軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

外側もだいじ

そして旅の初日に決めた、夜のお楽しみタイムがやってきた。

「にいさま、マールライトみせて」

「昼に預かったものですか? いいですけど」

兄さまは、丁寧に布で包んだマールライトを見せてくれた。私のが淡いピンク、ニコが真っ白の布だ。

私は自分のマールライトをそっと取り上げて、魔力を流してみて、思わずがっかりした。

「リア、どうしました?」

「きえてる」

昼に三十分間注ぎ続けた貴重な結界の変質が消えているのだ。それを聞いてニコが慌てて自分のマールライトを取り上げ、魔力を流してみている。

「こっちのマールライトはちゃんとだいじょうぶだ」

「ええ、いいなあ」

勝ち負けでも何でもないのだが、自分のやったことに意味がなかったのかと思うとがっかりする。

「まりょくをいれたときはだいじょうぶだったのに」

「そうしたら、明日はリアは三〇分ではなくて一時間でやってみたらどうですか?」

「そうする」

さっそく実験の成果が出たとも言えるのだから、がっかりすることはない。兄さまの提案で明日すべきことがわかったからいいと思う。

「ということは、俺の作るべき箱は明かりの魔道具の大きさを基本にするってことか」

外側担当のアリスターが興味津々な顔でマールライトの大きさを判断しようとしている。

「だけど、明かりは苔を使うし、熱は特殊な砂が必要だ。結界箱はそういったものを使わないから、魔石を安定させる柔らかい布だけでいいんだが、そうなると微調整が必要だな」

手をわきわきとさせているのは、実際にどう細工していくか考えているのだろう。

「箱だけでなく、それをどこに着けるかを考えてくれよ」

余計な注文を出すのはバートだ。

「俺としては、ラグ竜に乗ってるときにさ、片手でカチッとスイッチを入れられるようにしたいんだよ。だからベルトとかにつけられると助かるんだが」

「それはもうポーチみたいなもんで、箱でもなんでもなくないか」

バートの夢が広がっていてなによりだが、確かにどう使うか考えることも大事かもしれない。

私は思いついたことを一つ一つ口にしていく。

「けっかいはまるいかたちだから、からだのまんなかあたりにはこがあるのがいい。そうすると、ベルトか、リアのラグりゅうポーチみたいに、かたかけにするか」

「小さいやつが完成するんなら、ブローチみたいにしてもいいかもな。紐をつけて首から下げてもいい」

ワイワイと話していると、まだ実験を始めたばかりなのにもうできているような気がするのが不思議だ。

「あ、ジャスパー」

小さい子組で参加しているジャスパーは、私たちが何の話をしているのかさっぱりわかっていないだろう。楽しいからと言って、一人だけのけものにしていていいわけがない。

「新しい魔道具を作ろうとしているんですよね。リア様は小さくても、やはりオールバンスなのだと、感心していたところです。それより私が聞いていてもいいことなんでしょうか」

「大丈夫ですよ。ただの楽しい実験なのですから」

にこやかに肯定する兄さまを見ながら、私はユベールのことを思い出していた。

そういえば、四侯や王族だけでなく、魔道具師もキングダムを出てはならないのではなかったか。それは魔道具の知識を流出させないためだったような気がする。ということは、これがばれたらめちゃくちゃ監理局に怒られるのではないか?

監理局の偉い人がどんな人かわからないから、怒られるかもと思っても怖くはない。

この実験によって、キングダムにマイナスになるようなことがあれば、兄さまとギルが止めるだろう。止めないのだから、心配することは何もないのだと、私は取り越し苦労をするのをやめた。

わいわいと話す時間が過ぎて、皆が部屋に戻って行った後、私はもう一度兄さまにマールライトを出してもらい、魔力を通してみる。

「やっぱり、へんしつがきえてる……」

「そんなにがっかりしないでください、リア。明日は新しいマールライトで実験を始めるのでしょう?」

「うん」

今持っているマールライトに、どのような影響が残っているかわからないから、明日からはまっさらなマールライトを使う予定だ。

「でも、いちばんさいしょの、きねんのマールライトだから、すてたくない」

捨てるのも、他の魔道具の材料として使うのも違うような気がするのだ。

「だったら、リア様のラグ竜に入れたらいいのではないですか? 大事なものを入れるポケットがついていましたよね」

「ナタリー、いいかんがえ!」

普段は兄さまとの話に割り込んでこないナタリーだが、私がよっぽど惜しそうな顔をしていたからか、そう提案してくれた。

私はポシェットのポケットにいそいそとマールライトを入れ、それを枕の隣に置いて寝ることにする。

「もうつかわないなら、すきにまりょくをいれてもいいよね」

私は誰に言うともなくつぶやいた。魔力と言っても結界の魔力である。

「いいですとも。私に声をかけてくだされば、私が大体の時間を計測しておきますから」

「ありがと、ナタリー」

実験ではないから、時間は計らなくていいよと言おうとしたが、次の瞬間には眠ってしまっていた私である。