軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

白神祭④

ふたり目の迷子、フォルスさんを連れて皆の元に戻る。

「信じられないと思わないかい? ラグナの奴、私を連れてくるだけ連れてきて、自分は国王として来賓席に行かなければならないので好きに楽しんでくれと、私をこの大迷宮のような会場に放置していったんだよ。あの時の絶望感と言ったらもう、酷いものさ……目の前が真っ暗になるとはこのことだよ。転送地点からあそこまで辿り着くのもどれだけ苦労したか……」

「いや……転送地点からさっきの場所までは一本道かつ直線で数百メートル程度です」

いくら祭で人が多いとはいえ、歩けないほどでもないのだが……ファルスさんにしてみれば、人の多い直線はもう迷宮みたいだ。

ノインさんがゲートに辿り着けたことを驚いていた意味がよく分かった気がする。

「……というわけで、連れてきました」

「……なにしてるんですか、最長老」

「おや? 君は確かレイジハルトとシルフィアの娘の……ジークリンデだったかな?」

「はい。お久しぶりです」

そう言えば忘れがちになってしまうが、フォルスさんはエルフ族のトップであり、当然エルフ族であるジークさんも知っているみたいだ。

というか会話内容的には、過去に会ったことがあるみたいな感じだ。

「なるほど、いや、ずいぶん大きくなったね。私の感覚としてはレイジハルトもシルフィアも、少し前までは小さな子供だった気がするが、もう娘がこれほど立派に成長しているとは……いやはや、時の流れというものは早いものだね」

「……カイトさんから聞いてはいましたが、昔お会いした時と体格が変わり過ぎなので、知っていても驚きました」

「ははは、まぁ、慣れてくれたまえ。変化に対する驚愕というのは一過性のものだ。すぐにそれは常識へと変わるさ。たとえば、エルフ族にとってミヤマカイトくんがすっかり英雄だという事実とかね」

ジークさんとの会話の中で、サラッと何か変なことを言い始めたぞこの人……。

「エルフ族の英雄? 俺がですか?」

「もちろんさ、君は大量発生したブラックベアを全滅させ、リグフォレシアの復興に多大な貢献をした存在で、君を題材にした演劇などはもはや定番のものとなりつつあるよ。いやはや、歴史に名を遺すものとはかくあるべきと、そう思うね。とと、そう複雑そうな顔をしないでくれ。事情は知っているが、いまさらどうこうというのも難しくてね」

「まぁ、それに関してはすでに諦めてますよ」

母さんと父さんからも聞いたが、どうやら例の俺を題材にした本は完成度も高くかなり人気が高いらしい。ちなみに、いちおう俺に配慮して作中では名前は出さず『異世界の青年』と書かれているのだが……まぁ、公然の秘密というか、宝樹祭の一件があるのでエルフ族はほぼ全員モデルが俺ということは知ってるみたいだ。

ちなみに作者の方からは、本の売り上げを俺に渡したいと一度連絡を貰ったが、別にモデル量とかは必要ないし、変なことさえ書かなければ自由にしてもらって大丈夫と返事をしておいた。

……アイシスさんに聞いた話だと、なぜかその後の巻から俺の活躍がより深く描かれるようになったらしいが……。

まぁともかく、あの本に関してはもう気にしていない。自分で読むのは御免だが……。

と、そんなことを考えていると不意にポンッと肩を叩けれ、振り返るとなにやら神妙な顔をしたトーレさんが居た。

「カイト、ブラックベアを全滅させたって……いったいどんな違法魔法キメたらそういう結果になるの? 私、悲しいよ。お姉ちゃんは、カイトをそんな風に育てた覚えはないよ」

「育てられた覚えも無いですけどね! あと、トーレさん……仮に、仮にですよ? なんらかの強力な魔法を使ったとして、俺がブラックベアの大群に勝てると本気で思います?」

「ううん、まったく、これっぽちも思わない。カイトがブラックベアに勝てるなら、私だって頑張ればワイバーンに勝てるよ」

「じゃあ、そう言うことですよ」

「別の人が倒したのか~よかった。私とカイトの『スライム同盟』の絆は破られてなかったんだね」

「勝手に変な同盟に加えられてる!?」

相変わらずトーレさんは打てば響くというか、ノリが凄くいいので会話していて面白い。トーレさんは笑顔で何度か頷いたあと、視線をフォルスさんに向けて口を開く。

「初めまして、私はトーレ! 君のことは、ノインからよく聞いていたよ。私と同じようによく迷ってるって」

「おや、これはこれは、挨拶が遅れて申し訳ない。私はフォルス、以後よろしく頼む。ノインの関係者というのも気になるところではあるが、それ以上によく迷うという部分が気になって仕方がないね。貴女も私と同じ方向音痴ということなのかな?」

「う~ん、方向音痴というか、不思議なことに気づいたら景色が変わってるんだよね!」

「……なるほど、素晴らしい着眼点だ。我々が迷っているのではなく、景色が変わってしまった結果として迷っていた……逆転の発想というやつだね。これは、本腰を入れて研究してみる価値があるかもしれないね」

いまなんとなく少し察した。たぶんこのふたりはあんまり組み合わせちゃ駄目な感じだ。ツッコミ入れないと、妙な方向に転がっていくような、そんな危険性を感じた。