軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

58話 ナントカワーム

俺は再び、原発跡地の仕事にやってきた。

前回と違うのは、姫たちが一緒にいることだ。

彼女たちの目当ては、俺が教えた未整備のダンジョン。

俺が作業している間に、ダンジョンにアタックするつもりらしい。

そんな彼女たちを見ながら、俺は巨大なタンクに詰め込まれた処理水をダンジョンに捨てる日々。

ダンジョンには、姫たちが潜っているのだが、彼女たちがいる深部にはさほど問題はないらしい。

このことから察するに、ダンジョンを水没させて攻略するというのは、ちょっと無理だと考えられる。

海などにつなげて、常に大量の水を流し込めば可能かもしれないが……。

そんな日々を繰り返していたある日。

処理水も残り少なくなった夕方。

姫たちの帰りを待っていると――地響きとともに姫の叫び声が聞こえてきた。

「姫!」

俺は作業員の避難を晴山さんに頼むと、アイテムBOXから出したミサイルを抱えてダンジョンの暗闇に突入した。

ダンジョンの暗闇は、まるで視覚の存在を拒むかのように、全てを飲み込んでいる。

未整備ゆえ、湿った石壁から滴る水の音が、静寂の中で不気味に響く。

その時、不意に地面が震え、深い地響きが足元から伝わってくる。

まるで大地そのものが呻いているかのようだ。

その地響きに重なるように、鋭く高い叫び声が闇を切り裂く――俺の名前を呼ぶ姫の声。

叫び声はダンジョンの狭く曲がりくねった通路を反響し、何度も何度も耳に届く。

心臓が早鐘を打ち、冷たい汗が背筋を伝う。

暗闇の中、ダンジョンに反響した地響きとともに見えない何かが近づいてくるのを感じた。

何が待ち受けているのか、想像するだけで全身に緊張が走る。

「ダ――リン!」

「姫!」

暗闇の中に姫の姿が見えた。

カオルコを背負っているので、スピードが遅いようだ。

俺は彼女の下に駆け寄ると、カオルコを背中に乗せた。

「ここじゃ狭くて、対抗できない!」

姫が叫んだ。

「魔物か?!」

「そうだ!」

「作業員たちは、避難させてある」

「さすが、ダーリン!」

ここじゃ狭いってことは、大型の魔物なのか?!

とりあえず、話を聞くより出口まで急ぐ。

背中にあるカオルコの柔らかい身体を楽しむ暇もない。

相手が魔物だとすると、外に出していいものか?

少々心配なのだが、トップランカーの彼女たちが魔物への対応を間違うとも思えない。

つまり広い場所での戦闘が必要な敵なのだろう。

スピードを上げると、眼の前に見えていた白い光点が眼の前にいっぱいに広がった。

ダンジョンの外はすでに日が傾きつつあるので、それほど眩しくはない。

外に出ると、背中から魔導師を降ろして戦闘に備える。

アイテムBOXから、ミサイルと投槍器。

ついでに、撮影のためのカメラをアイテムBOXから出した。

ダンジョンから出て、久々の戦闘――いやマーマンをやったか。

そんなことより――。

「大丈夫か?」

カオルコに声をかけた。

「ダイスケさん、ありがとうございます」

「丹羽さん!」

遠くから晴山さんの声が聞こえる。

「大型の魔物らしい! 作業員たちをなるべく遠くに避難させてくれ!」

「は、はい!」

仕事ができるやつは、こういうときに頼りになる。

3人でダンジョンの入口で魔物を待ち受けた。

姫の手にはいつもの剣が光る。

「姫! どんな魔物だ?!」

「大きな虫だ!」

「虫って昆虫か?!」

「いや、巨大なミミズかなにかのような」

「ファンタジーに、サンドワームみたいな魔物が出てくるが、そんな感じか……」

そんなやつが、こんな入口までやってくるのか。

「来ました!」

カオルコの言葉にダンジョンの闇に目を凝らす。

確かになにかが迫ってきており、それが徐々に大きくなってくる。

「うぉぉぉ! 先制攻撃だぁ!」

俺は投槍器にセットしたミサイルを掲げた。

「お願いします!」

「おらぁぁぁぁ!」

カオルコの言葉を合図に、俺は迫ってくる魔物に向けてミサイルを投げつけた。

時速数百キロに達した武器が、敵に向かって一直線に飛んでいく。

ダンジョンの通路とほぼ同じ大きさの敵には、この攻撃を避ける術がないだろう。

――と思ったのだが、敵の進撃が止まる気配がない。

白いなにかが迫ってくると、徐々に形をなしてきた。

巨大な丸い口にギザギザの鋭い歯が、無数に並んでいる。

あ、そうそう、こういう形の魔物だったわ――などと思っていると、敵が突っ込んできた。

「ギュウウウウウ!」

魔物が叫び声を上げたので、驚いた。

発声器官があるのだろうか? ――と、思ったのだが、そういえばミミズも鳴いたっけ?

いや、あれは地面にいるケラの声だと聞いたことが……。

アホなことを考えていると、魔物の巨大な口が襲いかかってきたので、姫と一緒に左右に飛び退いた。

地面に敷かれたコンクリートがひび割れて、辺りに破片が散乱する。

眼前に現れた魔物の身体は太く長く、地面を這うたびに周囲の土が震えた。

巨大な魔物の口は大きく開き、その内側には無数の鋭いキバがびっしりと並んでいる。

それらのキバは、まるで獲物をミンチにする準備をしているかのように不気味に輝く。

長大な身体は暗褐色で、ぬらぬらと光る表面が太陽光を反射して一層不気味さを増している。

姿はミミズっぽいが、動きは速い。

目はないように見えるのだが、生きた肉を求める飢えた捕食者のように、確実に俺達を狙っている。

こんな魔物をここから逃がすわけにはいかない。

確実に仕留めなくては。

まぁ、完全にダンジョンの外に出てしまえば、戦車や戦闘機などの近代兵器も使えるけどな。

トップランカーが3人もいて、引き下がるわけにはいかない。

姫もそう思っているので、やる気満々だ。

カオルコはかなり後方に構えて、必殺の魔法の準備をしている。

俺と姫がやることは、魔導師の詠唱のための時間稼ぎだ。

彼女とアイコンタクトで確認し合うのだが、さっきの先制攻撃が効いている感じでもない。

「やぁぁぁっ!」

まず最初は、姫が仕掛けた。

魔物の動きを読んで、茶色の粘膜に覆われた外郭を斬りつける。

切っ先が食い込んだ部分が開き、白い肉が見えると、そこから青い体液が噴き出した。

「赤じゃなくて、青いのか!」

青は青で、なにか毒々しく、本当に毒なんじゃないかと思わせる。

そんな色だ。

俺は、アイテムBOXから、さらにミサイルを取り出す。

「おらぁぁぁ!」

投鎗器にセットされたミサイルが再び放たれて、魔物の皮膚に埋没した。

再び青い体液が噴き出した茶色の体表は、硬くはないようである。

ただ、こんな攻撃をチマチマと続けていて効いているのかといえば――あまり効いていないような気がする。

口の周りを傷つけているだけのような……。

「ギュウウウウウ!」

魔物がイヤイヤしているように身体を振っているので、一応のダメージはあるのかもしれない。

「ダイスケさん!」

後ろからカオルコの声がした。

「おう!」

姫と一緒に後ろに下がると、魔導師の詠唱が終わっていた。

「 我敵を穿て!(うが) 」

瞬く閃光が空間を切り裂いた。

その光は目を焼くように眩しく、耳をつんざくような衝撃音が響き渡り、大地が震える。

自然の法則を無視した、超常の力が解き放たれたのだ。

まるで銀色の槍のように、一直線になって巨大な敵に向かっていく。

光線の中心には、周囲の空気が熱で歪むほどのエネルギーが集中しており、巨大な敵の中まで貫通した。

敵の身体を貫いた瞬間、内部から爆発音が響き、巨体が痙攣する。

光線が貫通した部分からは、眩い光の粒子が噴き出し、まるで星の破片のように空中に散っている。

「ギュウウウウウ!」

敵はその場で固まったあと、徐々に崩れ落ちた。

巨体が接地すると、地面からの震動が渡ってくる。

タンパク質が焼け焦げたにおいと、立ち込める煙だけが残り、戦場に静寂が訪れた。

「まだ、耳がキンキンしているが、すぐに治るだろうな」

「ダーリン! やったのか?」

「解らん」

とりあえず、全長10m以上は確実にあるので、このままじゃアイテムBOXにも入らない。

「はぁはぁ……」

魔力を使い果たしたカオルコがへたり込んだ。

「大丈夫か?」

「なんとか」

「抱っこする?」

「……お願いします」

素直にそう言うってことは、やっぱりそれぐらいツライんだろう。

アイテムBOXから、ダンジョン温泉のお湯を出して、彼女に手渡した。

「これだけのデカブツを倒したら、カオルコのレベルが上がるはずだが……多分まだ死んでないんだろうな」

「うえぇぇぇぇ!」

姫が変な声を出しているので、見れば魔物の青い体液にまみれている。

「それって、毒とかじゃないだろうか? まぁ、血液だから毒じゃないとは思うが」

「生臭い~!」

珍しく、姫から泣きが入っている。

これだけのデカブツなので、体液の量も半端なく、そこら辺一帯が青く染まっていた。

ドラゴンの血なら価値がありそうなものだが、こいつのはどうかね?

そういえば、以前売ったドラゴンの精算がまだ終わっていない。

鱗を1枚1枚売ってたりするので、捌くのに時間がかかっているのだと思うが……。

いや、そんなことより眼の前の敵だ。

とりあえず、撮影は一旦終えた。

「止めを刺そう!」

泣いていた姫が立ち直った。

いや、開き直ったと言うべきか。

「カオルコ、姫が止めを刺してもいいか?」

「どうぞ。私はもう一歩も動けないので」

温泉のお湯の魔力回復は、かなりゆっくりだからな。

彼女の装備もそうだ。

「しかし、こんなデカブツ、どうやったら死ぬものやら。放置すれば、いずれは死んで、カオルコの手柄になるような気がするが……」

攻撃した所からは、青い体液が流れ続けている。

回復はしていないようなので、いずれは死ぬのでは……。

「丹羽さ~ん!」

晴山さんの声が聞こえる。

「まだ死んでないから、近づかないでくれ!」

「は~い!」

さて、どうやって止めを刺したもんか。

「ミミズの急所といえば、胴体の包帯を巻いたような場所からちょっと上の所に心臓があるんだが……」

「そ、そうなのか?」

お嬢様じゃ、ミミズの急所なんて知らないか。

「ああ」

「もしかして、あれか?!」

姫が指すと、茶色の胴体にうっすらと白い帯が見える。

これは、やっぱりそうなのだろうか?

ミミズって、心臓がたくさんあるみたいな話も聞いたんだが……。

「確かにそれっぽいが……姫が止めをやってみる?」

「任された!」

そろそろ暗くなるし、ここで決着をつけたほうがいいかもしれない。

多分、止めは刺せるとは思うが――こいつの処理はどうしたらいいだろうなぁ。

姫が魔物の胴体に近づくと、剣を振り上げた。

場所は、巨大な身体にうっすらと見える帯の上側。

「ダーリン! ここらへんか?!」

「多分、そうだと思う」

「よし! ふぅぅぅ――いやぁぁぁっ!」

深呼吸をしたあと、掛け声とともに剣が振り下ろされた。

茶色の壁が裂けると、そこから真っ青な液体が、姫に向かってまた噴き出す。

「にゃあああ!」

すぐに姫がそこから退いたのだが、体液で青く染まったまま、こちらに走ってきた。

「だ、大丈夫か?」

「い、一応……」

「毒ではないと思うのだが……それ、皮膚に色が染み込んだりしないよな?」

「え?!」

彼女が驚くのだが、それを想像していなかったのだろうか?

姫の心配をしていると、彼女の身体が光り始めた。

「これは、レベルアップじゃないか?」

彼女の身体を覗き込む。

「おそらく」

レベルアップが始まったということは、魔物を倒したのだろう。

これだけの大物を倒したのだから、結構なレベルアップをするはずだ。

「お~い! 晴山さん、もういいぞ~!」

「は~い!」

声はすれども姿は見えないのだが、物陰に隠れているのだろう。

しばらく待っていると、彼女が作業員とともにやって来た。

その隣には、銃を持った迷彩服の連中もいる。

彼らは、俺たちを護衛していた自衛隊だろう。

「ひえぇぇぇ!」「そ、そんなデカブツをやったのかい!」「すげぇぇぇ!」

「ここにいる方々は、冒険者のトップランカーの人たちですからね」

晴山さんが、鼻高々にふんぞり返っている。

「うわぁぁ! なんか青いものが一面に……ナンスか?!」

作業員たちは、地面やコンクリートの広がる青いものに、ビビっている。

なにしろ一面だからな。

「こいつの血は青いみたいでな。全部血なんだよ」

「これ、洗浄したり、消毒する必要があるのでは……?」

晴山さんも心配しているのだが、そのとおりだ。

「その前に、こいつをどうにか引っ張りだして、処分する算段をしないとマズイぞ? 腐り始めたらとんでもないことに……」

「きゃあああ!」

晴山さんが悲鳴を上げている。

ここの責任者みたいなものだから、彼女が取り仕切る必要があるだろう。

「お! ダーリン! ダーリン!」

青まみれの姫が俺の所に嬉しそうにやってきた。

レベルアップしたからな。

「どのぐらいレベルアップした?」

「レベルアップより、魔法を覚えたぞ!」

「え?! 魔法?! そのレベルから、覚える魔法があるの?」

「ああ―― 洗浄(クリーン) の魔法と書いてある」

彼女が自分のステータス画面をチェックしている。

「いいなぁ! 洗浄(クリーン) なら、俺も欲しいんだが」

「ふふふ……」

彼女がドヤ顔をしていたのだが、早速魔法を使ってみるみたいだ。

なにしろ、今の彼女は青いペンキを被ったようになっているからな。

「大丈夫か?」

俺の言葉に、彼女が静かに瞳を閉じ、深く息を吸い込んだ。

「問題ない―― 洗浄(クリーン) !」

その言葉は彼女の内側から力を呼び起こした。

言葉が完結すると同時に、彼女の周囲に青い光が突然現れる。

初めは小さな火花のように輝き、次第に強く、鮮やかに。

その光はまるで生き物のように空中を舞い、彼女の周りを優雅に踊る。

青い光の粒子が一つ一つ、彼女の肌に触れるたびに、身体に染み込んでいく。

光の粒子が彼女の身体に吸い込まれると、皮膚にまとわりついていた青い汚れが、パリパリと剥がれおち、足元に溜まっている。

「おおお~っ!」

姫の魔法を見た作業員から、感嘆の声が漏れた。

そりゃビキニアーマーの美女が、光の粒子を纏う――なんて幻想的なシーンに出くわしたんだ。

どんなやつでも見とれるだろう。

「姫」

俺は、カオルコからローブをもらうと、彼女に手渡した。

いつの間にか、カオルコの身体も深いローブによって隠されていた。

幻想的なシーンに皆の視線が奪われているうちに、彼女も自分のアイテムBOXからローブを出して羽織ったようだ。

「ああ……」

男たちから、残念そうな声が漏れる。

ビキニアーマーがローブで隠されてしまったからだ。

「戦士やら剣士などでも、魔法を覚えることがあるのか……」

「そのようだな」

「 洗浄(クリーン) と 温め(ウォーム) は欲しいんだがなぁ……」

「確かに、その2つは普段の生活でも便利ですね」

カオルコも俺の意見に賛成してくれた。

「さて、魔法はいいとして、あいつをどうしたもんか……」

巨大な 屍(かばね) を晒している魔物を見たのだが――青いヘドロの中になにか見えるような気がする。

目を凝らす――やっぱりなにかあるみたいだな。

俺はそこに走った。

「ダーリン?」

姫たちは気が付かなかったようだが――近寄ると、金色の小瓶が落ちていた。

「コレは――」

俺が故郷のダンジョンで拾ったものと同じものに見える。

持ち上げてみると、小瓶の中に輝く粒子がきらめいている。

光を受けて反射するその様子はまるで星屑のようで、瓶全体が小さな宇宙を閉じ込めたかのように見える。

「ダーリン?」

姫たちも俺の所にやってきた。

「姫、これはエリクサーだぞ?」

「エリクサー?!」「エリクサーですか?」

2人が、俺が持っている金色の瓶を覗き込んだ。

興味津々だが、ゆらゆらと揺れる金色の粒子を見ているだけでも楽しい。

彼女たちの気持ちも解る。

「姫たちでも、見たのは初めてか?」

「ああ」

「――エリクサーみたいなレアアイテムが出たってことは、こいつはこのダンジョンのラスボスってことなんだろうか?」

「それじゃ、ここのダンジョンはどうなるのでしょう?」

「おそらく、消えてしまうのでは……」

「ええ~っ!?」

俺たちの後ろから声が聞こえたので、振り返ると晴山さんだった。

「なにか?」

「ここが消えてしまうって本当ですか?!」

「ええ、こいつがボスだったらと――そういう話なんですが」

「え~! ど、どうしよう! 今後の計画にも支障が出るし、各所に連絡を――」

「ちょっと、まだ消えると決まったわけじゃありませんから、消えてから動いたほうがよくないですか?」

「そ、それはそうなんですが……」

このダンジョンは公共事業の一環として、ダンジョン資源の回収場として整備するつもりだったのかもしれない。

最初にやってきたより、重機の数が増えていたしな。

「だが、今回トップランカーが揃っていてよかった。こんなのが外に出たら、かなりの被害が出ていたかもしれん」

「そ、そうですね」

そういう話の前に、やることがある。

このデカブツの処理だ。

「さて、こいつをどうする? 重機で引っ張り出して、切断すれば俺のアイテムBOXに入るが……」

「は、はい! それじゃ重機の準備を――」

晴山さんが動こうとしたのだが、突然地震が俺たちの足元を襲った。

「じ、地震か?!」「ちょっと地震にしては……?」

作業員たちも戸惑っている。

ちょっと地震の振動と違うような……それに、この振動には覚えが……。

そう思っていると、ダンジョンの入口から土煙が上がった。

「見ろ! ダンジョンが!」「なんだなんだ!」「いったい、なにがどうなっているんだ!」

オロオロする作業員と自衛隊員たちは放置して、俺はダンジョンの入口へ向かった。

魔物の巨体が塞いでいる隙間から奥を覗く……。

「ん? ない?!」

もしかして――俺はアイテムBOXからライトを取り出し、スイッチを入れる。

点灯した。

ここがダンジョンなら点かないはず。

明かりがついたライトで奥を照らすと――奥がなくなっていた。

「ああ、やっぱりか――」

故郷の裏庭にできたダンジョンが消えたときと、似たような感じだったしな。

「ダーリン! どうした?」

「ダンジョンが消えた」

「……は?」

「ダンジョンが消えたんだよ。やっぱりこいつはラスボスだったらしい」

「ダンジョンって消えるものなのか?!」

「消えるぞ? 庭に小さなダンジョンができて、モンスターを殴り殺したら、それが消えたって話があったろ?」

姫と話していると、カオルコもやって来た。

「はい、その話は聞いたことがあります――本当に塞がってますね……」

彼女も魔物の隙間から、ダンジョンの奥を覗き込んでいる。

「えええ~っ! も、もしかして、本当に消えちゃったんですかぁ?」

俺たちの話を聞いていたのか、晴山さんが悲鳴を上げている。

「ああ、間違いない」

「え~と! え~と! まずは、総理に連絡を――」

彼女が慌てて、あちこちに連絡をし始めた。

「やべー暗くなってきたな――」

「ダーリン、こいつをどうする?」

「う~ん、お! そうだ――ダンジョンが消えるのに巻き込まれて千切れたみたいだから、アイテムBOXに入るんじゃないか?」

試しに、収納してみるか。

――と、その前に、写真を撮って、センセに送ってみるか。

こんな魔物は観たことがないだろ。

大きさを比較するために、姫に傍に立ってもらって撮影をした。

「どうだ?! よく撮れたか?」

「ははは、大丈夫だよ――収納!」

俺が思ったとおり、巨大な魔物がアイテムBOXに収納された。

消えたダンジョンに巻き込まれて、身体のほとんどが消失していたせいだ。

「「「おおおお~」」」

また作業員たちから、歓声が上がる。

魔物が消えた跡を確認したのだが、確かにダンジョンが閉じていた。

「やっぱり、ダンジョンはなくなってしまったか……怒られないだろうな?」

ここに投資するつもりだったのに、損失を被れとか言われたりして。

今回の処理水の代金から引かれたり。

「ダンジョンってなくなるものなんだな!」

姫が目をキラキラさせている。

ダンジョンに潜っているのに、ダンジョンのことを調べていないのか?

俺は、なにかしようとするときには、先ず情報収集するからな。

ここらへんは、人によって違うのかもしれないな。

「姫、このエリクサーはどうする?」

「……ダーリンに任せる」

「飲んだら、姫の アレ(におい) も消えるかもしれないぞ?」

俺の言葉に彼女がちょっと上目遣いになっている。

「飲んだほうがいいか?」

「いや、俺は姫のにおいが好きだからいいが……」

「それじゃ止めておく!」

「そうか」

「え~?! サクラコ様、飲んだほうがいいですよ」

カオルコは姫の考えに反対のようだ。

「ダーリンがいいというのだからいい」

「まぁ、俺は姫のすべてが好きだし」

「……」

俺の言葉も、彼女が珍しく真っ赤になっている。

「なんですか、それ! アバタもエクボってやつですか?!」

珍しく、カオルコがギャーギャー騒いでいるのだが、メッセージがきた。

「見たい! 見たいです! なんですかそれ! 絶対に見たいです!」

センセからのメッセージだった。

思ったとおりだが、すごい食いつきだな。