作品タイトル不明
三人で縁日へ②
アリスの親友と会うことを約束して、日程を相談してから解散した。アリスは最後までなんとも微妙な表情を浮かべていたが、俺としてはなんだかんだでアリスの親友に会えるのは楽しみである。
そんな感じで不安と期待が入り混じったような気持で当日を迎え、アリスの雑貨屋に行く。
「……雑貨屋集合って話だったけど、親友さんは?」
「あ~これから親友の居るところに向かう感じですね。ちょっと事情があってこっちにはこれないので……んじゃ、移動しますか」
アリスがそう言いながらなにやら手のひらサイズの歯車を取り出し、それを空中にかざすと……歯車はなにも無い空間に吸い込まれ、直後に空間に光が走り扉のように開く。
不思議な光景ではあったが、まぁいまさら空間に入り口ができたところで驚いたりはしない。グラトニーさんに会いに行くときも似たような感じだった。
特に気にすることもなく空間の切れ目に足を踏み入れると、一瞬視界が白く染まり気が付くと真っ白な空間に居た。
後ろを振り向いても切れ目はなく、ポツンと広い空間に佇んでいる感じだ。
周囲を見渡すと、所々に歯車が浮かんでいるだけのなにもない空間だが……正直、見覚えがあった。というか、ここにきて初めて、なぜアリスがあんなに微妙な感じだったのか理解できた。
俺に次いでこの空間に姿を現したアリスの方を向き、俺は微妙な顔で告げる。
「……アリス、お前がなんであんな顔してたのか分かった」
「へ?」
「そっか、お前の親友って……マキナさんのことか……」
「あれ? うん? 会ったこと……あるんすか?」
そうこの空間に来た瞬間に思い出した。エデンさんを動かしている本体にして、かつて俺が住んでいた世界の神であるマキナさん……アリスの親友ということも今思い出した。
どうりで、アリスがあんな表情を浮かべるわけである。そりゃエデンさんの中身なわけだし、会わせるのを躊躇する気持ちはよく分かる。
「……会ったというか、夢の中で何度か話したことがあるというか……」
「なるほど、あの子……すでに接触してたわけですね。けど、それを今になって言い出したってことは……この空間の外では思い出せない感じですか?」
「まさにその通り、マキナさんのことに関してだけ、すっぱりと忘れてた」
「なるほど……シャローヴァナル様対策でしょうね」
さすがアリスというべきか、短い会話の中で情報を整理して納得したように頷く。
するとその直後になにやらファンファーレのような音が鳴り響き、空中に巨大なネオンで『大歓迎』と書かれた看板が現れて光を放つ。
ソレとほぼ同時に看板の前に見覚えのある少女が現れ、満面の笑顔で両手をバンザイするかのように大きく開く。
「アリス、我が子、ようこそ! 待ってたよ!!」
「「……」」
ヤバいなこれ、しょっぱなから結構テンション高めな感じがするぞ? 夢の中ではシロさんに気付かれないように自制してたみたいだけど、直接会ってる今はどうなんだ? エデンさんみたいに暴走するとなると、かなり恐ろしいんだが……。
俺がそんなことを考えていると、アリスがツカツカとマキナさんに近づき……その額にチョップを叩き込んだ。
「痛いっ!? え? なんで!?」
「いや、なんかテンション上がってるみたいだったので」
「え? テンション上がると私チョップされるの? 理不尽じゃない?」
う~ん、なんだろう? 割と大丈夫そうな気がしてきた……なんでかな? アリスと一緒だと、マキナさんが割とフラットな感じというか、精神的に落ち着いてる気がする。
そこら辺はやっぱり親友だからだろうか?
「シャラップ……というか、今回はずいぶん大胆に動きましたね。シャローヴァナル様との契約はいいんですか?」
そのアリスの言葉を聞いて、俺の頭にも疑問が浮かぶ。そういえば、夢の中ではシロさんに気付かれたら不味いとか、グレーゾーンがどうとか言ってた気がするけど、現在こうやって俺と直接会っているのは大丈夫なんだろうか?
「それは大丈夫、交渉に交渉を重ねて……ようやく、ようやくだよ! 『一分だけ』って約束で、我が子をこっちに連れてくることに納得させたから!」
「……一分って、もう過ぎてないですか?」
「大丈夫だよ、我が子……『どれだけここで過ごしても、あっちじゃ一分しか経たないから』、好きなだけ私と一緒に居られるよ!!」
「……」
それは、アリなのか? あと、後半の台詞に関して寒気しかしなかったので、聞かなかったことにしよう。
「……大方ごねまくったんでしょ……シャローヴァナル様の苦労が察せられますよ。というか、この前カイトさんと一緒に出かけたくせに、まだ満足してないんですか?」
「待って、アリス……誤解だよ。今回は、やましい気持ちは無くて、我が子とアリスと一緒に少しの間楽しく過ごせたらなぁってそういう純粋な気持ちで招待したんだよ。そりゃもちろん我が子のことは愛でたいよ! ペロペロしたいよ! でも今回のメインの目的はそうじゃなくて、もっと純粋な……」
「へぇ……で、本音は?」
「ずるいじゃん! シャローヴァナルは、なんとか祭りで我が子と一緒に過ごすんでしょ? 私六王祭の時も我が子とはほとんど一緒に居られなかったんだよ!! こんなの不公平だよ! 私も我が子とお祭り楽しみたいもん!!」
「……我欲MAXじゃねぇっすか……」
……神としての威厳とかはもういいのかな? まぁ、やっぱりなんか、アリスとセットなら……問題ない気がしてきた。