軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

外伝2 第三十二話 黄金の鷲

『我が名はアードラー』

それから始まる詠唱は、アードラーの一族だけに許された召喚詠唱。

初代は盟友である鷲と盟約を結び、子孫への手助けを約束させた。

しかし。

それには莫大な魔力と。

使用者の生命力を必要とした。

これまで初代皇帝以外で黄金の鷲を呼び出そうとした者は数多くいた。

けれど、召喚に成功した者すらごくわずか。

そのごくわずかすら、自分の命との引き換えで召喚している。

アードラーの命と引き換えにこの世に召喚される守護神鳥。

アードラーを守るため、アードラーの命を奪う矛盾の存在。

そんな存在の召喚に成功し、命が続いているのは初代以外ではただ一人。

俺しかいない。

そんな俺でも十分な魔力を用意しなければいけない。

戦場に満ちた魔力に加えて、大地の魔力を利用する巨大な魔法陣。

これによってはじめて、召喚が可能となる。

『七天を覆う光翼・偽りを許さぬ剣爪』

『いと誇り高き神鳥よ・現世の声に耳を傾けたまえ』

『大志はあれど力は足りず・希望は夢まぼろしのごとく』

『鷲の血脈は絶えず・友の盟約は廃れず』

『祖の力を借りて天秤を我に傾く』

『再び告げる』

『我が真名はアードラー』

『古き盟約に従い召喚に応じよ――』

『ゴルド・アードラー』

詠唱の後。

魔法陣が光り輝き始める。

そして、空に金色の魔法陣が浮かび上がった。

そこからゆっくりと黄金の神鳥が顕現した。

『――召喚に応じ参上した。此度も命をすり減らしていないようで安心したぞ。アルフォンスの子よ』

「助力に感謝を。鷲王ゴルド・アードラー」

『友との盟約に従ったまでのこと。しかし、アルフォンスの子らはいつも自分の命を捨て去る。余は友の子らの死は見たくはない。その点、そなたは良い召喚者と言えるだろうな』

現れたのは数十メートルを超える巨大な黄金の鷲。

厳かな声で告げると、アードラーは俺から視線を外してヴリトラへ視線を移す。

『問おう、アルフォンスの子よ。そこの蛇がそなたの道を阻む者か?』

「いかにも」

『よろしい。では、任せるがよい。古き盟約を今、果たさん』

巨大な翼をアードラーが広げる。

それに対してヴリトラも威嚇の叫びをあげる。

大きさはヴリトラのほうが上。

だが。

『頭が高い。余は天上の王。余の許可もなく口を開くな』

アードラーはみるみるうちに体を大きくしていく。

そしてヴリトラと同格の大きさまで巨大化すると、一気に降下して、ヴリトラをいとも簡単に爪で捕えてしまう。

「グォォォォォォォ!!??」

『翼なき生涯は不便であろう。空を堪能させてやる』

そう言うとアードラーはヴリトラを捕まえたまま空に羽ばたき、一瞬で上空へ連れていってしまう。

完全に捕食者と被捕食者。

ダメージを受けているヴリトラでは相手にならない。

古代魔法文明が封印するしかなかった化け物が相手だったため、俺の手札では通じない可能性を考慮して、最強の召喚を準備していた。

しかし、オーバーキルにもほどがあったな。

『よく覚えておけ、蛇では鷲には勝てぬ。それはこの世の理なり。そなたはアルフォンスの子に頭を垂れるべきだったのだ』

アードラーは空中でヴリトラを離すと、降下していくヴリトラに向かって全力で突っ込んでいく。

一際、金色に輝いたアードラーはその嘴でヴリトラを貫き、そして切り裂いた。

真っ二つになったヴリトラは、アードラーの纏う金色の光に焼かれて、地面に落ちることすら許されず、消え去っていく。

『――盟約は果たしたぞ、アルフォンスの子よ』

「お見事だった、鷲王」

『また、いつでも呼ぶがいい。余はいつでもアルフォンスの子らと共にある』

そう言ってアードラーは空へと消え去っていく。

簡単に言ってくれるが、今回、召喚できたのは大山脈が霊山で構成された特殊な地形だったからだ。

大賢者アグネスの結界を維持できたのは、この特殊な地形があればこそ。

その地形を俺も利用して、召喚を成立させた。

かつて召喚した時も同じく特殊な地形を利用した。

そうでなければ、召喚と同時に生命力を持っていかれてしまう。

友と呼び、気軽に召喚していた初代皇帝がおかしいのだ。

そんなにポンポン呼べる存在ではない。

「さて」

戦いは終わった。

魔法耐性持ちという相性最悪なモンスターだったが、備えあれば憂いなし。

アードラーの召喚を準備しておいて助かったな。

準備が必要であり、地形を選ぶという大きすぎるデメリットを抱えているが、アードラーは上位存在だ。

現世のモンスターとは文字通り格が違う。

それゆえにアードラーの一族は頼り、常に悲劇を巻き起こしてきた。

命を投げうつ自爆召喚。

五百年前の悪魔との大戦でも、召喚できる者がいればもう少し戦況は違っていただろう。

そんなことを思っていると、下から声が聞こえてきた。

見れば、アレンが俺に向かって手を振っていた。

その横にはアレンを支えるように立つ、パトリシア。

犠牲はあったが、守るべきもの、守りたいと思えるものは守れた。

今回もまた。

意義のある戦いだったといえるだろう。

迷子のあげく、こんな本格戦闘をしたことがバレたら、セバスあたりに小言を言われそうだけど。

「まぁ、黙ってればバレないだろう」