァ!」

どうやらただごとではないことを直感した俺は、アイテムBOXからミサイルを取り出した。

「丹羽さん!」

「晴山さんは、作業員たちを避難させてください!」

「はい!」

俺はミサイルを抱えて、ダンジョンの中に突入した。