軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

アリスと縁日デート④

ふたりで花火を独占という贅沢な体験をしたあと、アリスに手を引かれて再び縁日へと戻ってきていた。

「さぁ、カイトさん! たっぷり楽しみますよ!! ここからはアリスちゃんがガンガンリードしてやりますからね!!」

「お前、なんかテンションが変じゃないか?」

「アレです。アリスちゃんも覚悟を決めたというか、開き直りました。ここでの恥はかき捨てみたいなものですし、せっかくのこの機会に思いっきりイチャイチャすることにしたんすよ!」

「……顔真っ赤だぞ」

「開き直っても別に恥ずかしさが軽減されるわけじゃねぇんすよ!!」

吹っ切れた様子かと思いきや、恥ずかしがり屋なところは相変わらず見たいで、ぐいぐい前に立って俺を引っ張っているのも……赤くなった顔を見られないようにしているのだろう。

まぁ、後ろから見ても顔を赤くしているだろうなぁというのはすぐにわかるレベルなので、意味はほぼ無いのだが……。

「とりあえず、最初はりんご飴からですかね!」

「いや、まだ食うのかよ……」

「カイトさんはあんず飴ですよ。それで一口ずつ味見したりするんです」

「……なるほど」

またコテコテなシチュエーションチョイスだなぁという言葉を呑み込んで頷く。まぁ、アリスはそういうコテコテのお約束的な感じのが好きっぽいし、らしいといえばらしいかな?

「それで間接キスになったりってそんな感じかな?」

「……間接キスはちょっとエッチすぎるので、別のところを一口食べませんか?」

「えぇぇ……基準がよく分からない」

そのシチュエーションにしておいて間接キスは恥ずかしいって、コイツの言うエッチすぎるの基準値がよく分からない。

というか、正直……いまさら間接キスを躊躇するって、全然吹っ切れてないような……う~ん、よしっ!

「アリス、ちょっとこっち向いて」

「はい? なんす――んんっ!?」

思いついたんだ。先にキスしておけば、間接キスで恥ずかしがることもないんじゃないかと……幸い手は繋いでいた状態なので、アリスがこっちを振り向くと同時にグイっと引っ張ってキスをしてみた。もちろん身長差も考慮して、アリスに呼びかける前に若干腰は落としている。

唇に触れる柔らかな感触と共に、アリスの青い目が大きく見開かれるのが見えた。そのまま数秒キスをしたあとで、顔を離すと……アリスは当然の如く茹蛸みたいに顔を赤くしながら、信じられないといった表情でこちらを見ている。

「……な、なな、にゃ……カ、カイ、カイトさん!? い、いい、いきなり、にゃにを……」

「いや、先にキスしとけば間接キスも恥ずかしくなくなるかなぁって……さっき思いついて」

「なんですかその謎理論!?」

「嫌だった?」

「い、いえ、嫌では無いといいうか……むしろ嬉しいですが……そ、そのですね。急すぎて、心臓に悪いんですよ。もうちょっとこう、段階を踏んでムードを高めていってからですね」

恥ずかしそうにしている姿が大変可愛らしいが、発言に関してはちょっとツッコミを入れたいものだ。

「1時間ぐらい縁日デートして、胡坐の上に乗せて結構な密着度で花火を見て……むしろこれ以上どう高めろと?」

「……反論は難しいので、ムード高める関連については私の負けでいいです。ですが、不意打ちに関しては断固抗議したいです!! ちゃんとそういうのは、一言断ってからにしてくれないと、アリスちゃんの顔が恥ずかしさで爆発しますよ!」

おっと、話は終わりかと思ったら、もうちょっとこの話題は引っ張るみたいだ。なんだろう不思議だな? アリスの頭の良さとか凄さとかはよく知っているはずなのに、ことこの話題に関しては『まったく負ける気がしない』。

「…‥事前に宣言したらよかったのか?」

「……まぁ、そうですね。ちゃんと事前申告してもらえれば、私もその、嫌というわけでは無いですし……」

「じゃあ、もう少しじっくりキスしたかったし、もう一度キスするね」

「はぇぇぇぇ!?!? あえ? もも、もう一度!? い、いい、いまから!? あっ、ちょっ、ま、待って、顔ドンドン近付いて……これ、私の意見聞いてくれる感じじゃないですよね!? あぅあぅ……」

普段はともかくとして、恋愛関係に関してはアリスはとにかく押しに弱い。肩を掴んでゆっくりと顔を近づけると、アタフタとしながらも最終的には目を閉じて、こちらを受け入れる姿勢になってくれた。

その姿に愛おしさを感じつつ、改めてアリスと唇を重ねる。幸せな感触を十分に堪能したあとで、唇を話せば頬を赤らめて恥ずかしそうでありながら、それでいてものすごく幸せそうな表情を浮かべているアリスを見て微笑みを浮かべた。

「……さっ、それじゃあ行こうか? ガンガンリードしてくれるんだろ?」

「……なんすかね、これ……この、まったく勝てる気がしない感じ……」

「奇遇だな。なんか俺も今日はサッパリ負ける気がしない」

「ぐぬぬ……この余裕な感じ、やはり経験値の差ですか? 複数の恋人で鍛え上げている分、カイトさんの方が有利ということですか?」

「いや、というか、俺に余裕があるのは……単にお前がアタフタし過ぎてるから、逆に落ち着けてるだけな気がする」

「自爆じゃねぇっすか私」

「正直に言っていい? いつも通りな気がする」

「……ですね」

俺の言葉に諦めたような表情を浮かべたアリスは、ギュッと俺の手を握って再び歩き出した。ただ別に落ち込んでいたりするわけでもなく、なんとなくではあるが先ほどまでよりアリスの足取りは楽しそうに見えた。