軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

新しい家族達(1)(アルベルティーナ視点)

「行って来まーす!」

と毎日毎日、飽きもせずに娘は大量のお菓子を持って出かけて行きます。季節が移ろい気温が暑くなってきました。なので、今日のお菓子は、オレンジジュースを寒天で固めたもののようです。鼻歌を歌いながら出て行く娘の声を聞くと、どうしようもなくイライラします。

私の名前はアルベルティーナ・フォン・エーレンフロイトといいます。娘の名前はレベッカです。歴史ある名門エーレンフロイト侯爵家の私は女主人であり、娘はただ一人の令嬢です。娘は14歳になり背も私と変わらないくらい高くなりました。

しかし、一体いつになったらあの子は『侯爵令嬢』らしくなるのでしょうか?

どうして、侯爵令嬢たる娘の最大の関心事が畑作りと、虫の大量虐殺なのでしょうか⁉︎

なまじ、畑作りが成功したばっかりに!と私は頭痛を覚えてこめかみを押さえました。

野菜作りが失敗する事を本当は心の中で願っていたのですが、娘は難なく成功させてしまいました。娘は昔から要領だけは良い子供なのです。大概の事は、簡単にそれなりにこなしてしまいます。あの子の人生は苦労が足りない!といつも私は思うのです。

私があの子の年頃の頃は苦労の連続でした。私は伯爵夫人だった兄嫁からいつも嫌がらせを受けていて、そんな中ではただ普通に生活する事にさえ苦労が伴いました。欲しい物を手に入れることも、望むように行動する事もできませんでした。

だから私は、娘には私自身が子供だった頃欲しかった物を全て与え、やりたかった事をさせました。

それがいけなかったのでしょうか?

娘は私が与える物には見向きもせず、やりたかった事にはまるで興味を示さない子供になってしまいました。

レベッカは美しいドレスにも、可愛いリボンにもキラキラと光るアクセサリーにも全く興味を持ちません。

庭を走り回ってトカゲを捕まえ、バッタを投げ飛ばし、友達が遊びに来たので「これで遊びなさい」と言ってウサギのぬいぐるみを渡すと、そのウサギのぬいぐるみを何処かから拾って来た木の枝にくくりつけ

「ウサギの丸焼きが焼けましたよ。さあ、召し上がれ。」

と言っているのです。

それでも、成長すれば少しは女の子らしくなるだろう。と期待していたのですが、今のところ全く女の子らしくなる気配がありません。

趣味は読書と筋トレ。特技はチェスで、チェスの腕前と暴力に関してはそこいらの男達の遥か上を行っています。

そして今娘が一番夢中になっているのは農業です。

今は百年に一度と言われるほどの、国難の時です。

北大陸から、極めて感染力と死亡率の高い伝染病が伝わり、既に国内で死者も出ています。私の最愛の夫は、領地を守る為急いで領地に戻りましたが、その領地でも感染が広がっているのです。私は夫の事が心配で心配で、夜もよく眠る事ができません。不安で苦しくてたまらないのに、娘は毎日のんきに趣味に夢中になっています。伝染病が広がると都市封鎖が行われ、食料が不足するからという理由で娘は畑を作り始めましたが、娘の様子を見るに畑作りが好きだからやっているのだと思います。娘は昔から土いじりが大好きな子供でした。別に野菜を作るのがいけないとは思いませんが、父親の事をまるで心配しない様子にイライラが止まりません。

そして、昨日大変な話を友人であるファールバッハ伯爵夫人からの手紙で知りました。

エーレンフロイト領には、今たくさんのトゥアキスラントからの亡命者が押しかけて来ています。その外国からの亡命者達に種痘を投与してはならないと13議会が決定したというのです。エーレンフロイト領にいる旦那様は苦境に立たされる事でしょう。

私は伯爵夫人からの手紙について、ゾフィーとリエとメグに相談しました。

そして、子供達には黙っておこうという事になりました。私達には、13議会の決定を覆す事も、今すぐ旦那様の元へ駆けつける事もできません。何もできないのなら、子供達を不安にさせるような事は今は言うまい。と大人達で決めました。

私は旦那様の事が心配で泣き伏してしまいました。リエとメグもリヒトとコンラートの事を、ゾフィーも夫のカイの事をとても心配しています。

私がこんなにも不安を感じているのですから、レベッカも何も言わずとも何かを察すれば良いのに、レベッカはまるで察する、とか空気を読むという事がありません。私が別に聞きたいとも思っていない、農業に関する小話を延々と喋っています。

「これはね。ずっと前にリーバイやニコールじゃない農業学校の生徒に聞いた話なんだけどね。街暮らしで畑を見た事のない学生が生まれて初めて蕎麦の花を見てその美しさにとても感動したらしいの。その後こう言ったんだって。

『蕎麦の花がこんなにも美しいのなら、うどんの花はもっと美しいのでしょうね。』

おかしいよね。超面白い。この話、何回思い出してもおかしくって、おかしくって!ぎゃはははは。」

どこが面白いのか、全くわかりません!

おかしいのは、おまえの頭ですっ!

と言ってやりたいです。だいたい『うどん』っていったい何なの⁉︎

私は無言で、揚げ芋にフォークを突き刺しました。旦那様の事が心配で不安でずっと胃の調子が悪く、慢性的に吐き気がするのですが、娘はそんな私の様子に気づく事もなく、畑で見つけたエスカルゴの話を始めました。外国にはカタツムリの脳に侵入し、わざと自らを鳥に食べさせて、遠い場所に自らを運ばせるという寄生虫がいるそうです。

お願いだから、食事中に寄生虫の話をしないで!

「お母様、聞いてる?」

私がずっと黙っているので、レベッカがそう聞いてきました。

「聞こえています。お願いだから食事中に寄生虫の話はやめてちょうだい。それでなくても、胸がむかむかして吐き気がするのに、ますます気持ちが悪くなるわ?」

「お母様、吐き気がするの?さっきから揚げ芋ずっと食べているのに?」

イラっ!としました。まるで、仮病だと言われているような気持ちがしました。

本当に気持ちが悪いのに!

どうして、この子はこんなに思いやりがないの⁉︎

そう思う私に娘は更にとんでもない事を言いました。

「お母様、もしかして妊娠しているんじゃないの?」