軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

リスティア・アスモデウス④

リスティさんはクリスさんをからかうような笑みを浮かべながら、それでもどこか娘を心配する親の優しさを感じる表情で言葉を続けていく。

「私に言わせれば、クリスちゃんは生真面目過ぎるのよね。まぁ、この子が皇帝になった時の情勢を考えればある程度は仕方ないんだけどね」

「情勢、ですか?」

「クリスちゃんの父親の前皇帝に関しては、子供作ってみたくて顔重視で選んだから、ハッキリ言って性格はあまり私の好みでは無かったわ。それでも淫魔である私が選ぶだけあって、そこそこの私欲に塗れた屑よ。まぁ、小心者の小悪党って感じだったから圧政を敷いたりとかほど派手なことはせず、狡賢く私腹を肥やしてた感じだけどね」

そういえば、最初にクリスさんと会った際にアリスがクリスさんの情報を語るときに、国の行く末を憂いて皇帝になった的なことを言ってたような覚えがある。

「……母上は、政治には興味が無いと思ってたんですが」

「ないわよ。この程度は基礎知識ってところね」

苦笑を浮かべながら話すクリスさんの言葉をアッサリと肯定し、リスティさんは紅茶を飲んでお菓子を手に取る。

それを見たからか、初めからそうするつもりだったかは分からないが、そこから先はクリスさんが話を引き継いだ。

「立場的にあまり言いたい話でもないのですが……実は人界の三国の中で、最も国力において劣るのはアルクレシア帝国なんですよ」

「え? そうなんですか?」

「ええ、そこまで大きな差があるわけではありませんが、それでも客観的に見ればやはり一番下であると言わざるをえません」

確かに三つの国の力がピッタリ同じと思っていたわけでは無く、差はあってしかるべきだとは思う。ただそういった話を聞くのは、これが初めてだ。

「まず人界で最も力を持つ国は、ハイドラ王国です。あの国はラグナ陛下という象徴……国の大きな柱といえる存在のおかげで足並みが揃っています。本人は辞めたがっていますが、さほど王位に関することで揉めることもなく千年も国王として認められているのは、ラグナ陛下の能力が極めて優れているという証明でもあります」

「なるほど、確かに辞めたいとか言いつつも新観光地を作ったり、いろいろやってるイメージですね」

「ええ、ハイドラ王国は全体的に革新的で挑戦的な国風ですが……そうやって新しいことに挑戦できるということは、それだけ国がしっかり安定しているということです」

世界的に有名な英雄で、国王としての能力も高い。本人は辞めたいと口にしてはいるが、議会や行事などにはしっかり出席しており、寛容ながら人を率いるカリスマも持ち合わせている。

確かにそう考えると、国王としてはやはりラグナさんが他と比べて頭一つか二つは抜きんでていると言えるのかもしれない。

「次いで力があるのは、シンフォニア王国です。シンフォニアはやはり気候に恵まれ資源が豊富であることが大きいですね。三国で最も豊かであるといえるでしょう……その上、最近はハイドラ王国に迫るほどの勢いがあります。まぁ、コレに関してはミヤマ様の影響によるところが大きいですが……」

俺の影響? あ、あぁ……シロさんとかが来たり、天空城があったりとかそういうやつか……なるほど、その勢いあるシンフォニア王国を見て、ラグナさんも俺……というよりは俺の恋人たちを、海水浴に招待と考えた訳か。

「もしかして、そういうことがあったからラグナさんは以前俺と恋人たちを海水浴に招待したんでしょうか?」

「間違いないと思いますよ。話題性でシンフォニアに凄まじい勢いがあったからこそ、対応のための一手を素早く打った……少なくともその点では、私は出遅れてしまっていますね」

う~ん、やっぱりラグナさんは国王として優秀なのだろう。おそらくではあるが、俺が異世界に戻っている一年八ヶ月の間に新観光地の準備を進め、戻ってきてすぐと言っていいタイミングで招待の話を持ち掛けてきた。

しかもちゃんと、俺が変に勘ぐったりしないように話題性が欲しいと正直に打ち明けつつも、俺にとって特に必要な情報ではないといえる国家的な思惑はちゃっかり伏せることに成功している……う~む、敏腕だ。

ラグナさんの手腕に感心していると、リスティさんがどことなく軽い口調で言葉を発した。

「それに比べてアルクレシアは、いまいちコレって強みが少ないのよね。そのくせ貴族が無駄に権力を持ってるから、ごたごたも多いしね~。さらにクリスちゃんが皇位に付いた段階では、積もり積もった負債によって国が徐々に衰退へ向かいつつあった」

「……たまたま私が皇帝になった時が、アルクレシアにとって変革が必要なタイミングだったと、それだけの話ですよ」

「そして健気で真面目なクリスちゃんは、それこそ国に己のすべて捧げる覚悟で研ぎ澄まして皇帝として時に非情に手腕を振るったわけ……余裕は無くてつまらなかったわね。まぁ、そういう苦労も経験だから、悪い方向に進まない限りはいいと思うけどね」

そう言って笑うリスティさんは、どこかからかうような口調ながら、やはり優しさを感じた。あくまで俺の想像でしかないが、政治に興味が無いと言いつついろいろ把握していたのは、いざ悪い方向に進んだときはクリスさんを助けてあげるつもりだったのだろうと、そんな風に思った。

するとそこで、リスティさんはグッと拳を握り締めながら少し怒った様子で告げた。

「ただし、シャルティア様がクリスちゃんのこと『銅貨一枚』とか言ったのには、猛抗議しておいたけど!」

「……なにしてるんですか母上、というよりなぜそのことを知ってるんですか……」

「あのやり取りは魔法で覗いてたから……ちなみにシャルティア様には『覗き見してる暇があるなら、さっさと定期報告書を提出しなさい』って一蹴されたわ」

「正論じゃないですか……」

悔しそうに告げるリスティさんを、クリスさんはなんとも言えない呆れた表情で眺めていた。