軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第098話 そうですよー

缶詰を買った後、宿屋に帰ってきた。

「おっ、帰ってきたな。今日も泊まるか?」

おっさんがにこっと笑う。

「ああ。明日には王都に向かうことにした」

「王都か。俺も王都出身なんだぜ」

「そうなのか?」

てっきり地元民だと思っていた。

「俺は王都の宿屋の息子なんだ。でも、惚れた女房がここの出身で一緒にこの町に帰ったんだよ」

へー……

「実家の宿屋は?」

「弟が継いだ。王都に行ったら使ってやってくれや。老舗の良い宿屋だぜ。俺の紹介だから割引してくれると思う。【灯火の宿】って宿屋で弟はレオナルドだ」

高そうだけど、割引があるのか。

「風呂はあるよな?」

「あるぞ」

王都に着いたら泊まっても良いかもな。

「わかった。行ってみる」

「ああ。明日は何時に出るんだ? 昼飯くらいなら作ってやるぞ」

ありがたい。

「頼む。非常に美味かったんだが、半分を鳥に取られた」

「あー、よくあることだ。あいつら、味を占めているんだよ」

慣れてる感じはしたな。

町でも被害がありそうだ。

「おかげで腹が減った。すぐに夕食にしたい」

さっきの店で缶詰を見ていたらちょっとお腹が鳴った。

「わかった。できたら持っていくよ」

「頼む」

俺達は料金を支払い、鍵を受け取ると、昨日と同じ部屋に入り、ゆっくりする。

ちょっとすると、夕食が来たので食べると、風呂に入った。

そして、テーブルでトランプをする。

「ヴェルナーさー、どういうところに住みたいとかある?」

んー?

「屋敷を建てる話か?」

「そうそう。お金を貯めるのも大事だけど、どこに住むかも大事じゃない?」

まあな。

「俺は帝都に住んでいたが……」

「私も王都よ。リーエも当然、帝都なわけだし、全員、都会っ子じゃない?」

「まあ、そうとも言えるな」

「でも、都会って高いわよ?」

それはそうだろうなー……

「正直、都会はないと思っている。俺が帝都に住んでいたのはそこの出身というのもあるが、単純に職場が帝都だったからだ。だから別にこだわりがあるわけではない」

都会だと目立ってしまうしな。

「私もないですね。都会は色んなものが売っているというメリットはありますが、それは私の家事スキルでどうとでもなります」

さすがはお手伝いさんホムンクルス。

「まあ、私もないわね。出身地のリーフェル王国は絶対にないし、だったらどこでも良いわ」

ふーむ……

「稼ぎながらそういう地を探すか」

「そうしましょうか。今後はそういう目で町を見ていきましょう」

「わかった」

その後もトランプをしていくと、早めに就寝した。

翌日、いつものようにリーエに起こしてもらい、シャワーを浴びると、朝食を食べる。

そして、準備をし、1階に下りた。

「おっ、もう出るのか?」

受付にいるおっさんが声をかけてくる。

「ああ」

「じゃあ、これな」

おっさんが弁当と共に封筒を渡してきた。

「手紙か?」

「紹介状だよ。まあ、ウチの近況とかも書いてあるがな。それを弟に渡してくれ。絶対に安くなるから」

なるほど。

「わかった。世話になったな」

「こっちこそありがとうよ。道中、気を付けてな」

「ああ」

俺達はおっさんに礼を言い、宿屋を出た。

そして、パン屋でパンを買い、ギルドに向かう。

すると、ギルドの前に馬車があり、ベニーの姿もあった。

「おはよう」

ベニーが手を上げた。

「ああ。おはよう。外で待っていたのか?」

「誰もいないからね」

「朝なのに?」

混む時間だと思うんだが。

「漁船に乗る冒険者はとっくに出てるよ」

そういやそうだったな。

もはや冒険者ではなく、漁師のような気がするが。

「この馬車か?」

見た目は普通の馬車だ。

ただ、荷台は幕が下りており、中身が見えない。

「そうだよ。馬も大人しい子らしいから難しいことはないと思う。これが手紙と書類ね。ここにサインをもらって」

ベニーが手紙と共に書類を渡すとサイン欄を指差す。

「わかった」

「それとさー、ついでに頼まれごとを聞いてくれない?」

また頼まれごとか。

「何だ? 優先は馬車と手紙を送ることだぞ」

「わかってるよー。それにたいした仕事じゃない。君ら、スリーフに寄るでしょ?」

「そのつもりだ」

ずっと馬車も疲れるし、せっかく旅をしているので寄ることになっている。

だからパンも今日と明日の分しか買ってない。

「だったらスリーフのギルドに書類を届けてくれない? お金はそのー、お気持ちだけど」

もうわかっている。

ギルドの頼み事は報酬を期待するものじゃない。

評価を上げるためのボーナスだ。

「大丈夫だ。本当についでだし、持っていくだけだ」

「ありがとう。料金は向こうで受け取って。これだから」

ベニーが布袋を渡してくる。

しかも、50センチはある大きさだ。

「多いな」

「実は定期的に王都にある本部に色々と報告しないといけないんだよ。それ関係」

ふーん……

「それ、スリーフのギルドでも頼まれるってことか?」

王都じゃなく、スリーフのギルドに持っていけっていうことはそういうことだ。

「うん。いつもウチからスリーフに運んで、そこからまとめて王都に運ぶスタイルだからそうなるね」

まあ、王都にも行くしな。

しかも、馬車運搬の仕事の報酬をもらいにいくから絶対にギルドには行く。

「本当についでだな」

「そうそう。お気持ちしか払えないと思うけど、よろしく。あ、王都の地図もあげる」

ベニーが簡単な位置関係が描いてある地図をくれる。

「わかった。ギルドには世話になっているし、そのくらいのことはしよう」

イレーネさん、これで良いんですよね?

「ありがとう! さすがは優良冒険者だね!」

優良か……帝国にいた俺は優秀な魔導士だった。

でも、きっと優良ではなかった。

それが今はこうだ。

俺は良い人を好きになれて良かったと思う。