軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

アリスと縁日デート②

アリスと共に屋台を回る。方針としてはやはり、花火見学用に食べ物を確保しつつ、他の屋台も楽しもうという感じだ。

ただここでひとつ予想外の事態が発生した。というのも、屋台から楽園さんが消えていたのだ。

「……どの屋台にもいないな」

「ええ、ですが、食べ物とかは作った状態で置いてありますし……状態保存の魔法が自動でかかってるみたいなので、どれもできたての状態ですね」

「射的とかの屋台も、ご自由に遊びくださいって道具とかが置いてあるな」

「う~ん、これはたぶん気を利かせてくれたんでしょうね。ふたりっきりになれるようにって……」

つまり、この縁日の会場全部俺とアリスの貸し切り状態というわけか……それはそれでなんか変な雰囲気ではあるが、恥ずかしがり屋のアリス的には追い風と言えるのかもしれない。

しかし、だからといっていまこの場面で現状以上に恋人っぽいこともしようがないだろう。というか肩を抱いて歩くの上ってなんだろう?

「……お姫様抱っことか?」

「ッ!?」

「いや、肩抱く以上って考えるとそんなのしか思い浮かばなかった。う~ん、まぁ、とりあえずはこのまま……」

「……」

あれ? いま、一瞬だけどアリスが残念そうな表情を浮かべた気がした。そう言えばアリスって、意外とロマンチストというか、コテコテな感じのシチュエーションに憧れがあるんだったっけ。

そう思っていると、アリスが恥ずかしそうに体の前で指を突き合わせながら、囁くような小さな声で告げた。

「……あ、あの……カイトさんさえ大丈夫なら……少しでもいいから……してほしいなぁ、なんて……」

なにコイツ、可愛すぎではないだろうか? 恥ずかしそうな表情と言い、小さな声といい、身長差的に必然的に上目遣いになっていることといい、あらゆる面が可愛すぎる。

これは超絶美少女という自称も認めるしかないレベルであり、そんな姿を見せられて願いを断るなどという選択肢はなかった。

「俺もそんなにやり慣れてるわけじゃないから、落ちないように手を回しておいてくれ」

「あ、はい……えっと、こんな感じですかね?」

「うん、大丈夫……よっと」

「ぁっ……」

抱きかかえた際に漂ってきたいい匂いにドキドキしつつ、アリスが首に手を回したのを確認してから要望通りお姫様抱っこをする。

想像以上に軽いし、小柄だからか収まりがいいというか、すごくフィットする感じがする。

「……重くないですか?」

「ぜんぜん軽いよ。じゃ、このまま歩くな……」

「ひゃぁぁぁ、顔近っ……は、はい。お願いします」

間違っても転んだりしないように足元を確かめつつ歩き出す。アリスは少し落ち着かない様子で視線を動かしており、どこを向けばいいか分かっていないような感じだった。

耳まで真っ赤になっているのもよく見えるし、相当恥ずかしがってはいるのだが……それと同じかそれ以上に、どこか楽しそうな印象がある。

「乗り心地はいかがですか、お姫様?」

「ぶはっ、なんすか急に……あはは、ビックリするぐらい似合いませんね」

「う~ん、やっぱキャラじゃないか……」

ちょっとキザっぽくいってみたが、思いっきり笑われてしまった。まぁ、少しアリスの肩の力は抜けたっぽいのでいい結果ではある。

そんな風にプラス思考で纏めようとしていると、アリスが俺の顔を見て幸せそうに笑う。

「……乗り心地はそうですね……幸せですよ」

「それは、なによりだ」

「まぁ、心配事としてはこれから積み重なるであろう食べ物の重量に、カイトさんの細腕が耐えられるかどうかですけど……」

「いや、そこはマジックボックスなりにしまってくれよ。重量的な話だけじゃなく、視界的な問題もあるしな」

「善処しましょう」

「それやらないやつなんだよなぁ……」

「あはは」

楽しそうに笑うアリスに釣られて、俺も笑顔を浮かべながら歩く。なんというか、こういう空気ってのは本当にいいというか……幸せだなぁって、そう思える。

屋台を回った食べ物を確保したあとは、アリスと共に神社の境内を目指す。さすがに神社に向かう階段をお姫様抱っこのままというのは難しかったので、一度アリスには降りてもらって手を繋いで階段を上る。

アリスも少し落ち着きが戻ってきたみたいで、先ほどのようにテンパることもなく、終始楽しそうな感じだった。

石で出来た階段を上り切って境内に辿り着くと……そこには予想外の光景が広がっていた。

神社っぽい建物があるのは予想通りなのだが、その前……本来なら石畳ないし土の地面であろう場所が……『一面の芝生』だったのだ。

「……なんだこの、とんでもないミスマッチな感じ……」

「たぶん、花火見る時に座りやすいように気を使ってくれたんでしょうが……神社と芝生の組み合わせってのは普通に実在しますが、普通道はあるんですけどね。鳥居はあるので、なんというか……神様の通り道を全部芝生で埋め尽くしてる感じですね」

「罰当たりな感じが凄い」

「カイトさん、やったのは『罰与える側の奴』です」

「……そういえばそうだった」

アリスを顔を見合わせて苦笑するが、まぁたしかに……座ったり寝転がって見るには、いいのかもしれない。