作品タイトル不明
第100話 手を繋ぎながら寝てます……
俺達が話しながら進んでいると、日が沈みだしたので今日はここまでにし、馬車を街道から逸らし、止めた。
そして、テントを設営すると、中で夕食を食べる。
「明日は何時?」
「5時ですね」
リーエが即答する。
「早いわね……」
早いな。
「いや、どうせやることもないですから早めに寝ましょうよ。それにだらだら進んで何日もかけるより、早めに着いて、お風呂とベッドがある宿屋に泊まる方が良いじゃないですか」
「「ごもっとも……」」
夕食を食べ終えると、早めに寝ることになったとはいえ、さすがに早すぎるのでトランプをする。
「明日には着くかねー?」
「どうかしら? 今回の旅は詳しいダリアがいないからね」
なんだかんだでガイドしてくれた良い奴だったな。
「ちゃんとベニーから聞いておけば良かったな」
「スリーフの町では聞きましょうか」
「そうだな……ん?」
魔力?
「何か来ますね……」
「え? 魔物?」
いや……
「人だと思う」
「ミスディレクションをかけているんですが……」
まあ、ミスディレクションも万能ではないからな。
「どうする?」
イレーネが剣を取った。
「一人だし、盗賊ではないと思う。でも、いつでもやれるようにしておけ」
「了解」
俺達はトランプをやめ、いつでも戦闘ができるようにする。
そうやって待っていると、テントの数メートル前で魔力が止まった。
『すまない! 誰かいるだろうか!?』
男性の声だ。
「どうします?」
「俺が出る」
2人を残し、テントから出た。
すると、馬を引く皮製の鎧を着た冒険者らしき男が立っていた。
男は短めの茶髪であり、中肉中背だが、鍛えられた身体をしているのが鎧の上からでもわかる。
そして、魔力の大きさから弱くないと判断できた。
「冒険者か? どうした?」
「こんな時間に声をかけてすまない。怪しいのはわかっているが、食料を分けてもらえないだろうか? もちろん、金は払う」
食料?
「落としたのか?」
「いや、近くの村で缶詰を買ったんだが、古くてとても食える状態じゃなかったんだ。朝から何も食べてないし、このままでスリーフに戻るのはきつい」
目的地は一緒か。
しかし、こいつは馬だ。
多分、俺達より早く着くだろう。
「まあ、缶詰はあるし、分けても良いが……」
「頼む。そちらが買った値段の倍で買い取る。1つ2つで良いんだ」
ふーむ……
「ちょっと待ってろ」
そう言って、テントの中に戻った。
「缶詰ですか?」
テント越しに話を聞いていたリーエが聞いてくる。
「ああ。イレーネ、どう思う?」
「私達は余裕があるし、分けてあげるべきよ。こういうのは助け合い。というか、断るとね……」
素直に帰ってくれるかわからんか。
「じゃあ、売るか。どれにする?」
「オーソドックスな鶏肉とオイルサーディンで良いんじゃない?」
まあ、それで良いか。
「リーエ、出してくれ」
「どうぞ」
リーエが空間魔法から取り出し、渡してきたのでテントの外に出た。
「待たせたな。これで良いか?」
冒険者の男に缶詰を渡す。
「助かる。いくらだ?」
「どっちも1500ソルだ」
「じゃあ、6000ソルだな」
男は財布を取り出し、金を渡してきた。
「確かに」
「恩に着る。俺はBランクのロビンだ。ここで食べるのは悪いから先に行くが、またどこかで会えたら礼をさせてくれ」
ロビンとやらはそう言って、缶詰をカバンに入れると、馬に跨った。
「別に礼なんかいらん」
「そういうわけにはいかない。恩は返すものだ。それでは。本当に助かった」
ロビンはそう言い、馬を走らせていったのでテントに戻る。
「Bランクだと」
「そのくらいの魔力はありましたね。ベッキーさんより上でした」
ダリアくらいはあったな。
「強そうだった?」
「イレーネほどじゃない」
「ふーん……まあ、儲かったし、良いんじゃない? 私達も同じようなことがないようにしましょう」
ちゃんとしたところで買うようにするか。
「困ったらイレーネが交渉してくれるから良いな。お前が頼めばスムーズそうだ」
「全然。身体を要求してくるわよ」
マジか……
「食料には気を付けよう。もし、そういう場合が起きても俺が交渉する」
「そうしてちょうだい。はい、手」
イレーネが手を出してきたので握る。
「そろそろ寝ますか」
「そうするか」
俺達はトランプをしまうと、ライトを消し、就寝した。
翌日、朝というか、まだ暗い時間にリーエに起こしてもらうと、準備と片付けをし、出発した。
「朝日が綺麗ね」
「ホントだな」
「今日は本当に朝日ですね。良いことです」
眠いがな。
俺達は朝食を食べると、昨日と同じく、お互いの昔の話をしながら進んでいく。
すると、昼食を食べ終えた辺りで前方に森が見えてきた。
「森だな」
「森の中を通るんですかね?」
んー……
「いや、街道が左に逸れている。森は迂回するっぽいな」
「近いかもしれませんね」
人は生活のために自然が豊かなところに町を作るってやつだな。
そのまま進んでいくと、街道に沿って左に曲がる。
さらに進んでいくと、森に沿って、右に曲がった。
「あ、町です」
「そんなに大きくないけど、町ね」
前方にはクレイナの港町よりは大きいが、そこまで大きくない町が見えていた。
「やっとだな」
「今日はお風呂に入るわよ」
「賛成です」
ギルドで湯船のある宿屋を紹介してもらうか。
俺達はさらに進んでいき、町に入った。