軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

白神祭②

クロノアさんの神殿から出て、下層に辿り着くと……そこは予想通り凄い人だった。

「……これはまた、前に祝福を受けた時の神殿ぐらいの人の密度が高いですね」

「ですね。けど、招待客だけだった六王祭や、日数が一ヶ月丸々の勇者祭と比較すると、このぐらいの人がいる方が祭っぽい気がしますけどね」

「あ~それはたしかに」

思わず呟いた俺の言葉に葵ちゃんが反応する。たしかに、祭っぽいと言えば祭っぽい気がする。それに、確かに人は多いが移動もままならないというレベルではない。

まぁ、ゲートでの待ちとかもあるので今後も増えていくと分からないが……。

「ご主人様、すぐに中層に向かいますか?」

「う~ん、でも下層は今後もっと込むと思うし、先に下層を見て回ってから中層にいった方がいいかも? 中層はある程度入場人数に制限をかけるらしいけど、案内を付けてくれるぐらいだから入れないってことはないと思う」

アニマの質問に答えつつ、他の皆の顔を見ると、特に俺の意見……先に下層を見て回るという意見に異論はないみたいだった。

「というか、その点私たちは気楽ですよね。快人先輩がいるので、制限に引っかかる心配は無いですし」

「たしかに、そこは気楽ですが……天空神様ですか……普通上級神様と会う機会なんて、そうそうないはずなんですがね」

「お嬢様、いまさらですよ。というか、今回は事前に分かってる分ましでは?」

そんな話をしつつ、とりあえず全員で移動できそうな感じだったので、皆揃って移動する。宝樹祭の時も思ったら、陽菜ちゃんは祭がかなり好きみたいで、非常にテンションが上がっている感じだ。

いまにも出店に向かっていきたいという感じの陽菜ちゃんを、葵ちゃんが苦笑しながら止めているのを横目に、俺も軽く視線を動かす。

下層は申請すれば出店が可能ということもあって、いろいろな店が並んでいる。定番のものもあれば、なかなか見ない珍しい屋台とかも……。

「あっ、見てください! あそこ、デニッシュたい焼きって美味しそうじゃないですか?」

「……たい焼きですか。さすが大きな祭りだけあって、珍しい屋台がありますね」

「「「え?」」」

陽菜ちゃんが見つけたデニッシュたい焼きの屋台。確かに美味しそうだと思っていると、不意にジークさんの呟いた言葉に葵ちゃんと陽菜ちゃんと三人で首を傾げた。

いまのジークさんの口ぶりだと、デニッシュたい焼きが珍しいというよりは、たい焼き自体が珍しいという感じだった。

「……ジークさん、たい焼きって珍しいんですか?」

「え? ええ、勇者祭とか規模の大きい祭ぐらいでしか見ないですね」

「以前いった宝樹祭とかの規模の祭りではほぼ見かけない程度にはマイナーですね」

首を傾げつつ説明してくれたジークさんの言葉に、ルナさんが捕捉を入れる。う~ん、この辺りは文化の違いってやつだろうか、俺たち異世界人組としてはたい焼きはポピュラーである。

まぁ、祭でよく見るかって言うと微妙ではあるが……そう言えば、街とかでもたい焼きの屋台は見た覚えがない。ハイドラ王国に、たこ焼きはあった覚えはある。

「……ちなみに好奇心から聞くんですが、この世界で祭の食べ物の屋台で、一番ポピュラーなのってなんですか?」

「ベビーカステラですね」

「……それってもしかして、クロが関係してたり?」

「おそらく、ですか……冥王様は非常に人気のある方ですし、ベビーカステラを好んでいることは広く知られていますからね」

リリアさんがほぼ即答で挙げたベビーカステラと聞いて思い浮かぶのはひとりしかいない。そっか、たしかに魔界の頂点の一角であり、食べ歩きが趣味のクロが好んでいるとなれば……ベビーカステラが流行するよな。

どうりでよく見かけるわけだ……というかもしかして、あの六王祭六日目のギャグでやってるようなベビーカステラだらけの出店は、割とあり得る光景だったのかもしれない。

「せっかくだし、食べていきますか?」

「そうですね、なかなか食べる機会がありませんし、デニッシュたい焼きというのは初めてで少し楽しみです」

とりあえず、それ以上考えるのはやめて食べることを提案すると、リリアさんも微笑みながら頷く。

「では、自分が……」

「あっ、アニマ俺も一緒に行くよ」

気が利くアニマが素早く代表して買いに行ってくれようとしていたのだが、人数が多いのでひとりでは大変だろうと俺も一緒に行くことにした。

餡子とカスタードの味があるみたいだったので、半分ずつぐらいの割合で購入して、支払いをしてから店を離れて皆の元に向かう。

その途中で、不意にアニマが呟くように言った。

「……ご主人様、いまの屋台の店主、少しフィーア殿に似ていませんでしたか?」

「あ~そういえば、髪の色とか長さが同じぐらいだし、遠目に見るとたしかに……」

確認するように振り返ってみると、デニッシュたい焼きの屋台の店主らしき女性は、髪の色がフィーア先生と一緒で身長などの体系も似ていた。

まぁ、近くで見ると顔が違うのですぐ分かるのだが、遠くから見ると勘違いするかもしれない。

……あれ? なんか前に、そんな話をどこかで聞いたような? どこだったっけな……