軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

白神祭③

サクサクと美味しいデニッシュたい焼きを食べつつ、皆で一緒に歩きながら、そのつど誰かが興味を持った出店を覗いていく。

だいたい、陽菜ちゃんかルナさんかキャラウェイが「あの店に寄ろう」と提案するパターンが多く、行動的なメンバーたちを眺めつつ楽しく回っていた。

すると不意に軽く服を引っ張られて、振り返るとジークさんがなにやら戸惑ったような表情を浮かべていた。

「ジークさん? どうしました?」

「……カイトさん、あそこを見てください」

「えっと……滅茶苦茶見覚えのある方が居ますね」

「はい。しかも、傍にいるべきふたりが見えません」

ジークさんが指さした方を向いてみると、射的と思わしき出店の前にスーツっぽい服を着た高身長の女性……トーレさんの姿があった。

祭りに居ること自体は別にいい、広い下層の中で偶然遭遇する確率はとんでもないが、それまだいい。

問題は、本来ならトーレさんと一緒に居るであろうチェントさんとシエンさんの姿が見えないことだ。それがなにを意味するかを察した俺とジークさんは、一度顔を見合わせて頷き合う。

そしてリリアさんたちに一言断って、手早くチェントさんとシエンさんにハミングバードを飛ばしてからトーレさんに近づく。

近くまで来ると、丁度トーレさんは射的で遊んでいる最中であり……驚いたことに一発も弾を外すことなく、景品を次々落としていた。

「……射的上手いですね。よく遊ぶんですか?」

「いや、初めてやったんだけど、私凄くない? これ滅茶苦茶得意だよ……って、あれ? カイト? こんなところで会うなんて奇遇だね! やっぱり運命では? アバンチュール決めちゃう?」

「お断りします」

「おかしいなぁ、コーカンド足りないのかなぁ? ……会ってれば自然と上がるってクロム様に聞いたんだけど、イベントが発生しないよ」

いや、ある意味これはイベントなのでは? と、そんなことを考えつつも、相変わらずな様子のトーレさんを見て、思わずため息がこぼれた。

「こんにちは、トーレさん」

「あ、ジークだ! やっほ~カイトとデートかな? 羨ましいなぁ、私もしたいよ」

「というよりは皆で遊びに来た感じですね。ところで、トーレさん……チェントさんとシエンさんは?」

「はぐれちゃった。まぁ、人が多いから仕方ないね。そのうち合流できるよ!」

相変わらずの超ポジティブ思考に思わずジークさんと共に苦笑してしまう。

「どこではぐれたかとか……覚えてないですよね?」

「あっ、それは覚えてるよ。中層だね! 下層は混んではぐれやすいからって、ふたりに抱えられて中層に連れていかれたんだよ……速攻ではぐれて迷っちゃったけどね。てへっ」

「……」

「不思議だね。中層とは景色が違って見えるよ」

「……ここ、下層ですからね」

高身長でてへぺろ顔はどうかと思うが、そもそも基本の顔立ちが美人なので意外と似合っている……いや、そうじゃなくて、どういう迷い方したら中層から、下層の転移地点付近に到達するのやら。

するとそのタイミングで、チェントさんとシエンさんからハミングバードが戻ってきた。

内容を見てみると、連絡に対する感謝と……人が多くてすぐにはそこに向かえないので、可能なら少しの間トーレさんがどこかに行かないように見ていて欲しいとのことだった。

一緒にその内容を見たジークさんは一度頷いたあとで、トーレさんに話しかける。

「……トーレさん、提案なんですか」

「なにかな、ジーク?」

「ここであったのもなにかの縁ですし、私たちと一緒に回りませんか? 下層をある程度回ったら中層に向かう予定なので、チェントさんとシエンさんにも合流しやすいかと思います」

「おっ、それいいね! うん、ふたりがよかったら是非! いや~やっぱり誰かと一緒が楽しいしね!」

とりあえずトーレさんをほったらかしにもできないので、ジークさんが一緒に回ることを提案すると二つ返事で了承してくれた。

非常にテンションが高い感じで、なんならいまの祭りテンションの陽菜ちゃんと相性がよさそうな気がする。

少々予想外の事態ではあったが、戻って事情を説明するとリリアさんたちも快諾してくれて、トーレさんを加えて一緒に回ることになった。

トーレさんはコミュ力高いのですぐに皆とも仲良くなれるだろうし、ひとまずは安心……。

「……」

「カイトさん? どうしました?」

「あ~すみません、ちょっと待っててください」

とりあえずは一安心と思ったのも束の間、視線の先にある人物の姿をとらえた……おおよそ、このような場にいる筈がないというか、居たら心配な人物を、である。

その相手に近づいて、呆れた顔になるのを自覚しながら声をかける。

「……もしかして、道に迷ってますか? 『フォルスさん』」

「おぉ、なんとこれは幸運だ! 君はいつも私が困ってる時に現れてくれるね。まるで救世主のようだよ。いや、まるでという表現は適切ではないね。実際に救われているし、現在も救ってほしいわけなので、事実として私にとっての救世主であることは間違いない。あぁ、質問への返答が遅れてしまって申し訳ない。ついつい、感動で胸がいっぱいになってしまってね……もちろん迷っているので、助けてほしい」

本当に次から次へとどうなってるのやら……まさか白神祭に来てすぐ、迷子ふたりを抱え込むことになろうとか、なんというか先行きが不安である。