軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

気力充実

「けっきょく、なにをするの?」

私は兄さまに尋ねた。足元に置いてある結界箱を見てから、話がずれてしまった。

「結界箱を発動させますよ」

兄さまはニコニコと嬉しそうだ。

「キングダム内でも実験はしたのですが、やはりキングダムの強固な結界の中では正確なところはわかりにくいのです。せっかく結界のない場所に来たのですから、実際に使ってみたいですよね」

ここにはいないユベールがそれを聞いたら悔しがっただろうと思う。だが、今も城にいて城の結界箱を調整しているはずだ。

「もちろん、数日滞在して、シーベルの結界の実験が終わった後も実験させてもらうつもりですから、ユベールはその時で大丈夫でしょう。リアは優しいですね」

なぜ私がユベールの心配をしているとわかったのだろうか。兄さまはキラキラした目で実験の説明をしてくれた。

「ここで発動させて、向こうにいるアリスターたちが結界の境目を見つけてくれる、そして正確な距離を測る、そういう実験ですよ」

「リア、わかった」

「どのくらいとおくまでとどくか、たのしみだな」

結界が目で見えるわけではないけれど、私とニコは竜車を降りると、御者席に乗せてもらい、シーベルの方角に豆粒のように見えるアリスターたちのほうに体を向けて手を振った。

「いいですか?」

竜車から兄さまが顔を出した。

「いーよー」

「いーぞー」

大きな声で返事をすると、兄さまは大きく頷いた。

「結界、発動!」

竜車の中で、ギルがスイッチを入れたのだろう。途端に胸の真ん中をキーンという気配が通り抜けていくのがわかった。

遠くに豆粒のように見えていたアリスターたちは、すぐに竜に乗るとシーベルのほうに駆けていき、やがて竜を止めた。少しうろうろしてから、位置を定めたようだ。

「ここを起点として、あそこまでが結界の半径になります。キングダムの結界の中でも、結界のないところでも、結界の有効範囲は変わらず、といったところですね。ということはキングダム内だけの実験で十分か……?」

「そうだと楽だろうな。さて、次は夜の検証だな」

「ギル! しっ」

兄さまがギルを止めたが、もう遅い。私たちはしっかりと聞いてしまった。

「よる」

「よるだな」

「あああ、もう。リアとニコ殿下は、夜に草原に出てはいけませんよ。連れて行きませんからね」

私は兄さまににっこりと笑顔を見せた。私だって無理を言ってはいけないことくらいわかっている。

「その笑顔が怪しいのです」

「確かにな」

嘆く兄さまと笑い転げるギルに一言言っておかなくてはなるまい。

「あやしくないもん」

怪しい人影もない草原で、実験は繰り返し行われ、何度スイッチを入れても、結界の範囲は安定して変わらないということがわかった。キングダムの結界の中で行った実験の結果と相違ないということでもある。

私とニコは結界が何度も体を通り抜けていくのを感じながら、草原で走り回っていた。大きな人たちは大変だなあと思いながら。私たちは明日、結界当日の夕方まですることがなく暇なのである。

「ウェスターにお渡しした結界箱もまったく同じ性能です。前日ギリギリの再検証ではありましたが、現地で確かめられてよかったです」

兄さまが爽やかな笑顔を浮かべている。

「昨日あれだけかっこつけて献上したわけだからな。結果が出て俺も嬉しい」

ギルもほっとしたようだ。

「だがルーク、ちょっと気になる報告が来たぞ」

「なんでしょう」

「シーベルの東と南の方角に、大きめの竜の群れがいるらしい」

「竜の群れ、ですか」

兄さまはユーリアス山脈のほうに目をやった。

私たちが連れて来たのではない竜が何頭もいて、ゆるい群れを形成している。そういった群れは、目に入る範囲だけでも数グループあった。それは特に何ということもない普通の風景である。

ギルが首を横に振る。

「ああいうのではなく、もっと規模が大きくて密なものらしい。これは報告だな」

「そうですね。万が一ということがあってはいけませんからね」

キングダムの門は、大量のラグ竜の群れに破られた。シーベルの結界箱を発動させるときは城の中でなく、城の門の前に置くらしいので、城の中の心配は必要ないだろうが、危険は避けたに越したことはない。

「さあ、無事結果が出ました。お城に戻りましょう」

「はーい」

「わかった」

兄さまの声と共に竜車に戻った私とニコは、たくさん遊んで明日の公務のための気力の充填をしっかり済ませていたのだった。