作品タイトル不明
第096話 ほう?
イレーネが水魔法を使えるようになったので再び、北に向かって歩いていく。
「出ないわね……何も」
さっき鳥を見たくらいだ。
「今日は散歩でしょうか」
「まあ、ウォーターボールを使えるようになったから良いんだけどさ」
名前を付けてる……
「ハズレかねー?」
「まだわからないわよ。とりあえず、昼まで歩いてみましょう」
俺達はその後も歩いていく。
しかし、何も出ないし、魔力を感じない。
ついにはイレーネが蠟燭の火を出して、魔力操作の練習をし始めた。
そして、昼になったので近くにあった流木に腰かけ、海を見ながら昼食を食べる。
「帰ります?」
リーエが聞いてくる。
「まあ、夕方までに帰るとなると、この辺で引き返さないといけないな」
走れば良いんだが、それもちょっとな……
「やっぱりもうちょっと大きい町が良いんじゃない? 住んでる人達は良いけど、私達は仕事にならないわ。このまま貯金を減らすだけよ」
それもそうだな。
「帰ってギルド職員に……ん?」
「魔力です。それも複数……え?」
確かに複数だ。
複数なんだが……
「どうしたの?」
「10は超えてるぞ! 群れだ!」
俺達は弁当を置き、立ち上がった。
直後、海から緑色の身体をした半魚人が飛び出てくる。
しかも、大勢だ。
「わーお」
「群れるのかよ……」
「先に言ってほしかったですね」
サハギンは12匹おり、全員が俺達を見ている。
完全にやる気だ。
「どうする?」
「各個撃破で良いだろ」
俺達はそれぞれ武器を取る。
「行きます」
リーエが突っ込んでいき、真ん中にいるサハギンをククリナイフで切り裂いた。
それと同時に俺とイレーネが左右から切り込む。
目の前にいるサハギンを剣で斬ると、右にいるサハギンが襲いかかってきたので風魔法で真っ二つにする。
さらにはもう1匹を剣で斬ると、周りにサハギンがいなくなった。
「弱いですね」
「スピードはそこそこだったけど、身体が柔らかいわ。これならあのギタイトカゲの方が上ね」
リーエとイレーネも終わったようで足元にはサハギンの死体が転がっていた。
「一気に来た時はちょっと焦ったけどな」
「気持ち悪いし、心臓に悪いわ」
ホント、ホント。
「魔石を回収します。御二人は食事の続きを……あ」
リーエが俺達の背後を見たので振り向くと、俺達の食べかけの弁当を漁っている数羽の鳥がいた。
そして、鳥達は俺達に気付くと、弁当のサンドイッチを咥えて、空に飛び立っていく。
「「あー……」」
まだ半分しか食べてなかったのに……
「……缶詰でも食べますか?」
「俺はいいや……」
「私も……魔石を回収して帰りましょう。十分な成果よ」
「そうするか」
俺達は手分けして、魔石を回収すると、引き返していく。
帰りも出ないかなと思ったが、まったく出ることがなく、15時半くらいには町が見えるところまで戻ってきた。
「確か、サハギンは1万ソルって言ってたわよね?」
イレーネが聞いてくる。
「ああ。そう言ってたな。12個だから12万ソルだ」
「成果としては悪くないんですが、なんか無駄に疲れた気がしますね」
ほぼ歩いていただけだからな。
「どうする? 私的にはやっぱり移動で良いかなって思うけど」
「俺もそう思う」
「王都を目指しましょうよ。稼ぐこともですけど、図書館が気になります」
俺も気になる。
「明日、ここを発つ方向でギルドに相談してみるか」
「そうしましょう」
俺達はさらに歩いていき、町に戻ってきた。
町はやはりのどかであり、冒険者の姿はない。
平和そのものであり、今となっては冒険者なんかいらないって言われているような気がした。
ギルドにやってくると、誰もいなかったので受付にいるベニーのもとに行く。
「おかえり。遭遇できた?」
「できたが、12匹も同時に出てきたぞ」
「おっ、運が良いねー。普通は多くても5匹だよ。12匹はすごい。儲かるよー?」
軽いんだよなー。
「複数同時に出てくるなら言えよ」
「あ、ごめーん。そういえば、そうだったね。サハギンは群れを作るから単体で出てくることはないんだ」
うん、言え。
なんというか……やっぱり平和な町なんだな。
ギルド職員までこんな感じだ。
「なあ、他の冒険者は?」
「うーん……漁船に乗っているんじゃない?」
魔物退治ではないのか。
「平和で良い町だと思う。でも、俺達は別の町に行こうと思う」
「うん。そうだろうね。実はさ、色んな国からこの町に来る冒険者ってそこそこいるんだ。でも、皆、王都に行っちゃうんだよ」
やっぱりか。
「仕事がないからか?」
「そうだね。ヴェルナーさん達は運が良くて、今日の成果は12万ソル。でも、明日は良くて5万ソルだよ。地元の冒険者ならともかく、わざわざ遠征してくるような実力者は不足でしょ」
不足だな。
5万はない。
「俺達も目標があるんだ」
大きな屋敷を建てるという結構な目標がある。
「うん。だからギルドとしては王都に行くことを勧めるよ」
「王都で良いのか?」
「この国で一番稼げるのは王都さ。次点で北にあるルミフィアって町。この町は北西のマルーン王国、北のカリス王国、北東のエオリア王国に行けるんだよ。だから人が集まっている」
なるほどな。
確か、イレーネの買ってきた地図にもルミフィアは書いてあったし、地理的にそんな感じだった。
「ここから王都まではどれくらいだ?」
「ノンストップで行けば馬車で3日かな? 2日でスリーフの町があるからそこで休憩するのが普通だね。だから4日かな?」
そんなものか……