作品タイトル不明
第087話 ヒットマンホムンクルスですー
馬車が進んでいくと、町の中に入った。
馬車が止まらずにそのまま進んでいくので町中を見ていくが、ブレイナの町は港町なだけあって、魚介系の料理屋や釣りや船関係の店が多い。
何よりも俺達が海の藻屑となったマリティアの町と同様に海の香りがする。
「教授やベッキーはこの町に来たことがあるのか?」
「あるよ」
「私もありますね。夏は泳いだりもできるんですよ」
へー……
俺達が話をしていると、冒険者ギルドの前で馬車が止まった。
ギルドは外観からしてもそこまで大きくない。
「さて、着いたな」
「長かった……」
「依頼終了です」
俺達は馬車から降りる。
すると、ダリアがこちらにやってきた。
「お待たせしました。色々とありましたが、無事にここまで来られましたね」
ダリアが苦笑いを浮かべる。
「そうだな」
「疲れたわ」
「早速、依頼の報告をしましょう」
そうするか。
「ベッキー」
「あ、そうですね。すみません。私達はここでお暇します」
教授が促すと、ベッキーが笑顔で告げてくる。
「あ、そうだな。そっちは別便だもんな」
俺達と同じリーンド大陸に行くが、俺達はメラニカ王国でベッキー達はマルーン王国だ。
「ええ。さすがに今日は出ませんが、明日には出ると思います。ここまでお世話になりました。ダリアさん、ここまで乗せてくれてありがとうございました」
ベッキーが頭を下げる。
「いえ、こちらこそありがとうございました。本当に助かりましたよ」
確かにベッキーと教授がいてくれて助かったな。
「教授、何か言った方が良いんじゃないですか?」
ベッキーが教授に肘打ちをする。
「特にないが……いや、君達もリーンド大陸に行くんだったね。もし、どこかで会うことがあったらまた仕事を頼むかもしれない。レイスバードの件は助かったよ」
魔石を譲った件だ。
「いや、こっちも高値で買い取ってもらって助かった。教授、最後に聞いていいか?」
「何かね?」
「ベッキーが持っていた武器は何だ?」
この際だし、聞いてみよう。
「ふむ……こいつかね?」
教授が懐から黒い拳銃を取り出した。
「ああ。それだ」
「これか……これは数ヶ月前に私がいる研究機関で開発された武器だよ。まだ試作段階だが、誰でも使える遠距離用の武器だね」
なるほど。
「まだ出回ってないのか?」
「出回ることはないと思う。いや、あるかもしれないが、当分先だな。これを一つ作るのにかなりの金額がかかる」
それはちょっと安心。
「そうか……トカゲが穴だらけだったからちょっとびっくりしたんだよ」
「試し撃ちしたんだよ。もっとも、ベッキーがやった方が早かったがね。やはりまだ改良の余地があると思う。そうだな……君に1つあげよう」
は?
「いや、さすがにそんな高いものは受け取れない」
気になるけど。
「私も貰い物だから無料だよ。渡すから使ってみて、出来や改良点を報告してほしいんだ」
「報告って言われてもどうするんだ? 同じ大陸に行くが、国が違うだろ」
どこにいるかわからん。
「手紙を書いて、ギルドでベッキー宛に出してくれ。それで届く」
そんなことができるのか。
「あ、私はベッキー・グッドウィンです」
グッドウィンね。
「わかった」
教授から拳銃を受け取る。
「使い方は引き金を引くだけだ。弾は10発。大事に使いたまえ。それでは」
教授がそれだけ言って、歩いていく。
「皆さん、またどこかで!」
ベッキーが元気に手を振りながら教授のあとを追っていったので俺達も振り返した。
「それでは私達も用事を済ませてしまいましょう」
俺達はダリアと共にギルドの中に入る。
ギルドはこれまでと同じような構造であり、手前が待合スペースで奥が受付だったが、冒険者の姿は見えないし、受付が1つしかなかったので向かう。
「すみません。依頼の報告です」
ダリアが受付にいる若い男性職員に書類を提出した。
「はいはい……えーっと、ミストラからここまでの護衛依頼ね」
「はい。問題はありませんでしたし、100点満点でお願いします」
問題はめちゃくちゃあったけどな。
まあ、足止めを食らうから言わない。
「了解です。では、依頼達成ということで。料金の支払いをお願いします」
「はい。ヴェルナーさん、これを」
ダリアが10枚の1万ソル札を渡してきた。
「ああ。確かに受け取った」
「では、これで依頼完了です。お疲れ様でした」
俺達は用件が済んだのでギルドを出る。
「あー、終わったわねー」
「お風呂に入りたいです」
「同感」
俺も入りたい。
「ダリア、俺達も今日は泊まる。宿屋を紹介してくれないか? できたら浴槽付きが良い」
「ええ。私もそうします。馬車に乗ってください。案内しますよ」
「ああ」
ダリアが御者台に乗り込んだので俺達も荷台に乗り込んだ。
すると、馬車が動き出す。
「なんかもらっちゃったぞ」
2人に拳銃を見せる。
「普通、くれる? 本当に変わった人よね」
「びっくりしましたね。これ、どうします?」
うーん……
「まあ、どっかで試してみて、その成果を報告書にまとめるか」
「お任せします」
「さすヴェルー」
報告書を書きたくないわけだ……
「それとちょっと調べてみるか」
構造が気になるし、それにより対策もできるかもしれない。
「それが良いと思います」
「私はわからないから任せるわ」
やってみるか。
「リーエ、持っておけ」
「わかりました」
リーエが頷き、空間魔法にしまうと、宿屋の前で馬車が止まった。