軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

21.ユーナの考察

「それじゃステラさん、確認していくよ」

「は、はい」

ユーナさんからステラと呼ばれてぎこちなく返事をする。

同じ名前では混乱すると言われたので、クリスとステラで提案をしたところ採用してもらえたのだ。

わかり易くする為とは言え、愛称で呼んでもらえて何だかくすぐったい。緩みそうな頬を押さえているとユーナさんは首を傾げながら話を進めた。

「まず気になるのはここ」

そう言ってユーナさんは先ほどのノートのクリステラの外見についての項目をペンで丸する。

「…私、ここに書いてある様な外見をしたクリステラって令嬢知ってる」

「……はい」

続いて登場人物の項目を同じ様に丸で囲む。

「あと、王立学園に通う第2王子と、生徒会副会長と、不良生徒は…多分あの人だろうなってのを思い浮かべてる」

「……はい」

主人公以外の名前は伝えていないけれど、ユーナさんが想像している人物で間違いないだろう。

私が頷いたのを確認した後「これは私の想像なんだけど…」と前置きしてユーナさんがペン先を私に向けた。

「…さっき聞いた物語、現実に起こってない?」

「…………っ、………はい」

言葉にするには抵抗があったけれど、力になってもらうには正直に話さなくてはいけない。小さな声で呟くと、途端にユーナさんの表情が輝きだした。

「やっぱり!凄い!小説みたい!!」

「でっ、ですが………いつも似た状況にはなりますが…物語とは別の展開になります」

「ふむ?…なるほど…主人公の性格が違うからか」

そう呟いて『明るく少しおっとり』と書かれたクリスの性格のメモに線を引く。

まだ1時間も話して無いのだけど、私の対人能力の低さがバレているのだろうか。何だか複雑な気分だ。

「…それはともかく、ステラさんとクリスの物語が繋がってるのは確定だね」

「あ、あの…でも偶然が重なっただけかもしれな…」

「これだけ偶然が重なればそれは必然!つまり運命!」

「ユーナさん、声を抑えてください…!」

興奮のあまり今にも席から立ち上がりそうなユーナさんを手で制し、落ち着く様に紅茶を勧める。

ちらりと周りを確認したけれど注目はされていないようだ。

ホッと息を吐いてユーナさんに視線を戻すと、紅茶を飲み終えた彼女はノートに新しい文章を記入していた。先ほどよりも殴り書きで書かれた文章は、矢印であちこちの項目に繋げられている。

「………うーん…ふんふん……」

「……?」

「ねぇステラさん、クリスの入学前の事は覚えてる?」

「え…?…いいえ」

どういう意図があっての質問だろう。私が答えるとユーナさんは黙り込んでしまった。

そう言われてみれば、確かに入学前や幼少期のクリスについては記憶に無い。それだけ私と違う生活を送っていて思い出すきっかけが無かったのだろうか…?

きっとクリスなら友人に囲まれた幼少期を送っていただろう。対する私なんて友人と呼べるのはせいぜい…―――――

「…うん、ステラさんはやっぱり転生者である線が強いと思うの」

「…えっ?…転せ……え!?」

少し意識を離している内にとんでもない結論が出されていた。思わず2回も聞き返してしまう。

きっと変な顔になっていたと思うけれど、ユーナさんは気にした様子も無く満足気にウンウンと頷いていた。

「物語どおりに進んでいないから、予知夢や予言の類では無いと思うんだよね」

そう言って先ほど鞄に片付けた『予知』と書かれた本をチラと見せる。確かに予言や予知にしては結構な誤差が有るような気がしなくもない。

「だから転生!それが面白いと思う」

「……えっと……転生って…生まれ変わるという事でしょうか…?」

「そう。さっきステラさんに渡した本は同じ人物に生まれ変わって人生をやり直しするストーリーなんだけど、多分ステラさんは前世がクリスだった訳では無い思うんだ。どうも限られた期間のクリスの記憶しか無いみたいだもの」

先ほどの質問の意図はこういう事だったのか。立て続けに出される情報を頭の中で必死に整理する。

「えぇと…?…転生してるけど、クリスでは無く…別人で…?」

「そう!……これは私の推理なんだけど…」

そう前置きをしてユーナさんが机越しに顔を寄せる。音量は控えめだったけれど、とても楽しそうな声で告げられた。

「…ステラさんは転生前にクリスの物語を見たんじゃないかな。

そして、その物語に転生してしまったのがステラさん!」

「え…!?」

「うん、完璧!いやー、現実は小説より奇なり!」

「…そ、そんな訳……!?…えぇ……!?」

クリスの物語に転生。

そんな突拍子も無い事を言われた衝撃で、そう言えばクリスは隠れ巨乳だったなとどうでも良い情報を思い出し、自身の平らな胸に手を当て追加でショックを受けるのであった。