軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第11話 真っ黒なシスター

「は? 毒? お前の味方でも、俺の部下に紛れ込ませていたのか? 情報でも抜き取っていたのかよ?」

怪訝そうに眉を顰めるゴール。

とすると、自分の能力もしっかりと把握されていたということか?

だとしたら、たった一人で自分と戦おうとした意味も分からないが……。

そんなゴールに対して、シーサイスは小ばかにしたように嘲笑った。

「うちの組織にはそういうのもいるけど、あなたたちみたいな小さな組織に潜入させるほどの人員はいないし、暇でもないのよ」

「……だとしたら、どういう意味だよ」

「そのままの意味だけれど? そんなこともわからないのかしら、愚図って怖いわ」

さらにバカにしたような言動。

これがあからさまな挑発であることは分かっている。

挑発には乗るべきでないということも。

だが、そもそも好き勝手生きてきたゴールにそういった耐性があるはずもなかった。

また、たとえ挑発に乗ってカウンターを打たれたとしても、そもそも攻撃は自分には通らない。

彼のプライドの高さと、能力への自信。

それが、ゴールを突き動かした。

「あー……もういいわ、お前。もうこのまま死ねや」

シーサイスに、隙だらけの状態で突撃する。

何も構える必要なんてない。

彼の『ゴルゴア』は、どんな攻撃も通さないのだから。

今までの実績に自信をみなぎらせ、不敵にほほ笑むシーサイスの顔を苦痛に歪ませてやろうと、ゴールは剣を振りかざし……。

「あ……?」

ボドリ、と重たい音がした。

しかも、水っぽい音まで聞こえてくる。

何度も聞きたいような音では、決してなかった。

不思議に思ったのは、自分の身体の感覚がおかしかったから。

シーサイス向かって走っていたのだが、それが恐ろしく難しい。

走ることが難しいなんて、いったいどういうことか。

まったく理解できないゴールであったが、突如右半身に激痛が走った。

そちらを見れば、右腕が溶けてなくなっていた。

「あ、ああああああああああっ!?」

地面に崩れ落ち、絶叫する。

認識したからこそ、激痛は先ほどよりも膨れ上がる。

痛い痛い痛い痛い。

その感情しか出てこない。

大量に汗が一気に噴き出し、地面をのたうち回る。

絶対防御、攻撃を一切通さないはずの『ゴルゴア』が、突破された?

目の前で悠然と立つシーサイスをにらみつける。

「な、んだ、これはぁ……!? てめえ、何をしやがった!?」

「だから、言ったでしょ。毒だって」

ふっとあざけるように笑うシーサイス。

無駄に実った胸のせいで見下ろしづらいのが難点だ。

面倒くさそうに眉をひそめながら、ネタ晴らしの時間だ。

「あなたがその能力を使う前に、私がとっくに毒をあなたに植え付けていたのよ。それを今使ったというだけ」

「毒を、植え付けた……? そんなの、いつの間に……」

呆然とするゴール。

何とか思い出そうと頭をひねり、一つ思い出す。

それは、『ゴルゴア』を使う前に、シーサイスの剣で何度か斬られたこと。

深い傷ではないが、確かに傷はつけられていた。

口から毒を飲んだわけではないから、体内に植えられるということは、それくらいしか考えられなかった。

「そ、その剣か!? それで俺に傷を負わせた際に、毒を……!!」

「正解、と言いたいところだけど、別に違うわ。この剣、頑丈だけど、そんな特別な力は持っていないし。まあ、剣に毒をまとわりつかせればそれもできるでしょうけど、今回はそんなことはしていないわ」

「だったら、いつの間に……!?」

ポンポンと剣をたたくシーサイスに対し、ゴールは激痛に顔を歪めながらも問いかける。

それ以外だとしたら、考えられることはない。

まさか、部下たちと飲んでいた時に、毒を仕込まれていたということか?

そもそも、人体が溶けるという劇薬を保持していることも恐ろしいが……。

そんなゴールに対して、シーサイスは首を横に振ってから答えてやった。

「私が、あなたのことを見た。その時よ」

「見た、だけで……!?」

愕然とする。

見ただけで、この強烈な毒を相手に仕込ませることができるのか?

だとしたら、あまりにもおぞましい。

対応のしようがない。完全に初見殺しだ。

そんな化け物、どうやって対応したらいいのか。

「ぎゃあああああああああああああああ!?」

さらにゴールの身体に激痛が走る。

身体がじりじりと毒によって溶かされていく。

生きてきて初めて経験する苦痛に、当然耐えられるはずもなかった。

のたうち回るゴールを見て、シーサイスは嗜虐的な笑みを浮かべる。

「うるさいわね……。あまり大きな声を出したら普通の人に迷惑でしょう」

「だ、誰か、助け……!」

「誰も来るわけないでしょ。そもそも、悲鳴を上げているところに駆けつけてくれる優しい人なんて、この世にほとんど存在しないわよ」

それはそうだろう。

頭の中の冷静な部分で、ゴールは理解できていた。

自分からトラブルに首を突っ込むバカなんて、ほとんどいないだろう。

だけれども、そんな存在に助けを求めるほどに、切迫していた。

誰も助けに来ない。

そんな状況でも、ゴールに一筋の光が差す。

「――――――何をしているのですか?」

冷たくも柔らかい声が響いた。

コツコツと足音が鳴り、それはゆっくりと近づいてくる。

激痛に悶えながらも、ゴールは目を上げる。

そこには、優しく微笑む真っ黒なシスター服を着た女がいた。