軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第095話 美的センスが……

翌朝、リーエに起こしてもらった俺とイレーネは窓から外を見る。

「朝日が綺麗ね」

「そうだな」

心なしか海がキラキラしているように見える。

「7時半は朝日じゃないですよ」

朝の太陽なら朝日だろう。

「イレーネ、シャワーでも浴びてこいよ」

髪の毛が爆発している。

「そうする」

イレーネが風呂場に行き、しばらくすると、冒険者服に着替えて、日課の決めポーズを取る。

拍手をして褒め称えると、上機嫌になったので俺もシャワーを浴び、着替えた。

そして、風呂から上がると、ちょうどよく朝食が来たので食べだす。

「サハギンは海沿いに出てくるという話でしたが、北と南のどちらに行きます?」

どっちでもいいって話だったな。

「北側にいるし、北に行ってみるか」

「賛成」

「じゃあ、そうしましょうか」

俺達は朝食を食べると、準備をし、部屋を出た。

そして、1階に下り、宿屋のおっさんから弁当を受け取ると、宿屋を出て、北に向かって歩いていく。

町中はやはり人は少ないし、のどかな感じがする。

ただ、ちょっと魚臭い。

「漁ですかね?」

「多分、そうだろ。漁師は俺達と違って早いだろうし」

多分、獲ってきた魚の匂いだろう。

「冒険者の姿を見ないわね?」

「もう出てるんじゃないか?」

「それにしても昨日から一人も見ないわ」

確かに見てないな。

相当、少ないのかもしれない。

町中を眺めながら歩いていくと、数メートル程度の壁と木製の門が見えてきた。

「ショボくないか?」

ブレイナの町もそこそこ田舎の港町だったが、門や壁はしっかりしていたし、もう少し高かった。

「別大陸だし、そういうものなのかもしれないけど、経験的に町の防備が緩い町は儲からないわよ。それだけ脅威が少ないってことだから」

冒険者の姿も見ないし、ギルドも小さかった……

関係ないかもしれないが、ギルド職員も軽かった……

「平和ってことか」

「ええ。今日やってみてだけど、早々に王都を目指した方が良いかもね」

「わかった」

俺達はさらに歩いていき、門を抜ける。

すると、前方には低い山と森、右側には平原、左側には海が広がっていた。

「へー……綺麗ね」

自然豊かだな。

なんかピクニックに良さそう。

「砂浜がずーっと続いていますね」

海沿いは砂浜になっており、山の方まで続いていた。

「夏とかだと泳げるんだっけ?」

ベッキーが言っていた。

「サハギンとやらが出るなら無理じゃない? サハギンって私は聞いたことないし」

ダニア大陸にはいないのかもしれん。

「綺麗な砂浜なのにもったいないな。まあ、俺は泳がないし、行かないが」

暑いだけだ。

「私も絶対に行きませんね」

知ってる。

「あなた達、足のつく池で騒いでたものね……まあ、私も泳がないけど。そもそも泳ぐことがないし」

イレーネも内陸の王都出身だもんな。

俺達は砂浜までやってくると、歩いていく。

「歩きにくいですね」

「砂だからな。代わりにこけても痛くないぞ」

「ホムンクルスはこけないんです」

ホムンクルスはなんで平気で噓をつくんだろう?

「で? サハギンは?」

イレーネが聞いてくる。

「サハギンは半魚人と呼ばれる肉食の海の魔物です。歩いていれば海から出てくると思います」

「じゃあ、海の方を警戒すれば良いわけね」

逆は岩壁になっていた。

「今のところは魔力を感じないが、警戒は緩めないでくれ。海では素早い動きをするからな」

「了解」

俺達は砂浜を歩いていく。

ちょっと歩きにくいが、海は綺麗だし、風が気持ち良かった。

それに波音が心地良い。

「良いな」

「ええ」

「さすがに手は繋がないでくださいね」

するわけがない。

俺は軍属にいたんだぞ。

そんな浮かれ野郎じゃない。

そう……オンオフがしっかりしているのだ。

「しかし、冒険者がいないわねー」

冒険者どころか誰もいないな。

サハギンすらいない。

「イレーネさんの経験が当たりですかね?」

「かもね。ちょうどいいし、水魔法を教えてよ」

そうするか。

「リーエ」

「はい。水魔法はこれまでとはちょっと難易度が上がります」

「そうなの?」

イレーネが首を傾げる。

「これまでは魔力を放出するだけで良かったのですが、水魔法に関してはちょっと違います。これは水を変化させたり、操作することが大事になってくるんです」

「バカでごめんね。わかんない」

わからないのは仕方がない。

その説明だけで理解できたら天才だ。

「ちょうど海があるので実践しましょう。イレーネさんは実践派ですから」

イレーネが実践派なのはそう。

魔力感知ができないのにあれだけ魔法を使えるようになっているし。

「海をどうするの?」

「まず水魔法というのは大気中の水蒸気を集めます」

リーエがこぶし大の水の塊を出した。

「おー、水ね」

「水です。これをぽいっとします」

リーエが水を捨てる。

すると、水が砂に沁み込んでいく。

「悪い子ね」

そこはうん。

「違いますし、水を捨てるくらい何も問題ありませんよ。そんなことより、この水を集めてください」

「魔法で?」

「もちろんです。ささっ、白銀の魔女様の力を見せてください」

「よーし」

イレーネはやる気を出すと、しゃがみ込み、濡れた砂に手をかざす。

「ムーブですよ、ムーブ」

「わかってるわよ。砂が邪魔なの」

イレーネは見ていても細かく魔力を動かしていたのでできそうだなと思った。

すると、さっきのリーエが出したものより一回り小さい水球が浮き上がる。

「良いですよー。では、今度は海から水を集め、その水球とくっつけてください。大きな水球を作りましょう」

でっきるかっなー?

「よし、それならできそう」

イレーネは水球をさらに上昇させると、魔力を込める。

すると、海が盛り上がり、1メートルをゆうに超える水球が浮き上がる。

「……すごいですね」

「……さすがの魔力だな」

イレーネはあれだけの水量を上げてもケロッとしていた。

「次はー?」

水球を合わせると、イレーネが聞いてくる。

「その水球を変形できますか?」

「よし、犬にしよう」

「犬?」

イレーネが魔力を込めると、水球がぐにゃぐにゃと動き出し、形を変えていく。

しかし、いびつな形のものにしかならない。

「難しいわねー」

「まあ、それだけの水球だしな」

それでもそれだけ動かせるんだったらできないことはないと思うんだが……

やっぱり犬が難しいんじゃないかな……あっ。

『魔力云々ではないようですね』

『みたいだな。もう十分だからやめさせろ』

足りないのは魔力操作のセンスではない。

「イレーネさん、もう結構ですよ。海に捨ててください」

「そう?」

イレーネが大きな水球を海に捨てた。

「水の操作はばっちりですね。では、最後です。まあ、ある意味では最初なのですが、大気中の水蒸気から水を集めてください」

「さっきリーエがやってたやつね。でも、大気中の水蒸気って何?」

「水蒸気くらいはわかるでしょ。温かいスープやお風呂から湯気が出てますよね?」

「それはわかるけど、今はなくない?」

ないな。

でも、そういうことじゃない。

「イレーネ、寒い冬の日に窓が曇ったり、濡れたりするだろ」

「するわね」

「あれは部屋の中で温められた水蒸気が外気で冷たくなり、水になっているんだ。見えていないだけで水蒸気はその辺にある」

「魔力みたいね」

どっちも見えないという意味では似たようなものだ。

「ああ。だから空気中にある水分を集めてみろ。さっきまでやっていたことと同じだ」

「やってみる」

イレーネが手を掲げ、魔力を込めると、手に何かが集まっている感覚がした。

「良いぞ。そのままだ」

「おー……お? おー!」

イレーネの手の前にはちょっと小さいが、水球ができていた。

「成功だな」

上手だ。

「お見事です。あとはお風呂の時とかに練習をしてください」

「すごいわね! 私、段々、魔法使いになっていっている」

良かったな。

俺も自分のことのように嬉しいよ。

「そうです。我らはこの世界では秘匿すべき魔法使いです。一蓮托生です」

「リーエの黒さはスルーするけど、秘匿ってなんか良いわね。かっこよくない?」

すごくかっこいいと思う。