軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

宮間快人の長い一日④

最初の無人島を散策したあとも、エデンさんのおすすめの場所を順に回った。基本的にエデンさんがお気に入りとしてあげるのは、人気のない場所が多い。たぶんだけど、これは別世界の住人には冷たいエデンさんらしい感じではある。

あとは、なんというか、意外といえば意外ではあるが……エデンさんは素朴で温かな雰囲気の景色を好むようなイメージだ。

「ずいぶん昔ですが、縁日のようなものに参加したことがあります」

「……エデンさんが、ですか?」

「ええ、人も多く自由に動けるわけでもなく、騒がしい上にあちこち明るくて留まって景観を楽しむのも難しい……ですが、そんないろいろとごちゃ混ぜになった景色が、深く印象に残っています」

「あぁ、その感覚はなんとなく分かる気がしますね」

思い出の補正もあるのだろうが、見るものすべてが輝いていたかのように思うような、そんな思いでは俺にもある。

……まぁ、エデンさんの外見が致命的に縁日と噛み合ってないとか、そういう話は置いておこう。全知全能なんだし、姿ぐらいいくらでも変えられるだろう。

しかし、いまこうして穏やかに話しているが数秒前にも暴走しかけて、再び極太ビームが炸裂していたりする。

いまのところ最後の対策とやらが発動せずに過ごせているが、果たしていつまで持つのか……。

そして、そんな俺の不安はそれから30分ほど経った時に現実のものとなった。三度エデンさんは暴走状態となり、極太ビームによって消し飛ばされたのだが……その後に復活しても、いまだ理性が戻る気配はなかった。

滲み出る狂気を隠そうともせずこちらに近づいてくるエデンさんだが、最後の対策とやらは一向に発動せず……本当にこれはもうだめだと、そう思った直後エデンさんに変化が現れた。

「ッ!?!?」

大きく目を見開いて驚愕したような表情を浮かべて停止したエデンさんを見て、首を傾げつつ振り返るがなにもない。

どういうことだろうと、思って視線を戻すと、エデンさんからの狂気はすっかり消え失せていた。

「……失礼しました、我が子。もう大丈夫です」

「えっと、いま、なにが?」

「最後の対策が発動しました……内容は聞かないでください。お願いします」

「あ、はい。わかりました」

どうなっているのだろうか? よく分からないが、ひとつ確かなのは……その最後の対策とやらはとてつもない効果を発揮しているということだった。

なぜならいま、エデンさんは俺のことを愛しい我が子ではなく、『我が子』と呼んだ。つまりは、フェイズ0に戻っている。

最初こそフェイズ0に戻ることもあったが、一定回数クールダウンを繰り返したあとは、フェイズ1がデフォルトになり、その後はフェイズ2以下は現れなくなった。

早い話が安全な状態に戻りにくくなっていたのだ。特にフェイズ0は一番安全な状態で、フェイズ1に移行するまでもそこそこ時間があるほどなのだが……なぜ突然そうなったのかが分からない。

実際に体を文字通り消し飛ばしても暴走状態からフェイズ0に戻すなんて不可能だったのに、いったい最後の対策とやらはどれほど強力なのだろうか?

あと、エデンさんがあれだけ驚愕していたのにも驚いた……まぁ、本人が聞かないで欲しいと言う以上、無理に聞く気もないが……う~ん、今日は本当に不思議なことがよく起こるものだ。

快人が不思議そうに首を傾げる隣で、エデン……もといエデンを動かしているマキナは、最後の対策について思いを浮かべていた。

快人も驚愕した最後の対策、それについては数日前に遡る。

「……はい?」

「お願い、アリス! 協力して!!」

「……いや、意味が分からないんですけど?」

恒例となった特訓の休憩時間に、両手を合わせて頼み込んでくるマキナに対し、アリスは怪訝そうな表情を浮かべていた。

「私も愛しい我が子とふたりっきりで出かけたいんだ! どうしても!! でもほら、私ってすぐ我が子への愛があふれちゃうからさ、それで中断になっちゃうと困るんだよ」

「……暴走しないようにすればいいのでは?」

「それは無理! だって、我が子可愛いし、ペロペロしたいし、あんな可愛い我が子を前にして暴走しない方が失礼だと思うし……」

「お疲れさまでした。私は帰りますね」

「待ってよぉぉぉぉ!」

「ええいっ、泣きつくんじゃねぇっすよ、鬱陶しい!? ……はぁ、結局、私になにしろって言うんですか?」

面倒なことになりそうだと逃げかけたアリスだったが、半泣きで縋りつくマキナを見て……最終的には大きなため息を吐いてから、話を聞くことにした。

「うん、だからさ、私が暴走しちゃったら、なんかアリスが上手い具合に止めて欲しいんだ!」

「無茶苦茶いいやがりますね、コイツ……」

「ねね、アリスなら、なんか上手いことできるでしょ?」

「……なんで私がそんな面倒なことを……」

「私はさんざんアリスに協力してるでしょぉぉぉぉ」

「……むぅ、それを言われると……う~ん」

泣きついてくるマキナの言葉を聞き、たしかに最近いろいろな場面で協力させているアリスは、どうにも無下にするのは気が引けた。

結局最終的にアリスが折れる形となり……アリスがマキナにとって『暴走しないための最後の対策』となったのだった。