軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

独身おじさん、ウェディングプランナーになる⑥

さて、結婚式も終わり、帰るだけ……そんな雰囲気になった。

新郎新婦も退場し、あとはもうおしまいなのだが。

『それでは、会場のご移動をお願い致します』

周囲は「移動? え、式終わったじゃん」みたいな雰囲気になる。

ふっふっふ。そうなのだ、異世界では結婚式は『儀式』なのだ。でも、俺のいたところではこれからが本番……そう、披露宴がある!!

ロッソが言う。

「おっさん、終わりじゃないの?」

「食事もあるって言っただろ? むしろ、本番はこれからだ。ささ、俺たちも移動しよう」

職員さんに案内され、会場内の人たちは教会隣にある大きな建物……披露宴会場へ。

会場内はパーティーホールみたいな豪華な会場だ。円卓がいくつも並び、食器がセットしてある。

それぞれ参加者の名札が置いてある席に座る……ちなみに、俺の席はロッソたち四人と俺の五人席だ。

お客さんたちが席に座ると、司会進行役のリヒターが言う。

『これより、結婚披露宴についてのご説明いたします』

結婚披露宴。

結婚式が神様への報告儀式なら、披露宴は俺たち観客へ、結婚の祝福をしてくれたことへの感謝を報告する儀式……そんな意味だった気がする。

なので、感謝をこめて食事を振舞うための儀式ってわけだ。

そう説明すると、みんな納得したようだ。周りから「なるほど」や「ふむ、こういうやり方もあるのか」など聞こえてくる。

ロッソたちを見ると、食事にワクワクしているのかみんなソワソワしている。

『それでは、新郎新婦のご入場です。皆様、拍手でお迎えください』

ドアが開き、披露宴用のドレスを着たフーシェラさん、そしてシーモアが来た。

結婚式では豪華なドレスだったが、披露宴では青を基調としたシンプルなドレスを纏っている。拍手で出迎えられる。フーシェラさんのドレスを見て貴族令嬢たちが「綺麗」だの「素敵」だの言ってる声が聞こえてきた。

『それでは、新郎よりご挨拶を』

シーモアが立ち上がり、マイクを手にする。ちなみにこのマイク、俺が作った特注だ。

『えー、本日はお集まりいただき、誠にありがとうございます。アレキサンドライト商会の結婚式プランのお披露目という形ではございますが、私とフーシェラの儀式に、これだけの人たちが集まり、祝福し、新しい結婚式のスタイルを見せることが……』

真面目だ。一緒に飲んでべろんべろんに酔っ払い、フーシェラさんに抱きついてビンタされてたやつと同一人物には見えないぞ。

シーモアが挨拶を終え、フーシェラさんも挨拶をする。

すると、ヴェルデがボソッと言う。

「ねえ、ゲントク……ちょっと薄暗いわ」

「いいところに目を付けた」

一応、ロッソたちには「疑問点や改善点があれば言ってくれ」と伝えてある。ヴェルデは挨拶の邪魔をしないようボソッと言ってくれた。

俺は質問に答えず、ニヤッとする。

すると、フーシェラさんの挨拶が終わる。

『それでは、新郎新婦によるキャンドルサービスとなります』

そう、キャンドルサービス。

新郎新婦が各円卓のキャンドルに火をつける。

二人で一本のキャンドルを手に、円卓の蝋燭に火をつけて回る。

その様子を、アオが見て言う。

「……これも儀式?」

「ああ。キャンドルサービス……えーと、明かりは光を運ぶとか、幸せの象徴とか……そんな意味だった気がする」

わからん。

シーモア、フーシェラさんは祝福されながらテーブルにキャンドルを灯していく。

そして、俺たちのテーブルへ。

「どうも皆さん」

「おう。酔っ払い、真面目な挨拶でよかったぜ」

「うっせ」

シーモアが軽口を叩く。

「綺麗なドレス、素敵ですわ」

「ええ、本当に」

「ふふ、ありがとうございます」

フーシェラさんは、ブランシュとヴェルデにドレスを褒められ照れていた。

そして、全てのキャンドルが灯り、会場内のランプも点灯……明るくなった。

次はいよいよアレだアレ。そう……アレである!!

『それでは、新郎新婦によるケーキ入刀です』

会場内がざわめく。

そりゃそうだ。なんだ『ケーキ入刀』って。「ケーキって……あのケーキ?」とか「え、ケーキ?」とか困惑の声が聞こえる。

そして、披露宴会場のドアが開き……。

「わーお、すっご!!」

ロッソがやや大きい声で言う。他にも「にゃあ」とか「がうー、すごい!!」とケモチルたちの声が少し聞こえて来た。

入って来たのはそう、デカいケーキ……そう、ウェディングケーキである。

「おじさま、ケーキにゅうとう……というのは、あのケーキを斬る、ということですの?」

ブランシュの疑問。まあ当然だろう、この世界の人たちからしたら意味不明すぎるよな。

「ああ。えーと、なんだっけ……『二人の共同作業』って意味でケーキを切るんだよ。夫婦になって初めての共同作業をしよう、みたいな」

俺がそう言うと、リヒターが同じような説明をする。

会場内も「ああそういうこと」みたいに納得した。

「フーシェラ」

「ええ、ふふ」

シーモア、フーシェラさんはデカいナイフを二人で手にし、デカいケーキに入刀。

周囲がシーンとなる……そりゃそうだ。どういう反応すればいいのかわかんないよな。

なので、知っている俺が拍手。ロッソたちが続き、周囲に拍手が伝染……会場内が温かい雰囲気になり、ケーキ入刀が終わった。

そして、ドアが開きウェイターたちがグラスに飲み物を注ぐ。

『それでは、これより乾杯となります。乾杯の音頭は友人代表、リヒター』

あれ、いつの間にか司会がサンドローネになってる。

そして、リヒターがグラスを手にシーモア、フーシェラさんの前へ。

『友人を代表して、フーシェラ、シーモア……結婚おめでとう。乾杯』

「かんぱーい!! ……あれ」

デカい声を出したのは俺だけだった。え、クッソ恥ずかしいんだが。

リヒター、シンプルな挨拶だがそこにはいろんな感情を込めているように感じた。

『それでは、これより会食を始めます。皆様、自由にご歓談ください』

ドアが開き、ウェイターやウェイトレスたちが料理を運んできた。

ロッソは「待ってました」とナイフフォークを手に舌なめずり、お客さんたちも料理を楽しんだり、結婚式について喋ったり、会場内を回るサンドローネに質問したりしていた。

料理はコース料理ではなく、バイキング形式だ。前菜だけ運ばれ、あとは自由に食べるスタイルだ。

ロッソは前菜を終えると、すぐにサイドテーブルに並んでる料理の元へ。ローストビーフを大量に盛って戻り、美味しそうに食べている。

アオは魚メイン、ブランシュはワインを楽しみ、ヴェルデはブランシュとワインを飲みながらチーズを食べている。

俺も少し食べ、ワイングラスを手にシーモアの元へ。

「おっす、楽しんでるかい」

シーモアとグラスを合わせる。シーモアは頷き、グラスに口を付けた。

「いやー、こういう形での結婚式は知らないぜ。でも、楽しい……てか、ケーキ入刀って何なんだい? 夫婦の共同作業がなんでケーキ入刀?」

「知らん。まあ、いいだろ」

ちなみにケーキ、再び会場に運ばれ、目の前で料理人がカットしてお客さんに提供している。よく見ると子供たちがケーキの前に集まっていた。

フーシェラさんは……お、サンドローネとマンボウさん、あとは……え、誰だ? すんげえ美女が混ざって何か喋ってる。

「これまでの時間ですが、結婚式は四十七分、披露宴は三十六分……間の時間は三十分といったところでしょうか。二時間ほどですね」

「そうね。休憩時間を合わせても、半日以内に終わるわ。予算については?」

「は、はい。ええと、想定内ですね」

なんか喋ってるな。ちょっと行ってみるか。

俺はサンドローネたちの元へ。

「フーシェラさん、ご結婚おめでとうございます」

「ゲントク様。ありがとうございます」

「ちょうどよかったわ。ゲントク、あなたに聞きたいことあるんだけど」

「ああ、うん」

サンドローネが言うが、俺は謎の美女をチラッと見た。

するとマンボウさんが言う。

「あ、ゲントク様。その、こちら……家内です」

「初めまして。主人がお世話になっています」

「……あ、ああ、どうも」

なんと、美女の正体はマンボウさんの奥さんだった。

え……美女と野獣っていうか、オークと姫騎士というか、すげえ夫婦だなおい。うう、俺ってば失礼なことばかり考えてる。

「ゲントク、質問だけど」

「あ、ああ……」

とりあえず、俺はショックを隠し、サンドローネの質問に答えるのだった。

◇◇◇◇◇

さて、食事の時間が穏やかに過ぎ……俺はリヒターと目が合った。

互いに頷き、リヒターがマイクに向かって言う。

『それではこれより余興を行います』

ついに来た。

俺は立ち上がり、テーブルに隠していた魔道具を手に壇上へ。

スポットライトが照らされ、視線が俺に集まる。

周囲がどよめく。

『えー、披露宴では有志による余興、出し物などで皆様を楽しませるという……』

リヒターが説明する。

そう、余興……結婚式といえば友人たちによる余興!!

俺はこの日のために作った魔道具を出す。

『えー、俺はシーモアの友人、ゲントクだ。シーモア、改めて結婚おめでとう!! というわけで……さっそくみんなを楽しませるぜええええええええ!! ミュージックスタート!!』

俺は手にした『カラオケマイク』を手にする。

スイッチを入れると、俺の十八番であるロック調の音楽が流れだす。

周囲がどよめく。

『友人に捧げます!! 曲は……「結婚おめでとうの曲!!」』

俺はジャケットを脱ぎ捨て、襟元をゆるめて全力で歌い出した。

そう、俺の作った魔道具。それは『録音機能のあるマイク』だ。スイッチを押すと『録音』と刻まれた魔石に音楽が録音され、『再生』の魔石と連動させることで録音した音楽が流れるのだ。

この日のために、俺はサンドローネの伝手で音楽隊を雇い、俺が口ずさんだ歌に合わせた音楽を弾いてもらい録音した。

この『カラオケマイク』……最高の魔道具の一つだぜ。

「ウォウウォウウォウ!! 結婚おめでとう!! イエエエエエエエエエエエエエ!! センキュウウウウウウウウウ!!」

全力で歌った。

カラオケマイクを掲げ、俺はポーズを決める。

「…………あ、あれ」

静寂。

え、なんで……みんなドン引きしてる?

『え、えー……以上、ゲントク様による、その……歌でした』

パチ……パチ……とまばらな拍手。

嘘だろ、なんで? 俺の歌……友人の結婚式じゃバカ受けだったんだが。俺の前の友人によるクソ寒い漫才なんかよりも盛り上がったんだぞ? 馬鹿な……え、なんで?

席に戻ると、ロッソが言う。

「おっさん、今のなに?」

「え……カラオケ」

「……うん、まあ、うん」

「な、なんだよその反応」

「……おじさん、歌、練習したほうがいい」

「え」

こうして、俺はめでたい席で周囲をドン引きさせるという、ある意味で最悪なことをしてしまうのだった……ううう、俺の歌、ヘタクソだったのかよおおおおおおおお!!