軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第091話 なんか本当に駆け落ちに見えてきました……

翌日はリーエが起こしてくれることもなかったので自然に10時くらいに起き、トランプをしながら過ごしていく。

ずーっとトランプをしていたし、たまに甲板に出たり、船内を歩いて見たりしたが、やはり暇になってきた。

とはいえ、やることもないので夕食を食べた後もトランプをしていく。

「本でも買えば良かったですかね? あ、上がりです」

「そんな暇はなかったし、節制してたからなー。あ、俺もだ。イレーネ、取れ」

「うーん、魔法の練習をしたいな……」

取れよ。

こっちを見ろ。

「イレーネがこう言ってるぞ」

まあ、こんなに積極的に魔法を学びたいと言っているのはすばらしいことだ。

「まあ、魔力操作がお上手になっていますし、魔力障害は大丈夫だと思いますが、やった方が良いですね」

「ムーブか?」

火魔法はさすがにない。

「いえ、ライトにしましょう。あれならイレーネさんが暴発しても私達の目が潰れるだけです」

良くはないな。

「大丈夫か?」

「火を放出し続けることもできていますし、大丈夫でしょう」

「じゃあ、任せるわ」

トランプをしまうと、他意はないが、イレーネの隣に行く。

「では、イレーネさん、ライトです。私達が何度も使っているのでわかると思いますが、光を出す魔法ですね」

リーエ先生が授業を始める。

「テントで野営した時に便利だったわね」

「ええ。実はこれ、そういう生活面の他にも使えることがあるんです」

「ライトが? うーん……急に光を出してびっくりさせるとか?」

可愛いな。

でも、正解だ。

「その通りです。例えばですけど、夜中、歩いている時に暴漢が目の前に現れたとします。その時にこれを使えば相手の目を眩ませることができるのです。そこから退治しても良いですし、逃げても良いです。そういう風に使える魔法なんですよ」

そういうのだけじゃなく、ライトは色々な用途がある。

それでいて、難易度が低い魔法だからほぼ全員の魔法使いが使える魔法だ。

「戦闘でも使えそうね」

「ええ。しかも、これは対人間だけでなく、視力がある生き物なら魔物だろうと通じます。注意点はちゃんと目を閉じることですね。自爆になります」

自分も目が眩んだらギャグでしかないな。

「タイミングを計らないとね。敵の目の前で目を閉じるって相当だから」

まあな。

「その辺は頑張ってください。では、指を上げてください。あ、せっかくなので灯りを消しますか」

リーエが立ち上がり、灯りを消した。

それにより、真っ暗とは言わないが、窓から入ってくる月明かりのみになる。

「暗いぞ」

「すぐに明るくなりますよ。イレーネさん、光をイメージして、魔力を込めてください。あ、少量ですよ。あのイレーネさんが練習していた蝋燭の火くらいです」

「こ、こう?」

イレーネが魔力を込めると、指先がわずかに光った。

「良い感じです。もうちょっと魔力を込めてみてください」

リーエの言葉を聞いたイレーネがさらに魔力を込める。

すると、豆電球が暗めのムードある間接照明くらいになり、イレーネを照らした。

「なんか絵になるな」

綺麗だわ。

「でしょ? はい」

「ああ」

イレーネが空いている右手を上げたので握る。

「イレーネさん、それを維持してください」

「維持ね……そういえば、テントの中とかでも光量がまったく変わらなかったわね」

「チカチカすると目によくありませんからね。まあ、私達は慣れているだけです」

維持っていうのは魔力を一定で出し続ける魔力操作だからな。

あの程度の魔力なら学生レベルだ。

「ふーん……ぼんやり光を見るのも良いものね。ヴェルナーは光り輝く私を見てなさい」

ちょっと暗めの灯りだから輝いてはないな。

魅力的ではあるが。

「見てる、見てる。ライトの魔法は色も変えられるぞ」

「色?」

「こんな感じ」

空いている右手を上げ、指先に赤、青、黄、緑、白の5色の光を出す。

「おー、すごい!」

「さらにこれを飛ばせる」

5色の光は指から離れ、ゆっくりと宙に浮き、不規則に動いていく。

色鮮やかな蛍だ。

「おー……ロマンチック」

「見せる相手もいなかったんですけどね」

お前がいたわ。

それに最初はすごいですって興奮してただろ。

まあ、10分くらいで自分でやってたけど。

「良いじゃない、良いじゃない。私、こういうの好きよ」

喜んでもらえて何より。

その後も良い感じの照明を見せながらイレーネのライトの練習をしていき、ちょっと夜更かしになったが、就寝した。

翌日もトランプをしたり、魔法の練習をしていった。

そして、昼食を食べ終えると、片付けを始める。

「ヴェルナー様、イレーネさん、陸地が見えますよ」

窓から外を覗いたリーエが教えてくれる。

「どこ、どこ?」

「あ、ホントだな」

イレーネと窓から外を覗くと、遠くに陸地が見えてきた。

「片付けたら甲板に行って、見に行きましょうよ」

「そうだな。リーエも来い」

「えー……」

そんなに嫌か?

「ここまで来たらあそこまで飛べるだろ。大丈夫だよ」

「まあ……」

リーエが渋々っぽいが、頷いたので片付けをし、最後にマットレスを収納すると、部屋を出た。

そして、甲板に出ると、陸地を見る。

「おー……大きいわね」

「あれがリーンド大陸か」

「町も見えますね。あれがクレイナの町でしょうか?」

リーエが指差した先には町があり、遠目にも船が見えていた。

「多分な。今からあそこに行くんだろう」

船の方向的にもそうだ。

「幸薄イレーネさんのせいで漂流とか沈没とかしなくて良かったわね」

自分で言うか?

「幸薄いのは白銀のセシリアさんですよ。あなたはEランク冒険者のイレーネ・ランゲンバッハさんです」

「いまだに名字は慣れないわね……」

呼ばれることなんてないからな。

「あそこから俺達の新しい人生が始まるんだ。不幸じゃなくて、幸運が待ってるよ」

「ヴェルナーは良いことを言うわね」

イレーネが手を握ってきたので強く握り返し、町を見続けた。