軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

夏休みの予定

私のつたない話と、バートやアリスターたちの話をつなぎ合わせてウェスターでの半年を語るのに、一日で済むわけがなかった。すぐにそれに気がついた兄さまは、バートに向かってこう提案した。

「もし時間の都合が合えば、リアに会いに来てくれたついでに、一日に少しずつ話を進めるというのではどうでしょう」

「いいぜ」

即決である。お父様にちょっとびくびくしていたミルも、自分だけが追及されるわけではないと理解してほっとしていたようだ。

お父様はお父様で、

「リアがカチカチのパンをかじっていただと……しかも水なしで……」

といちいち私を抱きしめて嘆くので、話の邪魔になってどうしようもない。しまいには兄さまに、黙って話を聞いてくださいと叱られてやっと静かになった。私にしてみれば通り過ぎてしまった思い出に過ぎない。ただバートたちと楽しく過ごした楽しさだけが残っている。トレントフォースまでの思い出と言えば、これである。

「うぇりぐり、おいちかった」

「リア! だよな! 俺の選んだものは間違いがないんだ」

アリスターが胸を張っている。

「みりゅのすーぷ。きゃろのちーじゅ。くらいどのえらんだふく。そちて、いちゅもばーとがいた」

みんなみんなお気に入りだった。

「みんながいりゅと、うぇしゅたーのかじぇがふく」

楽しいお話をしているのに、なぜ皆は涙ぐんでいるのだ。

「なあリア」

「あい」

アリスターがウェスターでそうしていたように私の前にしゃがみこんだ。

「俺たち、せっかくキングダムに来たんだから、王都に一か月くらい滞在しようかって話をしてるんだ」

「ほんとに?」

私は嬉しくてぱあっと笑顔になった。

「俺たちは大人だからさあ」

ミルが鼻の頭をこすって何やら偉そうにしている。

「昼はそれぞれの仕事関係のところの見学に行かせてもらって、夜は王都の町に繰り出す予定なんだけどさ」

「ミル、最後は余計だ!」

そしてバートに叱られている。

「だって、夜に町に出かけられるなんて、結界のあったトレントフォースでさえほとんどなかったんだぜえ」

「それはわかってる。だがリアに夜に遊びに行くとか言うな」

「りあもいく!」

「ほら、こうなるだろう……」

バートが頭を抱えている。私などずっと王都にいるのに、夜の町になど出たことがないのだ。

「おとうしゃま!」

「リア、子どもは夜に外に出てはいけない」

「おとうしゃま……」

お父様の言うことはもっともである。でもちょっと行きたかったな。私はちらっとお父様を見上げて、また目を落とした。

「リア、口がとがってる」

「とがってましぇん。もが」

アリスターに口をつままれてしまった。

「もちろん、アリスターも、ルークも駄目だ」

「ええ、それはないです、お父様!」

兄さまは叫び、アリスターはお父様からそっと目をそらせた。私はピンときた。うちに泊まらないからって、お父様の言うことを無視する気だな?

「アリスター、駄目なものは駄目だ」

「うっ」

でもアリスターも結局スタンおじさまに念を押されていて、留守番組になった。

「とはいえ、それでは納得しないだろうから、子ども組も、夜に出かける日をちゃんと作る。保護者付きだがな」

スタンおじさまがにやりとしたので、私は嬉しくて飛び上がりそうになった。

「りあも、りあもいけりゅ?」

「リアは幼児だからなあ、どうしようかな」

ニヤニヤするスタンおじさまにお父様が厳しい顔をした。

「スタン、リアに意地悪をしたら許さんぞ」

娘に甘いお父様のおかげで私も行けることになりそうだ。

「ありしゅたは? ありしゅたはおちごとないでしょ?」

「そうだな。バートに付いていってもいいんだけどな」

そういえば、私もあの事件があってから城に行っていないが、私はどうすればいいのだろうか。ちなみに兄さまは夏休みなので、私も夏休みでいいような気もする。

「りあは? りあはどうしゅるの?」

お父様に改めて聞いてみた。もちろん、アリスターと遊ぶので何も問題はない。

「そうだな。本来なら夏休みで、リアとルークはウェスターに行かせようかと思っていたのだが、そんな場合ではなくなったし。なによりウェスターに行きたい理由のほうがキングダムにやって来たからな」

「あい!」

もともと兄さまは夏休みになったらウェスターに行こうと言ってくれていたのだ。ちゃんとお父様もそう考えていてくれてよかった。

「じゃあ、りあはありしゅたとあしょぶ」

「それがな、そうもいかないようなんだ」

お父様が困ったように眉を下げた。

「リアは割と元気にしているが、ニコラス殿下はあの事件でかなり落ち込んでいるらしい」

「にこが? にこ、なにもわりゅくないのに」

これ以上王族に何かあってはいけないと、ニコは城で厳重に守られているはずである。それに、お父様がイースターのほうまで出張っている以上、私を城に送り迎えする人がいない。ハンスもまだ戻ってきていないし、警備の関係上城に行ってはいけないと言われているので、ニコにはしばらく会えていないのである。もちろん、クリスにもだ。

「私が戻って来たのなら、ぜひリアを城に来させてほしいと言われているんだ。どうだろうか」

「もちろん、いきましゅ。にこ、しんぱい。でも」

私はアリスターのほうを見た。城に行ってしまうと、夕方や夜しか会えなくなってしまう。それでも会えないよりはずっといいのだけれど。

「リア、心配すんな」

アリスターが手を伸ばして私の頭の上でポンポンと弾ませた。

「リア、そうですよ。夏休みですからね。私もギルも、そしてアリスターも城に一緒に行きますよ」

「ほんとに?」

アリスターは貴族のやり方に慣れてきたとは言っていたが、もともと貴族のことは嫌っていたはずだ。城に行って、王族と付き合う羽目になるのはいやではないのだろうか。

「いまさらだろ? そもそもウェスターでは割とヒューと一緒なんだ。あいつだって、辺境とはいえ一応第二王子だからな。俺だって慣れたんだよ」

屈託なく笑うアリスターは、貴族なんて幸せじゃないと怒っていたあの頃からずいぶん成長したものだ。私は思わずほろりとした。

「俺は後継ぎとかそんなんじゃないけど、リアと一緒だ。四侯の瞳を持つもの。城の人たちだって、近くに置いて検分したいんだと思うぞ」

「しょれでいいの?」

「いい。どうせ夏が終わったら俺はウェスターに戻るしな。俺のことが見たいなら、いくらでも見たらいいんだ」

「かっこいい!」

私は感心してアリスターを見上げた。

「リア、私は? 私はどうです?」

「にいしゃま、もちろんかっこいい」

「ですよね」

兄さまがアリスターに対抗していておかしい。とりあえず、アリスターが来てくれただけではなく、ニコにも会えることになった。