軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

実験開始

「一番知られて困るのは、キングダムの王族と四侯が自分で結界を作れること、そして結界が共鳴し合えば広い範囲に結界を広げることができるということです」

いろいろ考えた結果、兄さまはそれが一番問題だという。

「魔道具は分解すれば構造自体は簡単ですし、マールライトに秘密があるということは、辺境で魔道具を扱うものならだれでも知っていることです」

確かに、トレントフォースでバートは、魔道具を分解しながら説明してくれたと思う。

「何かをすることはわかっていても、なにをどうやっているのかは、見ただけではわかりません。それに、リアがオールバンスの秘蔵っ子だということは知られていますし、大丈夫でしょう」

ということで、ファーランド一行に知られてもいいので、旅の間に堂々と実験を行ってもいいということになった。

もっとも、兄さまから相談を受けたヒューは、面倒なことをという気持ちを隠さなかった。

「リアは、りゅうしゃにのってるじかんを、ゆうこうかつようしたいだけよ」

「有効活用などという口はこうだ。生意気な」

「あにをひゅるー」

つまむのは口ではなくほっぺでしょということは言わないでおく。

ニコは、私と一緒にユベールから変質を教わった生徒なので、私のやりたいことをすぐにわかってくれた。それどころが、ずいぶん乗り気だった。

「それではリアに、わたしからもていあんがある」

「ていあん?」

ニコにもなにか考えがあるとは思わなかった私は少し驚いた。

「明かりのまどうぐをつくるときにかんがえていたことなのだが、そもそもマールライトが大きすぎる。これは小さくできないものか」

「ほんとだ。ユベールからもらったマールライトも、だいたいおんなじおおきさだし」

自分の依頼が、兄さまにやっと認められたとニコニコと私たちを見ていたバートが、ぐいっと身を乗り出してきた。

「魔道具のことなら俺に聞いてくれ。いちおう、魔道具の店で働いていたんだからな」

「そうだった」

ハンターを引退した後は、魔道具師になることを目指していたはずだった。

「小さいまどうぐを作りたいなら、マールライトも小さくせねばならぬ。どのくらいまで小さくできる?」

ニコの質問にバートはすぐに答えた。

「一番小さい魔道具は熱を出す魔道具なんだ。リアもよく知ってるだろ。旅の間、桶の水を温めていたやつだ」

「しってる!」

お屋敷に戻った後はほとんど見たことがないが、確かに熱を出す魔道具は手のひらにおさまるものだったような気がする。

「あれだと、明かりの魔道具の半分くらいの大きさでいいはずだ。そしてそれが最小だな」

私はふむと頷いた。

逆に結界箱はそもそもが大きいし、明かりの魔道具より大きいマールライトを使っている。結界に使う魔石が大きいからというのも一つの理由だ。

「では、まずは大きさのちがうマールライトをつかってやってみるべきではないか」

「ニコ、かしこい」

私は感心して手を叩いた。私は、時間と日にちを変えることはやってみようと思っていたが、マールライトの大きさまでは考えていなかったからだ。

「リア、じかんとひにちはおなじにして、大きさをかえてやってみよう」

「リアが、ねつのまどうぐにつかうちいさいほう」

「わたしが、明かりのまどうぐにつかうふつうのやつだな」

分担はすぐにできた。

「いつやる?」

「りゅうにのっているとき」

「ふむ」

ニコはすぐには頷かなかった。

変質は結界を作る魔力を送り込むことであって、実際に結界を作るわけではない。だが、結界を張りながらやったほうがうまくできる。これは、マールライトを変質させるより、結界を作ることが先に出来た私たちならではの特徴かもしれない。実際、ユベールは結界を作り出すことはできないのだから。

「それはどうだろう。いっしょのりゅうしゃでも、ふりわけかごでもきけんだぞ」

危険というのは、うっかり結界が重なってしまって共鳴が起きてしまいかねないということである。

「でも、リアはニコといっしょのりゅうしゃにのりたいんだもん」

「わたしもだ」

仲良しということが実験の足を引っ張ることになるとは思いもよらなかった。

「ごはんのあとはあそびたいし」

「そうだな」

移動中が一番暇だと思ったのだが、なかなか難しい。どこで時間をとればいいのか。

「むー」

「むー」

二人で腕を組んで悩んでいると、兄さまに頭を撫でられた。

「では、私かギルが一緒にいて、時間を測ることにしましょうか。そもそもどのくらいのじかんやるつもりだったんですか?」

私はニコと顔を見合わせた。

「みじかいほうがいいとおもってた。じかんも、ひにちも」

「では、一じかんの半ぶんだな。それを、三日くらいか」

「三〇分を三日間ですね。その三〇分を、一日何回ですか?」

ニコは何回でも平気だという顔をしていたが、私には無理だ。幼児のせいか、意外と集中力がないのだ。お昼寝もしたいし。

「一かいでいい……」

「では、午前中にしましょうか」

「うん」

意気込んでいた割には一日一回しかできない私である。

その日の午前中は竜車に乗り、ニコと交代でマールライトの変質を試した。兄さまが懐中時計を見ながら時間を測ってくれている。

「三〇ぷんでも、へんしつはできてる」

小さいマールライトでも変質はできていた。

「でも、じかんがたったら、こうかがなくなるかもしれないから、あとでたしかめないと」

「そうなのですね」

兄さまがノートに記録を書きつけながら、私の説明を真面目に聞いてくれた。そして実験に使ったマールライトを預かってくれる。

「にいさまにかくしごとがないと、たびがたのしい」

「当たり前でしょう。今は楽しいということは、他に隠し事はないということになりますね」

「はい!」

心にやましいことのない私は元気に返事をし、その日の旅路も食事も十分に楽しんだ。