軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

独身おじさん、ウェディングプランナーになる⑤

さて、今日は結婚式プランの発表だ。

本番の通りに行うので、参加者は事前に詳細をある程度は聞いている。俺たちは受付を済ませ、教会内にある指定された席へ座った。

ちなみに、教会の長椅子……名前はわからん。そこに座ってる。

教会は百人以上入れる大規模なものだ。周りを見ると……お、いたいた。

「ねえねえおっさん、なんかさ……すっごいよね」

ロッソがヒソヒソ言う。

まだ始まっていないけど、不思議と教会内は静かだった。

俺の視線の先には、ドレス姿のスノウさん、イェラン、パルテノスに向いていたが、ロッソに視線を向けて言う。

「まあ、教会ってのは不思議と静かになる独特な雰囲気あるよな」

ステンドグラス、でかい十字架、神話に登場する神像があり、周囲は花で飾られ、蝋燭型のライト(俺がこの日のために作った特注品)がゆらゆらと輝いている。

今日の招待客には、ティガーさん一家、ドギーさん一家もいる。俺の知らない町の商会長や、なんと冒険者ギルド受付のヘクセン夫妻、グロリア夫妻、さらに魔導武器職人のホランド一家もいる。

俺が視線を向けると、ヘクセンは気付いたのか顎をしゃくる……たぶん、「お前の差し金だろ」と言ってる。まあその通り、俺がヘクセンたちを呼んだのだ。

そして、もう一人。

(おいおい、バリオスじゃねぇか。あいつ、砂漠にいるんじゃ……)

なんと、アメジスト商会のバリオンがいた。

少し日に焼けたのか健康的な雰囲気だ。もともとイケメンだったけど、日に焼けたことでワイルドさも身に付いてるような気がする……周りにいる女性たちがバリオンをチラチラ見てるのが気になった。

と、バリオンの隣にハーフの獣人女性がいる。眼鏡をかけた……キツネの獣人かな? 白っぽい髪で白いドレスを着ているぞ。

まあ、あとで聞くか……お。

「……サンドローネお姉さんだ」

アオがボソッと言う。

壇上に、ドレス姿のサンドローネが上がり一礼。拡声魔道具に向けて言う。

『皆様、アレキサンドライト商会、商会長サンドローネです。本日は、アレキサンドライト商会が提案する結婚式プランにご参加いただきありがとうございます』

おお、堅苦しい挨拶が始まった。

今回の結婚式プランについての説明だ。堅苦しい説明のはずなのだが、サンドローネの喋りが上手いおかげで話がスラスラと入ってくる。

「……サンドローネさんのドレス、素敵ですわね」

「わかる。どこのメーカーかしら」

ブランシュ、ヴェルデがヒソヒソ言う。

サンドローネは、薄紫色のドレスを着て、髪の毛も丁寧に、綺麗にまとめていた。俺にはよくわからんけど、背中が剥き出しで露出の多いドレスだが、不思議と嫌らしさは感じない。なんというか……絶妙なラインのドレスというか。わからん。

『本日の新郎、新婦役は、我が商会の幹部が務めます。全体的な流れを説明しますので……』

サンドローネは説明を始めた。

まず、新郎新婦入場、讃美歌を歌って、誓いの言葉をして、神様に報告……この報告は異世界ならではの儀式。そして結婚証明書にサインして、指輪交換して、誓いのキス……ちなみに、俺の知り合いの結婚式では誓いのキスはしなかった。理由は『恥ずかしいから』だって。今じゃそういう理由でやらないモンなのかねぇ。

ちなみに、結婚証明書のサインは省いた。この世界じゃそういうのはないみたいだしな。

サンドローネがここまで説明する。

『以上となります。では、ここから全体的な流れを体験していただきますので、ご指示に従うようお願い申し上げます』

サンドローネが一礼、そして下がる。

入れ替わりに、教会の神父が入り、壇上で頭を下げた。

司会は……なんと、マンボウさんだ。

『新郎、新婦、入場となります』

教会のドアが開き、二人が入って来た。

一応、新郎が先で新婦が後……って設定だった気がするけど、一緒に並んでの入場になった。『なんで新郎が先?』とか『新婦が後って?』言われて、俺が説明できなかったからだ!! んなもんわかるわけねええええええええ!!

というわけで、シーモア、フーシェラさんが腕を組んでゆっくり中央の道を歩いて来る。

『盛大な拍手でお迎えください』

すると、みんな拍手する。

意外にも、平民だけじゃなく貴族も拍手した。

「……綺麗」

拍手をしながらアオが言う。

「ウェディングドレス。この世界にはないモンだしな」

ウェディングドレス。

純白の、キラキラしたドレスだ。そして純白のヴェール……すまん、正直あんまり興味ないので詳しくわからん。『白いドレスにヴェール』ってのを伝えて、今の形になった。

シーモアも白のタキシードだ。髭を剃り、髪型もバッチリ整えてる。

飲み屋では軽薄な感じがしたけど……フーシェラさんと合わせて緊張しているような気がした。

よーし、恥ずかしいけどここは俺が。

「おめでとう!!」

俺は拍手をしながらデカい声で「おめでとう!!」と言った。

シーモア、フーシェラさんが俺を見て目を見開く。そして、シーモアが察したのかクスっと微笑み、フーシェラさんに向けて軽くウィンク。フーシェラさんも小さく頷き、微笑んだ。

俺はウンウン頷く。

「やるじゃん、おっさん」

「クッソ恥ずかしいけどな……」

ロッソに軽く肘打ちされた。

そして、二人が壇上に並ぶと拍手がやむ。

すると、サンドローネが手配した聖歌隊が入場し、歌い出した……どういう歌なのかはわからんけど、男女のバランスが取れた声の高い歌だった。よく見るとみんな子供じゃん……。

「まあ……教会の聖歌隊ですわ」

「知ってんのか?」

「ええ。王族の婚姻式などでしか歌うことが許されない、神に捧げる歌を歌うための隊ですわ……まさか、聖歌隊の歌を聞けるなんて」

ブランシュがうっとりと聞いていた。

周りを見ると、みんな歌に聞きほれている……正直、俺はよくわからない。ロックとかジャズとかは好きだけど、こういう綺麗な歌は性に合わない……いや、いい声だとは思うけどね!!

歌が終わり、聖歌隊が退場。マンボウさんが『ご着席ください』というのでみんな座った。

『それでは、神に婚姻の報告を』

お、異世界の結婚式でやる神様への報告だ。

内容的には、神に祈りの言葉を送り、祈りを捧げる……超シンプルに言うとこんな感じだ。

『今ここに、二人の誓いを『神』へと報告いたします。喜びの日も、試練の日も、互いの手を取り歩むと誓うこの二人を、どうか御前にて見守りください。今日この時より、二人は一つの道を歩みます』

マンボウさんが祈りの言葉を神に捧げる。

何か普通の言葉だなーと思って聞いていると、なんとみんな両手を合わせて祈っていた。

俺も慌てて両手を合わせて祈る。

『『我らは誓います。ここに、夫婦となることを』』

おお、フーシェラさん、シーモアが同じ言葉を言う。

そして、マンボウさんが両手を合わせ、神像の前にある水を張った皿に手を触れさせ、濡れた手で神像に何かを書いた。

『祝福を』

『『感謝します』』

マンボウさんが言い、フーシェラさんとシーモアが感謝する。

こ、この辺のことはよく聞いてないんだよな……周りはまだ祈ってるし。ロッソたちですら目を閉じ、両手を合わせ祈ってる。

それから二十秒ほど祈り続け……ようやく祈りが終わった。

『それでは、指輪交換の儀式を行います』

「ゆびわ?」

と、ロッソが首を傾げる。

小声だったので周りには聞こえていないようだが、同じような疑問を持つ人は多いようだ。最初の説明では『指輪交換の儀式という新しいスタイルを取り入れます』としか言ってないもんな。

すると、サンドローネが補足する。

『大昔、結婚式では指輪交換の儀式が行われていた事実がございます。指輪とは『円』……つまり、始まりも終わりもない形。すなわち、永遠。互いに指輪を送り合い、永遠の愛を誓うという意味がございます。アレキサンドライト商会の提案する結婚式では、この古来の儀式を復活させました。指輪とは、形に残る愛の証でもあります』

うん、それっぽい感じだな。まあ……俺が教えたんだけど。

すると、指輪を乗せたトレイをユキちゃんが運んで来た。

「にゃああ」

なぜユキちゃん? 理由は簡単……俺が経験した結婚式で、子供が指輪を運んできたから。なんだっけ……子供は天使だからとか、子供は家族のつながりを意味するとか、そんな理由だった気がする。

スノウさんがめっちゃハラハラしながら見てる。だがユキちゃんは緊張もなく、トコトコ歩いてマンボウさんの元へ。

「にゃあ、ゆびわ」

場が和んだ……うん、思った通り、ここまで緊張してる人も多いし、ユキちゃんは癒しとして最適だ。

マンボウさんが微笑んでトレイを受け取る。

まずは、新郎から新婦へ。

「……」

シーモアは無言。だが……その瞳がどこまでも優しかった。

フーシェラさんは涙をこらえているようにも見える。そして、指輪を手にし、シーモアの指にはめる。

互いの指に、同じ装飾の指輪がはめられた。

教会内の若い女性たちは、ロマンチックな雰囲気にうっとりしているように見える……というか、ブランシュもヴェルデも、ずっとうっとりしている。

『それでは、誓いのキスを』

これこれ。俺、これは『まあ、やるやらないは打ち合わせの時に決めるようにした方がいい』って提案した。人前でキスとか、今はやらないパターンも多い。

だが、シーモアもフーシェラさんも普通にOKだった。

「……」

「……ん」

おおう……シーモアがフーシェラさんのヴェールを上げる。

フーシェラさんが目を閉じ、シーモアがゆっくり顔を近付ける。

(……今だ!!)

俺は視線で、教会の隅にいたリヒターに合図。

リヒターは頷き、壁のスイッチを押す。

すると、絶妙なタイミングでステンドグラスが淡く輝き、さらにスポットライトがシーモアたちを照らし、蝋燭型のライトもゆらゆらと揺れた。

そして、二人は幸せなキス……あ、やっべ。

「……にゃ」

ユキちゃんを下がらせるの忘れてやがる。マンボウさんの隣でキスを見ていた。やばい、子供には刺激が強いんじゃねぇのか!?

ゆっくりと唇が離れ、二人は見つめ合っていた。

マンボウさんも少し照れているのか、やや上ずった声で言う。

『新郎新婦、退場となります』

再び聖歌隊が登場。退場に合わせ『ラーラー』と歌い出す。

拍手をして見送った。

そして、サンドローネが壇上へ。

『お疲れ様でした。皆様、これにて結婚の儀式は終了となります』

まだフワフワした雰囲気なのか、会場内は静かだった。

『それではこれより、披露宴を行います。皆様、会場のご移動をお願い致します』

いよいよ、結婚式の本番。

披露宴。くっくっく……ここからが本番だぜ!!