軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

海水浴後編⑥

初戦を勝利したおかげで勢いに乗ったのか、俺とアリスのペアはその後も順調に白星を積み重ねていった。アリスの技術はもちろん凄まじいが、なんだかんだで俺も調子がよく、自分でも結構いい感じに動けていると思う。

ただまぁ、なんというか、形式的に仕方ないと言えば仕方ないのだが、アリス対アリスという形になった時はどうにもシュールな感じがした。

結局アニマが細かい身体能力のコントロールが苦手なのかやや動きがぎこちなく、そこが隙となって俺とアリスのペアが勝利することができた。

その結果……見事俺とアリスのペアが、このバレーボール対決の優勝者となった。

「やりましたね! 快人さん!」

「ああ、アリスのおかげだ。ありがとう」

「いえいえ、快人さんもかなりいい動きでしたよ。ふたりの勝利ってやつですね!」

「だな」

あくまで遊びなので賞品があったりするわけではないが、それでもやはり優勝は嬉しいものだ。アリスとハイタッチをしながら喜びを分かち合っていると、不意になにやらピリッとした空気を感じた。

視線を動かしてみると、シロさんとアリス……本体の方が、なにやら少し緊張したような表情を浮かべている。まるでこれから起こるなにかにすぐ対処できるようにしているみたいな……いったいどうしたんだろ?

別になにも、おかしなことはないよな? 皆で和気藹々とビーチバレーを楽しめたし、険悪な雰囲気になったりした場面もない。

名勝負といえる戦いも多かったし、どこかの実力が不自然に突出していたという感じでもなかった。実際クロやアイシスさんの表情はにこやか……妙な雰囲気なのはシロさんとアリスだけである。

その不思議な状況に首をかしげていると、着ぐるみの方のアリスが俺に声をかけてきた。

「それじゃ、快人さん。私の役目は終わりましたので、本体に戻りますね~」

「え? ああ、了解」

「ではでは~」

そう言って着ぐるみのアリスは最初っからその場にいなかったかのように姿を消した。それを見送ってから、視線をシロさんとアリスの方に戻すと……あれ? さっきの変な雰囲気じゃなくなってる?

もしかして俺の気のせいだったのかな? たしかに表情とかに関しても、なんとなくそんな気がしたって程度だし……。

そんなことを考えていると、クロたちが俺の健闘を称えるような言葉と共に話しかけてきて、そのまま先ほどまでのバレーボールに関しての話で盛り上がり、いつの間にかシロさんとアリスもいつもの調子で会話に参加してきたので、先ほど感じた疑問はいつの間にか頭の奥底へと消えていった。

クロムエイナたちと話す快人を見ながら、アリスは少し沈黙してからポツリと呟いた。

「……帰りましたね。普通に」

「……帰りましたね。何事もなく」

その呟きに、隣にいたシャローヴァナルも少し沈黙してから言葉を返す。ふたりはいま、有り体に言えば……少し混乱していた。

というのも着ぐるみのアリス……エデンが、ふたりの予想を裏切り普通に帰ったから……。

ふたりは先ほどまで、エデンの暴走を警戒していた。快人とペアで順調に勝ち進み、見事優勝したことで彼女のテンションは最高潮に達するだろうと……暴走するのであれば、このタイミングだろうと、そう考えていた。

だからこそ、その兆候が見えたら即座に対応できるようにと緊張を高めていたのだが……結果として、エデンは暴走しなかった。

「なんというか、逆に不安になる結果ですね」

「シャローヴァナル様の気持ちはよ~く分かります。私も同じ心境です……暴走しないにしても、強引にもっと居座るかと思ってましたが……ゴネる様子もなかったですね」

「ええ、奇妙な気分です。最良ともいえる結果のはずなのに、どうにも納得がいきません」

「というか、あの人が普段ホイホイとスイッチ切り替える感覚で暴走し過ぎなんすよ。暴走しない方が不安になるって酷い話ですよ」

そう、結果だけを語るのであればエデンは暴走することもなく、快人がエデンの正体に気付くこともなく、万事無事に終わったと言える状態ではあった。

しかし、普段の暴走っぷりを考えると、なにもない方が逆に不安になってしまうのも無理はないだろう。

「結果として、暴走していないのに振り回された気分ですね。まぁ、本当に悪い結果ではないので……よしとしましょう」

「そうですね。貴女にもいらぬ気苦労をかけました、この埋め合わせは後日」

「いや、いいっすよ。今回に関しては100%あのぶっ飛んだ神が原因ですし……とりあえず、私たちも切り替えて遊びましょう」

若干釈然としない気持ちは残るものの、良い結果であるのは間違いはない。総括論付けたアリスとシャローヴァナルは、一度顔を見合わせてから気持ちを切り替え、快人の居る場所へ向かっていった。