作品タイトル不明
第094話 とんだお嬢様です
イレーネと海を見ていると、リーエが上がってきたので次にイレーネが風呂に向かう。
しばらくすると、イレーネも上がってきたので最後に俺も久しぶりの風呂を堪能した。
そして、風呂から上がると、2人がテーブルについていたので俺も座る。
「良い湯だったな」
「ええ。クリアダストも悪くないけど、やっぱりさらさら感が違うわ」
イレーネが下した髪を手で靡かせる。
綺麗な銀髪がふわっと広がり、さらさらーっと元に戻っていくのはちょっとドキッとした。
「お綺麗です。それでイレーネさん、地図は?」
それそれ。
「ええ。安いやつだけど、買ってきたわ」
イレーネがカバンから丸まった1メートルくらいの大きな紙を取り出し、テーブルに広げる。
「リーンド大陸の地図か?」
紙は海に囲まれた大陸が描かれており、国境の線や国名、さらにはある程度の都市の名前や山の名前なんかも書いてあった。
「ええ。簡単なやつだけどね。私達がいるメラニカ王国がここ」
イレーネが大陸の南西の方を指差す。
どうやらメラニカ王国はそこまで大きい国ではないらしい。
「あ、マルーン王国もありますね」
リーエがメラニカ王国からさらに北西の方を指差した。
「教授とベッキーの目的地か」
あいつらももう着いたんだろうか?
「ですね。それでどうしましょう?」
地図を見てもわからんな。
「私的にはまず王都を目指すべきじゃないかなって思ってる」
イレーネがこのクレイナの町を指差し、右になぞっていく。
そして、王都と書かれた町で止めた。
「東か」
「地図が大きすぎてどれくらいかかるかわかりませんね」
この地図の精度がわからないしな。
「明日、仕事をして、納品する時にでもギルドで聞きましょうよ」
そうするか。
「明日は何時起きだ?」
「うーん……9時……あ、いや、8……7時半に起きましょうか」
イレーネがリーエの顔色を窺いながらどんどんと早くしていった。
「そうするか……」
「朝日でも見たらどうですか? 綺麗ですよ」
いや、それはいいや。
俺達はその後、トランプをしていくと、夕方になったので夕食を頼んだ。
そして、やってきた魚料理を食べると、イレーネの魔法の練習をしていく。
「綺麗ですね」
部屋中にイレーネの複数の光が飛んでいた。
「上手なもんだな」
「まだ色は付けられないけどね」
それでもすごい。
「リーエ、明日、海に行くし、人がいなければ水魔法でも教えてやれよ」
「良いですね。水があるとわかりやすいです」
最悪、見られても水遊びでもしてるかなって思ってくれるしな。
「水魔法? リーエが飲み水をくれるやつ?」
「そうですね。あれは水を集めて、さらにクリアダストと冷やす魔法を使っていますが」
そのまま飲むとちょっと危ないのだ。
ほとんどの人は気にしないだろうが、俺はその辺に敏感。
「へー……じゃあ、お湯とかも出せるの?」
「出せますよ。缶詰を温めるのと同じ要領です」
「便利ね。そういう魔道具もあるけど、旅では持って行けないし」
魔道具か……
「なあ、魔道具っていつくらいから普及したものなんだ?」
ずっと気になっていたが、今までそれどころじゃなかったから聞かなかったことを聞いてみる。
「普及って言われてもね。ずっと前じゃない? 私、学がないから詳しくない。それこそ教授に聞いてみれば良かったんじゃない?」
専門家だったもんな。
聞けば良かったのはそうだが、変に怪しまれたくなかったのだ。
「うーん……この世界の魔法が気になるんだよな」
「何が? 魔法なんてないじゃん」
今、使ってるだろ。
「イレーネの強化魔法もベッキーの魔力探知も魔法だ。本人に自覚がないだけ。それにエンチャントは知っているんだろ?」
「うん。聞いたことはある。魔道具を作る技術の一つかな」
「そこがものすごく違和感だ。エンチャントなんてどう考えても魔法だろ。付与しているんだぞ」
物に魔法を付与することをエンチャントという。
そもそも魔法がないと言っているのに変な話だ。
「そうかな?」
「ああ。昔はこの世界にも魔法があったんだよな?」
「そうね。最初に説明したけど、大きな魔法の戦争があって、その後に魔法使いの迫害があったわけよ」
聞いたな。
「でも、エンチャントや魔道具作りのノウハウは残ったってことか?」
強化魔法や魔力感知はまだ目に見えないから仕方がないと言える。
魔法が完全になかった世界にいたこともある俺はあのありえない動きを見て、魔法だと思うが、すごい身体能力や第六感だと言い張れば、それで通じる世界なんだろう。
「じゃない? 魔道具って便利だし」
便利ってことはそれが兵器にも繋がるってことだぞ。
実際、銃が作られている。
そんなこともわからなかったのか?
「本当に迫害で魔法使いがいなくなったのか?」
「そう言われるとわからないわよ。私も子供の頃に聞いた話だしね」
ふーむ……
「イレーネさん、歴史の資料とか残っていないんですか?」
リーエが聞く。
「歴史? 研究機関とか? あ、でも、リーフェルの王都には図書館があったかな? 行ったことないけど」
図書館……
「誰でも入れるのか?」
「さあ? 冒険者に聞かれても……私ら、近所の教会とかで字とか簡単な歴史なんかは習ったけど、それだけだからね。だから冒険者なわけだし」
学がないから底辺の仕事に就いたんだったな。
もっとも、そこで出世して、Bランクになったわけだが。
「この国の王都にも図書館があるかもしれないな」
「あるんじゃない? 行ってみる?」
「そうだな。王都に着いたら探してみよう」
魔法のことはわからないかもしれないが、細かな歴史がわかれば見えてくることもある。
「頑張って!」
そういえば、トランプをしたり、魔法の練習ばかりでイレーネが本を読んでいるところを見たことがない……