軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

アリスと縁日デート③

アリスと並んで芝生の上に座り、買ってきた食べのものなども準備する。この空間には虫とかも居ないので、本当に気楽に楽しめるのが素晴らしい。

縁日と比べるとこちらは少し薄暗く、花火が見やすく調整してある感じだった。

「えっと、まだもう少しあるよな?」

「あの時からピッタリ1時間後に開始とするなら、あと15分ほどですね」

「じゃあ、始まるまではのんびりするか……」

あまりお腹は減っていないので、用意した食べ物はほぼアリス用ではあるが、ここまでずっと明るい縁日を回っていたので、静かな場所で少しのんびりできるのもいいものだ。

まぁ、普通の縁日に比べれば人が多く無い分、疲労もそこまでではないが……と、そんなことを考えていると、不意にアリスが俺の浴衣の裾を引っ張った。

「うん?」

「えっと……その……やってみたいことがあるんですが……」

「やってみたいこと? 恋人らしいことっていみだよな……花火が上がる瞬間にキスとか?」

「それって、第三者視点では綺麗でも、私たちには別になんも見えなくないっすか……」

「それもそうか」

アリスも少し甘えることに慣れてきた……というよりは、今日は恥ずかしくとも積極的にいこうと決めたみたいで、最初より少し大胆になったイメージがある。

まぁ、相変わらず顔は赤いのでかなり頑張っているのは間違いないのだが……。

「……それで、結局なにを?」

「いえ、花火を見る時の姿勢なんですが……まず快人さんが胡坐をかいて座ります」

「いきなり浴衣でやるにはそこそこ難易度の高いもの……うん、なんだこれ?」

胡坐をかいて座ってほしいというアリスに言葉を返していると、その途中で空中にゲームのウィンドウみたいなものが出現した。

えっとなになに『このコンソールは我が子が服を変えたいと思った際に自動表示されるようにしてるよ。好きな服をタッチして選べば着替えれるよ』……用意がいい。

「……用意周到だよな」

「これ、あのポンコツ……全知使って先読みしてたんじゃないでしょうね」

「まぁ、ともかくこれで……あっ、作務衣があるからそれにしよう」

コンソールには本当にいろいろな服が表示されていて、なんかコスプレっぽいものまであったが……そういうのはとりあえず無視して、作務衣を見つけたのでそれをタッチする。

すると気付いた時には俺の服装は作務衣に変わっていた……驚きはあるが、まぁ用意した方が全知全能なのでこのぐらいはできてもおかしくないだろうと納得することにした。

コンソールのバツ印を押して画面を消すと、アリスの要望通り胡坐をかいて座る。

「……これでいいのか?」

「ええ、それで……ちょっと待ってくださいね。心の準備が必要なんですよ……とりあえず深呼吸を――ひゃわっ!?」

なんとなくアリスがやりたいことというのは分かったし、たぶん心の準備とやらが終わるのを待っていたら花火に間に合うかどうかわからなかったので、こっちから動くことにした。

アリスの体を引き寄せて、胡坐の上に座らせ、後ろからその小さな体を優しく抱きしめる。

「……たぶんこういうことだろ?」

「そそ、そのとおりではありますけど、まま、まだ心の準備が……ぁぅぁぅ……」

「アリスってなんか、いい匂いするな」

「なんでここでさらに恥ずかしいこと言ってくるんすか!? いま結構いっぱいいっぱいだって察してくださいよ!! あ~もう、顔が熱い……湯気出そうです」

「あはは」

「なんで笑ってるんすか!?」

本当に湯気でも出そうなぐらい顔を赤くして騒ぐアリスが面白くて、ついつい笑ってしまう。普段は本当に頼りになり過ぎるぐらい頼りになるんだけど、逆にこうやって思い通りにいかずに慌てているところを見ると、どうしようもなく可愛く思えてしまう。

「いや、悪い悪い、アリスの反応が可愛くてついな……」

「うぅ、なんすかこの敗北感……ちょっと、私がこういうのが苦手だからって調子に乗ってぇ……」

「だから、悪かったって……」

「むぅぅぅ」

抗議するように俺の胸にぐりぐりと後頭部を擦り付けてくるアリスを微笑ましく感じつつも、抱きしめる手の力を少し強める。

浴衣越しに伝わってくるアリスの体温を感じ、先ほどまでよりずっと幸せな気分になれた。

アリスも拗ねたようなことは言っていても、別に怒っているわけではないみたいで、抱きしめてる俺の腕を愛おしそうに抱えている。

「……アリス、怒ってる?」

「分かってるくせに聞くのは、ズルくないですか? 別に、怒ってないですよ」

「そっか……」

「そろそろ、花火の時間ですね」

「ああ、楽しみだな」

「……はい」

アリスの声はとても優しく、なんだかんだで彼女もいまのこの時間を楽しんでくれていることが伝わってきて、なんだか俺も嬉しくなった。

「……カイトさん」

「うん?」

「私って、恋愛に関してはクソ雑魚で、なかなか言葉にはできませんけど……カイトさんのこと、誰にも負けないぐらい……大好きですからね」

「あぁ、俺も大好きだよ」

アリスと深く思いが通じ合うような、そんな幸せな感覚……まるでそんな気持ちを祝福するかのように、直後に夜空に美しい大輪の花が咲いた。