作品タイトル不明
第092話 偉大なる第一歩です
俺達が甲板で到着を待っていると、船のスピードが落ち、ゆっくりと港に着けていく。
大型船の甲板にいるので町並みがよく見えるが、クレイナはそこまで大きくない港町のようだ。
「ヴェルナー、あそこに冒険者ギルドがあるわ」
イレーネが指差した先には剣が交差するお馴染みの看板があった。
港から左に100メートルくらいといったところだ。
「まずはあそこに行ってみるか。そこで仕事の話なんかをして、宿屋を紹介してもらおう」
「そうしましょう。船も個室のおかげで快適だったけど、お風呂に入りたい」
「同感です」
俺はワインを飲みたいわ。
俺達が待っていると、船が入港した。
そして、船員達がロープを投げ、完全に船を固定させると、船から降りるためのタラップがつけられる。
「行くか」
「ええ」
「新たなる冒険の始まりです」
俺達は甲板から船内に戻ると、出入り口まで行く。
すると、ちょうど扉が開いたところで待っていた他の客が次々と降りていったので俺達も続いた。
そして、タラップから降り、確かな大地を確認する。
「んー……到、着!」
イレーネが両手を上げて、身体を伸ばした。
「ここが別大陸ですか。今のところは差がありませんね」
確かに普通だ。
まあ、船が行き交い、交流があるならそこまでは変わらないのだと思う。
「空気と明るさが違うわね。心機一転って感じ」
それはイレーネの心から来ていて、そう感じるんだと思う。
「ギルドに行こう」
俺達は受付がある建物を通り、外に出た。
そして、甲板から見ていたギルドに向かって歩いていく。
「歩いている人も普通です。服装も特に変わったところはありません」
「そんなものよ。もっと南に行けば薄着になり、北は厚着になるんだと思うけど」
あー、なんかそういう話を聞いたな。
「そういえば、暖かいな」
甲板にいた時は風が強かったのであまり思わなかったが、陸地に降りると、ブレイナの町よりも暖かく感じる。
「ええ。メラニカ王国は比較的、暖かい気候なのよ。本格的な冬になっても今よりちょっと寒くなる程度だと思う。そこまでは調べているのよ」
なるほどな。
俺達が町並みを見ながら歩いていると、ギルドにやってきた。
外観は大きくなく、ブレイナの町のギルドと同じくらいだ。
「小さいな」
「ギルドの大きさと仕事の質や量は比例するわよ」
まあ、それだけ冒険者が少ないってことだからな。
「他に当てがないから仕方がない」
「80万ソルを取り戻したいです」
「まあね」
俺達は中に入る。
すると、中はやはりそこまで広くなく、受付が1つだけだった。
時間のせいもあるだろうが、冒険者の姿も見えない。
「ん? 新規さん?」
受付の20代くらいの男性が俺達に気付いたので近づく。
「ああ。今、船でここに到着したんだ」
「ダニア大陸の人?」
知らない……
「ええ」
イレーネが頷いた。
どうやら俺達がいた大陸はダニア大陸というらしい。
「へー……遠いところからようこそ。旅行か何か? 僕、ベニーって言うんだ」
ベニーとやらはイレーネに話しかけている。
なんか軽い男だな。
「旅をしているのよ。それで相談したいの」
「暇だし、良いよー。あ、ギルドカードを見せて」
「ええ」
ベニーがそう言うのでイレーネと共にカードを提出した。
「ふーん……ん? 名字が同じだけど、夫婦か何か?」
カードを見比べていたベニーが見上げてくる。
「そうだ」
断言することが大事ってリーエが言ってた。
それにイレーネももらってくれるって言ってたし。
「あ、そうなんだ。それは残念。ちょっと待ってね。確認してくるからさ」
ベニーはカードを持って、奥に向かった。
「なんかイラっとくる人ですね。男性はどしっとしてないといけません」
俺、してるかな?
「そこまでじゃないが、軽薄そうだったな」
「あまりギルドでは見たことがないタイプね……」
お国柄か?
俺達が待っていると、ベニーが戻ってくる。
「お待たせ。カードを返すよ」
ベニーがカードを返してきたので財布にしまった。
「それで相談があるんだが」
「うん。何? 本当に暇だからいくらでも聞いてよ」
他に客がいないしな。
「俺達はここに来たばかりであまり知らないんだ。仕事はどんなのがあるんだ?」
「うーん……Eランクだよね? まあ、仕事はあるよ。主に採取とか魔物退治とかだけどね。他にも雑用とかも紹介できるよ」
雑用はいいや。
どうせ安価で誰でもできるやつだろう。
「俺もイレーネも剣に自信がある。魔物退治が良い」
「でしょうねー。データを見たけど、オークとかも倒してるじゃん。なんでEランク?」
その辺のデータも共有しているんだったな。
「冒険者になったのが最近ってだけだ」
「へー……どうせ何かをやらかしての二重登録でしょ。良くないよ」
やっぱりそういう人は多そうだな。
「違う」
「いや、ダニア大陸から旅ってそれしか……まあ、いいか。魔物退治だったら沿岸を歩いてサハギンを倒すのがおすすめ。魔石を1万ソルで買い取るよ」
1万か。
それにサハギンは知っている。
半魚人と呼ばれる魔物だ。
もっとも、見た目的にあまり人に近くはないが。
「そのぐらいか?」
「この辺りはそうだね。まあ、やってみなよ。もし、それでも不満ならまた考えてあげる」
やってみるか。
「沿岸を歩けば出てくるのか?」
「出てくるね。君らは港から来たでしょ? こっち側が北で反対側が南。どっちでもいいよ」
「わかった。今日はこんな時間だから明日にでも歩いてみる」
散歩だな。
「うん。それが良いね。泊まるところは決まってる?」
「それも教えてほしい。浴槽があると嬉しい」
「うーん……高級、普通、わーおがあるけど、どれ?」
わーおはないな。
「普通で良い」
「じゃあ、この通りをさらに北に50メートルくらいにある宿屋だね」
「わかった。行ってみる」
「お仕事頑張ってねー」
フレンドリーな奴だなーと思いながらも用件が済んだのでギルドを出た。