作品タイトル不明
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放課後、騎士団の隊長室へ呼ばれ、男子生徒二名と一緒に、レイナードと向かい合っていた。
「三人には副隊長を任せたいと思う。」
レイナードの言葉にやっぱりかと思った。
呼ばれた時点で何となく予想していたのだが、一年次ではあまり引き受ける気はなかったので、少しだけ憂鬱な気分になる。
その理由は私の隣に立っている人物にある。
ーーカイル・ノルシュタイン。
これで、四人いる攻略対象の三人に出会ってしまった。辺境伯の次男である彼は、普段から魔物と対峙していたため、副隊長になることを私は知っていた。
(ゼインと違って、性格とか悪い人ではないのだけど、このタイプは少し苦手なのよね。それにカイルに関わると、王子とも関わることになりそうなのよね。)
カイルは残りの攻略対象である王太子、レオン・エグザイラの側近候補なのだ。普段から行動を共にしていて、物語ではカイルに関わると、自然とレオンとの接点も増える。
二年の彼らと関わることは無いと、余裕こいていたのだが、どうやらフラグを回収してしまったようだ。
仕方なく物語が終わるまでの一年次は、大人しくしていようと心に決めたが、そうそう上手くいかないものだ。
隊長の話が終わり、副隊長の任命を受けたあと、部屋を出ると後ろから声をかけられた。
「君は、最近有名なご令嬢だよね?」
ゲーム画面で見た通りの、赤い短髪に緑の瞳。高身長でがっしりとした体躯なのに、タレ目の優しげな顔で笑うと、余計にふわふわとした印象になる。
貴族の割に砕けた言葉遣いなのは、彼の身分と騎士に囲まれた辺境での生活のせいだろう。
「……有名?」
覚えのない噂に私が聞き返すと、ヘラっと笑ったカイルは説明し始めた。
「そうそう。魔法が得意だとか、見た目に似合わず強いとか。……あと、あれもあったな。高等部のシリウス様と仲がいいとか!」
目立ったつもりは無かったのだが、結構見られていたことに驚いた。
「あの人、今まで婚約者とかいなかったから、不思議に思ってたんだけど、アメリア嬢がいるからなんだね。」
勝手に納得するようなカイルに、自嘲するようにフッと笑ってしまう。
「……それは、どうでしょうか。」
私の言葉に不思議そうに首を傾げた様子は、大型犬のようで癒される気がする。
どういう意味か聞いてくるカイルに、適当に誤魔化すと「ふーん」と気の抜けた返事が返ってくる。
「まあいいや。……ねぇ、魔法が得意なんだよね?良かったらさ、俺に教えてくれない?」
「え?」
目をキラキラさせて期待するカイルに、やっぱり苦手だと感じる。
「……いや、私では力不足かと……。」
出来れば一年は関わらないで欲しい私は、適当な理由をつけて断ろうと思った。しかし、どこで知ったのか、無詠唱で魔法が使えると聞いたと言われると、私は何も言えなくなった。
「……分かりました。空いた時間にで良ければ。」
渋々そう返すと、人好きのする顔でニコッと笑う。
その後、次の会議の日に、空いてる時間を合わせようと言われ、カイルは元気に走って去っていく。
(結局関わってしまったわ。これで、レオンとも関わる可能性が増えてしまった。なんだか、物語がだいぶズレてきている気がするわ。)
私は、教室でさりげなく確認していたことを思い出す。
ヒロインである『リリアーナ・フェルノート』。
彼女はゼインと話す素振りを見せない。出会いイベントは起きてないのかと思ったが、どうやらそうでも無いようで、時々ゼインを睨む彼女を見掛ける。
初めは見間違いかとも思ったのだが、ゲームでは描かれなかっただけで、彼女も最初は、ゼインに不快感を感じていたのかもしれない。
よく分からない展開に眉間を揉みながら歩く。
物語ではなく、生きている人間だと認識はしているが、私が生きているだけでこうもストーリーが変わると、不安感が強くなる。
ため息をついた私は、今後起こるであろうイベントを思い出しながら、災厄が起こる前提で動いた方が良いのかもしれないと、計画を練ることに決めた。
幸い努力してきたおかげで、剣の腕は劣るが魔法でカバーすれば、シリウスと同じくらいの戦力にはなるだろう。
ほんの少し、ソワソワとする気持ちを落ち着かせながら、空気を吸い込んだ。
視界の端で緑の葉が、自分の心のように揺れる様子に、ぎゅっと両手を握っていた。