軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第203話 応用課題と実技試験

期末試験二日目。

午前は応用課題だった。

昨日の筆記試験とは、また違う重さがある。

筆記は、知識を使って判断する試験だった。

だが、応用課題はさらに厄介だ。

問題文を読んだ瞬間、俺はすぐに分かった。

一年の頃とは、段違いに難しい。

条件が多い。

関係者も多い。

最初から正解が一つに決まっている問題ではない。

何を優先するのか。

誰を動かすのか。

そして、失敗した場合に次に何をするのか。

そこまで考えなければならない。

ただ知っていることを書くだけでは足りない。

状況を整理し、判断の筋道を示す必要があった。

俺は問題文を何度か読み返した。

難しい。

だが、全く手が出ないわけではない。

三年Sクラスで何度も応用課題を解いてきた。

その一つ一つが、問題文の中の条件と少しずつつながっていく。

これまで学んだことを思い出しながら、俺は答案を書き進めた。

完璧かどうかは分からない。

応用課題の時間が終わると、教室の空気が少しだけ緩んだ。

ヴィクトルが机に肘をつき、深く息を吐く。

「筆記より頭使った気がする」

「応用課題なのだから当然でしょう」

セレナが冷静に言った。

「正論が疲れた頭に刺さるね」

ヴィクトルは力なく笑う。

ガイルは答案を回収されるのを見ながら、短く言った。

「難しかった」

ナディアが隣で頷く。

「でも、昨日より言葉にできていたと思います」

「ならいい」

ガイルはそれ以上言わなかった。

だが、少なくとも手応えがなかったわけではなさそうだ。

エドガーは静かに資料を片づけながら言った。

「午後は実技だ。切り替えよう」

「早いな」

俺が言うと、エドガーは少しだけ目を細める。

「試験中だからね」

その通りだった。

午前の応用課題が終わっても、期末試験はまだ続く。

午後は実技試験。

三年Sクラスで上位に入るためには、ここでも結果を出さなければならない。

昼休みを挟み、俺たちは訓練場へ向かった。

いつもの演習とは空気が違う。

訓練場には、試験用の区画がいくつか用意されていた。

木剣。

模擬用の防具。

魔法制御用の結界具。

そして、審判役の教師たち。

生徒たちは自然と口数が少なくなっていた。

ベルンハルト先生が前に立つ。

「午後は実技試験を行う」

先生の声が訓練場に響いた。

「今回は班演習ではない。生徒同士の一対一だ」

訓練場の空気が少し動く。

一対一。

班としての動きではなく、個人としてどこまで対応できるかを見られる。

「勝敗だけを見る試験ではない」

ベルンハルト先生は続けた。

「相手をどう見たか。崩れた時にどう立て直したか。自分の得意な形にどう持ち込んだか。そこを見る」

先生は一拍置いた。

「もちろん、勝てるなら勝て」

その一言で、何人かの表情が変わった。

評価は勝敗だけではない。

だが、勝つことに意味がないわけではない。

三年Sクラスらしい、嫌な緊張感だった。

試合は順に行われた。

最初の数試合から、一年の頃とは明らかに違った。

動きが速い。

だが、それだけではない。

簡単に大振りしない。

相手の足元を見る。

魔法を撃つ時も、ただ当てるのではなく、相手の動く場所を削っている。

三年Sクラスの実技は、派手な一撃だけでは決まらない。

ガイルの番が来た。

相手は、体格のいい三年生だった。

開始の合図と同時に、二人がぶつかる。

重い音がした。

ガイルは押す。

だが、相手も簡単には崩れない。

力だけで受けるのではなく、半歩ずらして圧を逃がしている。

ガイルが一歩踏み込む。

相手は横へ流れる。

だが、ガイルはそれを追いすぎなかった。

正面から押し潰すのではなく、相手の逃げる先へ先に体を置く。

この二か月で、ガイルの前衛は変わっていた。

最後は、相手の足が止まった一瞬を逃さず、木剣の先を胸元へ届かせた。

「勝負あり」

ベルンハルト先生の声が響く。

ガイルは短く息を吐き、相手に軽く頭を下げた。

次にセレナの試合。

セレナは、最初から距離を支配していた。

魔法で相手を吹き飛ばすのではない。

進もうとする方向をずらす。

踏み込みたい場所を消す。

相手が攻めようとするたびに、ほんの少しだけ進路がずれる。

見ているだけなら地味だ。

だが、相手にとってはかなり嫌なはずだ。

最後は相手の体勢が崩れたところへ、セレナが静かに決定打を入れた。

ナディアの試合は、さらに静かだった。

大きく前に出ない。

相手の攻めを受け、流し、崩れたところだけを取る。

派手さはない。

けれど、危なげも少ない。

ナディアらしい試合だった。

ヴィクトルは苦戦していた。

真正面からの力勝負では分が悪い。

それでも、すぐには崩れない。

間合いを外し、立ち位置を変え、相手の踏み込みを少しずつずらす。

最後は押し込まれたが、ただ負けたわけではなかった。

ベルンハルト先生も、結果だけを見ているわけではなさそうだった。

エドガーは冷静だった。

相手の狙いを読んで、無理に受けず、少しずつ主導権を取る。

そして、相手が焦って大きく出た瞬間に、静かに勝負を決めた。

さすがだった。

既存の三年生たちも、やはり強い。

ライオネルの試合は、見ていて分かりやすかった。

前へ出る。

ただ、それだけではない。

相手の逃げ道を先に潰している。

圧が強いのに、雑ではない。

相手は押されているようで、実際には逃げる場所を一つずつ消されていた。

最後は、ほとんど正面から押し切られる形になった。

だが、あれは力だけではない。

動かされて、追い込まれて、最後に受けるしかなくなったのだ。

リオンたちが頭角を現し始めた。

それは確かだ。

だが、上位陣はやはり違う。

追いついてきたと思っても、まだ先がある。

そのことを、試合を見るだけで思い知らされる。

クラウスは、まだ呼ばれていなかった。

訓練場の端で、静かに試合を見ている。

焦る様子はない。

勝った者にも、負けた者にも、同じように視線を向けている。

その落ち着きが、逆に目立っていた。

何組目かの試合が終わった後、ベルンハルト先生が名簿に目を落とした。

そして、顔を上げる。

「次」

訓練場の空気が、少しだけ変わった。

「リオン・ハル」

俺は一歩前に出た。

「はい」

先生の視線が、もう一人へ向く。

「クラウス・レインフォード」

その名前が呼ばれた瞬間、周囲の視線が集まった。

クラウスが静かに立ち上がる。

俺は、静かに息を整え、木剣を手に取り、試験区画の中央へ向かった。

クラウスも向かい側に立つ。

「よろしくお願いします、クラウスさん」

俺が言うと、クラウスは静かに頷いた。

「こちらこそ、リオン」

短い言葉。

だが、そこに甘さはない。

ベルンハルト先生が俺たちを見た。

「構え」

俺は木剣を構える。

クラウスも剣を構えた。

その構えを見ただけで、分かる。

隙が少ない。

無理に攻めてくる感じはない。

だが、こちらが少しでも崩れれば、すぐに入ってくる。

訓練場が静かになる。

セレナたちの視線も感じる。

ライオネルもこちらを見ていた。

俺は息を細く吐いた。

ベルンハルト先生の声が落ちる。

「始め」

次の瞬間、クラウスが一歩踏み込んだ。

速い。

だが、それ以上に、無駄がない。

俺はその一歩だけで分かった。

クラウスは、今まで戦った学生とは違う。