軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

56話 お仕事の続きだ

いきなり大学のセンセに呼び出されて、ダンジョンに軽く潜った。

彼女は俺が仲良くなったハーピーを見たかったらしい。

俺が本当に魔物と意思疎通ができているのを見て、驚いていた。

お礼ということで――俺と姫の新人類計画に参加してくれることに。

専門家がアドバイザーとして参加してくれるというのはありがたい。

八重樫グループにも専門家はいるようだが、姫やカオルコの感じからすると、あまり関わり合わないほうがよさそうな人みたいだし。

追加のお礼をもらった俺は、ホクホクでダンジョンから出た。

それにしても――最近、普通のオッサンの俺がモテすぎじゃね?

高レベル冒険者になって、隠されているステータスの数値が色々と上昇しているのではなかろうか?

そんな具合に勘違いさせるぐらいに若い子にモテモテだ。

冒険者やって金を稼いだら、すぐに故郷に帰るつもりだったが、こういう生活もいいかもな。

――なんて思い始めた。

俺の歳なら、そろそろ老化が始まるのだが、高レベルの恩恵があれば老化も遅らせることができるかもしれない。

そう考えると、冒険者を続けるのにもメリットがある。

まぁ、それでも限界はあるとは思うが……。

俺はホテルに帰ろうとしたのだが、途中でオガさんに捕まった。

ここでも、彼女と1本勝負をしてしまう。

飯さえ食えば疲れしらずなので、いくらでも楽しめる。

この万能感は捨てがたい。

高レベルになると、勘違いするやつがでるのも頷ける。

俺はオガさんとの勝負を終えるとホテルに帰った。

「おかえり~ダーリン!」

ソファーに座っていたのは、姫と同じ顔だが、彼女ではない。

姫の姉である、カコだ。

「遅い! 武器屋に行くだけって言ってたのに!」

その正面に姫が座っていて、俺の帰りが遅かったのを怒っている。

「ちょっと知り合いに会ってしまって、ダンジョンのことなどで、話し込んでしまったんだよ」

もちろん嘘だが、半分は本当。

「……特区に、知り合いとかいたのか?」

「世界が静止する前は、俺は東京に住んでいたからな」

「あ、そうなんですか?!」

俺の言葉にカオルコが驚いている。

「そうなんだよ。ちょっと里帰りをしてたら、世界が止まって帰れなくなってしまった」

「東京にあった家などはどうなったんですか?」

「もう帰れないから、そのままだよ。処分もできなかったし、大家や不動産屋にも連絡もつかなくなってしまったので」

そのあとはなしくずしだが、結果どうなったのか、まったく解らない。

幸い実家には、暮らしに必要なものは全部揃っていたので、なんとかなった。

これが、旅行先で巻き込まれたなんて人は、相当苦労しただろう。

「そういうことだったんですねぇ」

本当に世界中が身動きとれなくなってしまい、ゼロからのサバイバルみたいになってしまったからな。

田舎で畑はあったし、自給自足ができてマジで助かった。

命を落とした人もたくさんいただろう。

「それはそうと、カコさんはダーリンは止めてくださいよ」

「いいじゃない」

「よくないぞ! 私のダーリンだ!」

「「ぐぬぬ……」」

姫とカコが睨み合っていると、スマホに連絡が入った。

資源エネルギー庁の晴山さんからだ。

『追加のタンクの製作も完了いたしました。そろそろいかがでしょうか?』

「問題ありません。こちらのトラブルで中断してしまい誠に申し訳ございません」

『いえいえ、大変な目に遭われたので、仕方ないことだと思ってますから』

――というわけで、原発の仕事の続きをすることになった。

残っている処理水も、あと少しだからな。

「姫、俺はちょっと仕事に行ってくるよ」

「ど、どこへ?!」

「北の、原発跡地だ」

「そんな所に仕事があるのか?」

「ああ、アイテムBOXを使う仕事なんだよ」

「む~」

「近くに、未整備のダンジョンもあるぞ」

「本当か?!」

姫が食いついた。

一緒に行ってダンジョンに潜りたいらしいのだが、これは政府の仕事だしなぁ。

「そこって、以前にダイスケさんが話されていた?」

「ポーションを沢山ゲットしたって場所な――担当の役人に聞いてみるよ」

「頼む」

姫はもうウキウキで、ついてくる気満々なんだが……どうかなぁ。

「本当に未整備のダンジョンだから、なにもない可能性もあるぞ?」

「わかっている」

「潜っている時間もそんなに取れないかも」

「承知した」

まぁ、ただ一緒に行きたいだけなのかもしれないが。

晴山さんにメッセージを送った。

「高レベルの冒険者が同行希望なのですが、駄目でしょうか?」

『え? 同行者ですか?』

「やっぱり、だめですかねぇ」

『ちょっと問い合わせてみます』

「よろしくお願いいたします」

『ちなみに――同行者の高レベル冒険者というのはどなたでしょうか?』

「トップランカーの、桜姫とエンプレスという方々です」

カオルコに確認は取ってないが、多分行くのだろう。

ギルドメンバーだし、いつも姫と一緒だしな。

『承知いたしました。しばらくお待ち下さい』

しばらく待つ。

「どうだ?!」

姫が俺にだきついてきた。

「まだ、わからないよ。今、問い合わせてもらっている」

「ダイスケさん。どうやって、そこまで行くんですか? 車ですか?」

カオルコの言葉に俺は上を指した。

「ここの屋上に、ヘリの迎えが来る」

「それなら、1人2人増えても問題はなかろう」

「いや、2人乗りの小型ヘリなら、無理だぞ?」

「む~」

姫が不満気な顔をしているのだが、これは国の仕事だし、致し方ない。

待っていると晴山さんから、連絡が来た。

『OKです!』

「本当ですか? ありがとうございます」

まさか、OKが出るとは。

まぁ、こちらとしては助かるがな。

それにしても、あんな所に行っても面白いとは思えんがなぁ……。

「サクラコばっかりずるいんだけど!」

カコが突然怒り始めた。

「別にずるくはないだろう。お前は、母上の下でこき使われていればよい」

「相手は、お父さんじゃなくて、お母さんなんだ」

「八重樫グループの実権は母が握っているからな」

どうも、グループは代々女系家族みたいだな。

お父さんはマスオさんか。

カコは、母親の手伝いをしながら、グループを継ぐための帝王学みたいなものを学んでいる最中らしい。

「すごいじゃないか。八重樫グループといえば、世界に名だたるトップ企業だろ?」

「ええ、まぁ……」

「もう、世界を手中に収めたようなものじゃない?」

「そ、それはそうなんだけど……」

「生まれついて銀の匙っていうけど、銀どころか、ダイヤモンドだな」

「……」

「私は、それが嫌だから、家を出たんだ」

姫はそう言うのだが、持たざる者から見たら贅沢な悩みにしか見えない。

「姫も自分の力で、トップランカーになったんだから、それは凄いよな。自分の力が本物だと示したわけだ」

「ふふ、そうだろう」

「それにつき合わされているカオルコは大変だろうけど」

「もう、慣れました」

カオルコはなにやら悟った顔をしているのだが、彼女も彼女で、トップランカーに名前を連ねているのだから、能力はすごい。

冒険者稼業だけではなくて、事務や他のグループとの折衝もしているしな。

政治家などになっても、イケちゃうタイプではなかろうか?

あの胸で表舞台に立ったら、姫より人気がでてしまうかもしれん。

「私だって、好きでやっているわけじゃないのに……」

俺たちの話を聞いていたカコがつぶやいた。

「なんだ、そうなのか。それならお前も家を出ればよいだろ?」

「……」

姫の言葉にカコは黙っている。

おそらくは家を飛び出して、1人でやっていくという自信はないのだろう。

ダイヤモンドの匙を持って生まれてきた子が、いきなり貧乏な生活ができるはずもないし。

まぁ、そこら辺の冒険者たちには縁がないような金額の貯金はあるとは思うが。

姫にしても、最初は家の威光を借りていたはずだしな。

全部まっさらなゼロの地点から始めたわけではないだろう。

所持金ゼロと、所持金1億――どっちが楽かといえば、一目瞭然だし。

「さぁ、これからダーリンと勝負しなければならないんだ。部外者は帰った帰った!」

姫はカコの手を取ると、グイグイとドアの方に押し始めた。

冒険者のパワーに、対抗はできないだろう。

「ちょ、ちょっと、それが姉に対する態度なの?!」

「私は実家とは縁を切ったから、関係ないな」

「ちょっとぉぉ!」

カコが通路に放り出された。

「可哀想じゃない?」

「甘やかすと、つけあがるから駄目だ」

「そうなの?」

カオルコのほうを見ると、困った顔をしている。

「下手をすると、ダーリンのことを狙ってくるかもしれん」

「ああ、その感じだと、カコさんは駄目なのね」

「当たり前だ!」

姫の感じだと、カコについて触れるのはアウトっぽいな。

なんだかんだと、姉として慕っているのかもしれない。

まぁ、OKな子が沢山いるし、わざわざアウトな子に手を出すこともない。

それじゃ、姫と無制限一本勝負といきますか~。

なんか今日は勝負してばっかりだな。

――センセとダンジョンに潜った次の日。

アイテムBOXに入っているもので朝食にする。

姫とカオルコは、ルームサービスで頼んだサンドイッチを摘んでいる。

ホテルのビュッフェスタイルのモーニングもあるようなので、そういうのを利用する手もあるな。

ああいうのは、似たようなものばかりなので、たまに食うなら美味いんだけどなぁ。

毎日だとすぐに飽きそうではある。

食事をしていると、メッセージが来た。

晴山さんからだ。

9時には、迎えが来るらしい。

人数が増えたのは伝えてあるし、許可も取ってあるので、やってくるのが小型ヘリってことはないだろう。

またティルトローター機だろうか。

あれは飛ぶスピードが速いから、いいよなぁ。

「姫、9時に迎えが来るそうだから、準備をしてくれよ。化粧するから遅れると言っても、待ってはくれないぞ?」

「そんなこと言うはずがない」

「はは、そうか。ウチのギルドメンバーはそういうことを平気で言うやつだったから」

「苦労したのだな」

「姫はあまり化粧してないが、カオルコはしてるな。さすがに深層に飛ばされたときには無理だったろうけど」

「まぁ、一応……」

「……ダーリンは、化粧をしたほうがいいと思うか?」

「え~? まぁ、男はあまりそういうの気にしないからなぁ」

合コンやら婚活パーティで一発狙いってのなら、化粧で完全武装して注目を浴びる作戦もありだとは思うが……。

「そ、そうなのか?」

「あ、いや――あくまで俺というオッサンの意見だから、参考にしないでくれ。とにかく、俺は化粧の有無はまったく気にしない」

だいたい、田舎で畑仕事をするなら、そんなの関係ないし。

日焼け止めぐらいは塗るだろうけど。

「そうか」

「なにかイベントや、式典のときだけでいいんじゃない?」

「そういうときには、さすがの私もするぞ?」

「ははは、ダンジョンの中じゃ、日焼け止めを塗る必要もないしな」

「あ、それはありますね~」

カオルコもそこは同意するようだ。

日焼けすると染みも出やすいしな。

姫はいつものビキニアーマースタイルにローブを被る。

カオルコは、下乳が眩しい乳暖簾スタイル。

「やっぱり高性能なドロップアイテムだと外せないか?」

「は、恥ずかしいのですけど、背に腹は代えられないので……ダンジョンに入れば、誰もいませんし……」

まぁ、普通は2人が潜るような深層なら、そうそう冒険者はいない。

そこまで到達できるのは一部の限られた高レベル冒険者だけ。

俺はいつもの近代的な黒いアーマーを装着した。

誰かの言葉であるが、「当たらなければ、どうということはない」のだ。

いくらドロップアイテムが高性能でも、オッサンの恥ずかしい格好はなぁ。

美人でスタイルがいいなら、エンプレスみたいな格好も様になるのだが……。

オッサンじゃ、ギャグにしかならん。

準備万端完了すると、時間になった。

ヘリポートの使用は、ホテル側に確認済みなので、いつも案内してくれるお姉さんがやって来た。

カチャカチャとアーマーを鳴らして、廊下を進む。

「勝手にヘリポートに上って、勝手に飛んで行くのに……」

「そうは参りません」

一応、なにかあったときのために、担当と責任者が必要なのか。

決められた手順をちゃんと踏んでないと、事故ったときに保険が出ないとかな。

警備会社などは、服装がちょっと違っただけでも、問題になるとか聞いたことがある。

中々やってこないので、屋上からの映像を撮る。

前にも撮ったが、前と違う場所も写してみよう。

動画を撮っていると、轟音が聞こえてきた。

「あら……」

空を飛んでくる機体を見て、カオルコが声を上げた。

「どうした?」

「ウチの機体ですね」

「はい?」

白いティルトローター機だが、確かに自衛隊ではない。

「私たちが移動するということで、グループが出してきたんだろう……」

姫は家を出ていると言っているけど、こういうのを見ると完全には出ていないよな。

まぁ、親御さんとしても心配なのだろう。

それは解る。

轟音と、台風のような風とともに、大きな鳥が舞い降りてきた。

タラップになっている扉が開くと、晴山さんが手を振っている。

急いで、扉の所に駆け寄った。

「無理を言ってすみません!」

「いいえ! こんな立派な機体を貸していただいて!」

轟音の中の会話なので、相変わらず大声になってしまう。

「む!」

俺の担当が女性だったので、また姫が警戒している。

そんな手当たり次第に手なんて出しませんよ。

そりゃ、晴山さんが色々なお礼を俺にくれるというのであれば、やぶさかではありませんけど。

中に入ると、以前に乗った自衛隊機とはまったく違う。

自衛隊機は、飛行機の骨組みが見えていて、簡素な椅子がある程度だったのだが。

豪華なラウンジになっていて、高そうなソファーやテーブルが並んでいる。

その機体前方には高そうな白い革張りのシート。

これだけで数百万はしそうだなぁ――と、考えていると、シートの1つから手が挙がった。

「よぉ!」

ダーク色のスーツの男がこちらを見た――総理大臣だった。

「おはようございます!」

「離陸するので、シートについてください」

晴山さんに言われて、滑る革のシートに座ると、シートベルトを締めた。

姫たちも一緒に座ってベルトを締める。

『離陸します』

飛行機のスピーカーから声が聞こえてくると、エンジン音が高くなる。

一瞬無重力を感じると、飛行機は空に舞い上がった。

どうやら八重樫グループの民間機のようなので、防音対策もしてあるらしい。

普通に会話できるぐらいに静かだ。

辺りを見ても、護衛機などはいない感じか。

もう、外敵の脅威はないと見ているのだろうか?

「総理もお仕事で移動ですか?」

「いや、それもあるんだが……」

彼が姫のほうをチラ見している。

「彼女になにかご用ですか?」

「はは――まぁ、用事っちゃ~用事なんだが……」

どうも歯切れが悪い。

飛行機が水平飛行に入ったが、この機体なら目的地まですぐだ。

「なにか?」

姫も総理の視線に気がついたようだ。

「いや――君のご母堂にはいつもお世話になっているよ」

さすが、八重樫グループの総帥ともなると、1国の総理ともツーカーか。

「母は関係ありません」

「ははは」

取り付く島もない姫に、総理が苦笑いをしている。

冒険者にとって大事なのは、天にも地にも自分の実力だけ。

総理のコネも威光も、異空間の暗闇の中では通用しない。

「いやぁ――ウチの孫娘がな……」

「孫娘さんがいらっしゃるんですか?」

姫が無言なので、俺が話し相手になる。

「そうなんだよ。その子が、桜姫の大ファンでな」

総理の様子が、なんだか変な理由が解った。

「あ~、昔ならサインとかなんだろうけど、今はこういうときなにをするのかな?」

「……写真……かな?」

姫も戸惑っているようだ。

「姫、写真撮ってもいい?」

「いいが……」

「総理、写真でいいですかね? まさか、昔みたいに色紙を持ってきてたり?」

俺の言葉に、総理が気まずそうな顔をしている。

「す、スマン!」

彼が自分のカバンから、色紙とマジックを取り出し、俺たちの前に差し出した。

「色紙なんて、今でも売っているんだ」

「これをどうするの?」

彼女も色紙をもらって困惑しているらしい。

「サインとか書いたことがない?」

「え? そんなのないが……」

なんかすごい世代ギャップが。

「コレに名前を書くんだよ」

「あ~、なにか見たことがあるかもしれん」

専用のサインなどは、ないようなので、桜姫とだけ書いてもらうことに。

孫娘さんの名前も教えてもらう。

「……カオルコ――◯◯って、どういう漢字だ?」

「ちょっとまってください」

カオルコがスマホで検索をしている。

「この飛行機の中でもスマホが使えるんだ」

「使えますよ」

これは彼女たちの実家グループの機体だと言ってたので、仕様は知っているのか。

カオルコから漢字を教えてもらい、姫が色紙に自分の通り名を描いた。

孫娘さんの名前入りだ。

「う~ん……」

言っちゃ悪いが――下手だな。

昔は習い事の定番で、書道などがあったのだが、今は違うのだろう。

八重樫グループのお嬢様というと、色々と習い事をやってそうではあるが……。

「……」

自分でも下手だと思っているのか、姫が顔を赤くしている。

「大丈夫大丈夫、可愛いよ」

姫が書いた証明として、色紙と一緒に写真も撮った。

「超お嬢様というと、子どもの頃から習い事三昧のような感じだと思ったのだが……」

「サクラコ様は、そういうのが大嫌いで、逃げ回ってましたので」

姫が書いたサインを、総理に手渡した。

「政治家は儀式的に毛筆で書くことがありますから、書道をやってる人が多そうですね」

「そりゃ、1国の総理なのに字が下手だったら、格好がつかんだろ?」

「そりゃそうですねぇ――というか、ちょっとがっかりしますよ」

「ははは。そういう感覚がない政治家もいるんだがな」

それはともかく、姫のサインをもらった総理も嬉しそうだ。

総理も、孫には弱いのか。

「晴山さん、この機体はダンジョンのヘリポートに直接?」

「あ、いえ――新しいタンクが跡地にあるので……」

「了解です」

俺がダンジョンの中に捨ててしまった、タンクの補充をしなければならない。

あの山間のダンジョンだと運ぶのが難しいのだろう。

曲がりくねった道で、デカいトレーラーが進むのは難しいだろうし。

飛行機は原発跡地に到着した。

徐々に丸いタンク群が近づいてきたのだが、かなり解体され始めているようだ。

アイテムBOXに入れたまま、どこかに捨てられれば処理が簡単なのだが、そうは上手くいかない。

徐々にヘリポートが近づいてきて、身体がバウンドした。

すぐに降りる用意をしたのだが、総理はそのまま乗ってどこかに向かうらしい。

本当に、サインだけもらうために便乗してきたようだな。

どんだけ孫にゴマ擦りたいんだ。

皆でヘリポートに降り立つと、竜巻のような暴風を残してティルトローター機が飛び立った。

「総理も大変だな」

「ふふ、そうですね」

珍しくカオルコが笑っている。

「君たちのお爺さんたちも、そんな感じなのか?」

「ええ、まぁ――でも、グループの責任者は寧々子様なので」

寧々子――多分、カオルコの叔母、姫のお母さんだろう。

世界が静止する前、他の国まで牛耳っていた女傑――どんな人なのだろう。

姫をパワーアップした感じだろうか?

とても怖そうであるので、できることなら会いたくない。

――とはいえ、当たり前だが、姫とこんな関係になっていると、いずれは会わないとだめだろう。

「姫、いずれは君のお母さんに会いたいんだけど……」

「なぜ?!」

俺の言葉に、彼女が厳しい顔になってこちらを向いた。

「なぜって……ほら、こういう関係になってしまったし。子どもができたら、どうしてもそういう話になるわけで……」

これだけ無制限一本勝負してれば、いずれはマジでそうなるし。

「関係ない!」

「いやいや、世間的には関係ないってことにはならないのよ。俺も世間から色々と言われるしね」

「そんなの無視すればいい」

「いやいや……」

とりあえず、無理に通すのは反発を招くだけだな。

こういうのは、「だめだ!」って言われると、余計に盛り上がってしまうし。

徐々に説得するしかないな。

そのうち、向こうからアプローチがあるかもしれないし。

まぁなぁ――自分でも、大人としてそれはどうなのよ?

――という、感情はあるのよ。

マジで。

「丹羽さん、こちらです」

「ああ」

俺が考えごとをしていると、晴山さんから呼ばれた。

彼女のあとをついていくと、新品のタンクが5つ。

「申し訳ない。新しいタンクを作ってもらって」

「ダンジョンの深部に飛ばされたとお聞きしましたし、のっぴきならない状態だったのでしょう?」

「ははは、そのとおりで――タンクを踏み台にしたりと色々とやって、置き去りにしてしまったので」

「あ、あの!」

彼女の目が光る。

「ダンジョンの深部ってどういう場所だったんですか?!」

「それは、移動の際に詳しく……」

原発跡地での仕事が始まった。