軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

三人で縁日へ①

窓から温かな午後の日差しを感じる昼下がり、俺はアリスの雑貨屋に遊びに来ていた。俺たちの目の前には、以前六王祭で遊んだ魔導ゴマ……その製品版のサンプルが置かれている。

六王祭から二年でいろいろ改良を加えて、量産体制も整ったため近日中におもちゃなどを取り扱う商会から発売されるらしい。

「てっきりセーディッチ魔法具商会が発売するんだと思ってた」

「おもちゃ系は別の商会の方が強いですからね……まぁ、そっちもクロさんの商会ですけど」

「さすが、経済界の王……」

「なんか最近『また新しい商会を作った』みたいですよ」

「そうなの?」

アリスが差し出してくれた紅茶を受け取りつつ聞き返す。クロが手広くやっているというのは知っていたし、経済界では頂点と称されるぐらいで、『個人で世界経済の1割に匹敵する資産を所有』していて、商会の持つ権利や資産を含めるとさらに凄まじいという世界一の富豪である。

……その大富豪がまたなんか始めるらしい。

「ええ、エデンさんがこっちの世界に分体を置くようになった影響か、それともシャローヴァナル様が交渉したのか……どうも、異世界の品……機械製品に関して、魔法具での再現なんかが緩和されるみたいなんですよ。で、それが正式に発表された日の夕方には、異世界関連の商品を取り扱う商会を設立してました」

「……行動が早すぎる」

「最近研修実習生の制度を導入したりで、集めてた人員の中から有望そうな相手をピックアップして、新しく作る商会に勧誘したりしたみたいですよ。もしかすると、アカリさんとカズヤさんが研修実習を終えたら、話が来るかもしれませんね。異世界出身のふたりは異世界関連の品に強いですしね」

「なるほど……」

まぁ、そもそもクロは人を育てるというのが大好きなので、新商会設立もその関係だろう。アリスの言葉に相槌を打ちつつ、紅茶を飲む。

実にのんびりしたいい時間で、少し眠たくもなってくる。

「……しっかし、いちおう営業中だよなこの店?」

「いまさらじゃねぇっすか? 逆に繁盛してる方が不自然な気がしません?」

「それはまぁ、たしかに」

相も変わらず客が居ない店の中を眺めつつ、カウンターに椅子を並べてアリスと隣り合わせに座っている。このカウンターには商品が置かれるよりも、紅茶やお菓子が置かれる回数の方が多い気がするのは、たぶん気のせいではないだろう。

そんなことを考えながら、のんびりとした時間を過ごしていると……不意にアリスが口を開いた。

「……あ~そういえば、カイトさん。ちょっとばかし、相談があるんですけど……」

「相談? アリスが俺に? なんか珍しいな……」

「いやね、私の親友……ああ、イリスじゃない方なんですけど、その子が私とカイトさんと三人で遊びたいって言ってるんですよ」

「そういえば、なんかもうひとり親友が居るって話は聞いてたけど、詳しく聞いたことは無かったっけ?」

「ええ、まぁ……」

「別に問題ないけど……なんでお前は、そんな微妙そうな顔してるんだ?」

アリスの親友という相手なら会ってみたいとは思うし、三人で遊ぶのもまったく問題は無い。ここまでの話の流れで不自然な部分は存在しない……筈なのだが、なぜかアリスは複雑そうな表情を浮かべていた。

嫌がっているというわけでは無く、どことなく……面倒くさがっているみたいな感じがする。

「いやね、その親友なんですけど……また面倒なこと言ってまして、なんでも威厳的な問題云々で、自分の正体がバレないようにするとかなんとか……もう威厳なんて無いって言っても、その辺りはくっそ頑固で譲らなくて……」

「正体、バレる? どういうこと?」

「もう対策はしてるみたいですけど……試してみますか、その親友は――って名前ですが、聞き取れました?」

「……いや、なんか名前の部分だけまったく聞こえなかった」

「……さすが、腐っても鯛というべきか……カイトさん相手にも有効なんですね。まぁ、そんな感じの面倒なやつなんですが……どうします?」

「いや、いまのところ凄い力を持った人ぐらいの認識しかないし、別にまったく問題ないんだけど……」

「――さんの――なんですけど……」

「え? なんだって?」

「やっぱ、こっちも聞き取れませんか……はぁぁぁぁぁ」

なんだろう、いまのところ俺の側としては問題になるような要素は無い。凄い力を持つ存在ということみたいだが、アリスの知り合いというのであればそんな相手がいたとしても不思議ではない。

正体を隠そうとするのも、まぁなにかしらの事情があるのだろう……会う時どうするのかまではよく分からないが、名前が聞き取れないだけであれば別に問題はない。

とまぁ、ここまで特にアリスが嫌そうな顔をする理由が思い浮かばないのだが……。

「アリスは嫌なのか?」

「いえ、嫌というか……私がストッパーにならないといけないのが、本当に面倒だなぁって、そう思ってます。ただ、最近フラストレーションが溜まってるみたいなんで、変なところで暴走されるよりはマシかなぁと……はぁぁぁ、いまから先が思いやられますよ」

「……う、うん?」

なんだろう、えらく不安になる言い回しである。ついでに言えばなんか、十魔と会うといった時よりも嫌そうな感じがするけど……いったいどんな親友なんだ?