作品タイトル不明
海水浴後編②
バーベキューもある程度進んでくると、今日という日の成果がすでに出始めていることを実感した。そもそも、今回の海水浴の一番の目的は親睦を深めることであり、普段はあまり会話をしない人たちが仲良くなってくれたらとそういうわけだ。
「俺としては、バーベキューソースも好きですが、やっぱりシンプルな塩コショウの味付けが安定感があって好きですね」
「へ~私はどうだろ? 別にどっちも美味しいからどっちの方がいいってのはないけど……あぁ、でもアレだね。焼肉とかって料理に関しては、焼く前からタレついてるやつがいいね」
「……それはもしかして、タレをつけるのが面倒だからとか、そういう事でしょうか?」
「正解、いい読みしてるね、ジクりん」
「フェイト様らしいですね……あと、いまさらですが、そのジクりんというのは……」
俺の言葉にフェイトさんが反応し、近くにいたジークさんも自然に会話に入ってくる。とてもいい雰囲気というか、気楽に雑談できる空気が形成されているような気がした。
実際に周囲を見渡してみると、同じようにあちこちで食事をしながら楽し気に会話が繰り広げられていた。
「なんかさ、ボクの気のせいじゃなければ……シャルティア、前よりかなり強くなってる気がする」
「……うん……魔力の質が……だいぶ違う……すごく……強くなってると……思う」
「魔力の質、ですか……残念ながら、私は実力がかけ離れすぎているのか、違いを読み取ることができません」
「……魔力の大きさじゃなくて……質の違いを判別するのは……少し……コツがいる……少し教えれば……リリアもできると思うから……今度……教えるね」
「ありがとうございます」
少し離れた場所では、クロとアイシスさん……そしてリリアさんが会話をしていた。特にリリアさんがああしてクロやアイシスさんとリラックスして会話ができているのを見ると、大きな成果が実感できる。
まぁ、それはそれとしてアリスが前よりかなり強くなってる? いや、俺にはアリスはおろか他の人たちもレベルが違い過ぎて、具体的な違いと言われてもさっぱり分からないのだが……クロとアイシスさんがそう感じているのなら、実際に強くなっているのだろう。
……そういえばなんか、少し前に「少し修業しようかと思ってます。まぁ修行パートは人気でないので全カットしますけどね」とか言ってたけど、アレはいつものおふざけではなく本当に修行するつもりだったのか……。
けど、う~ん……言うまでもなく、アリスって世界トップクラスの実力者のはずだが……そんなに短期間でクロたちが『かなり』と口にするほど成長するものなんだろうか? あと修行ってなにやってるんだろう?
そういえば、エデンさんへの態度が変わり始めたのもその辺のタイミングだった気が……もしかしてアリス、エデンさんと一緒に修行してたりするのかな?
……いや、流石にそれはないな。アリス側はともかくとして、全知全能であるエデンさんが修行する理由はないし、いくらアリスのことを評価しているとはいえ、エデンさんがアリスの修行に付き合うとも思えない。
まぁ、アリスのことだからなんか効率的な修行でもしてるんだろう。
そんなことを考えつつ視線を動かすと、さらに別の場所ではシロさんとアリスとアニマの三人が会話をしていた。
「ふむ、なるほど……下処理が重要なのですね」
「まぁ、料理の味の半分は準備段階で決まりますからね……っていうか、興味あるんすか料理?」
「難しい質問ですね」
「……難しい、のでしょうか?」
相変わらず天然気味な発言をしているシロさんに、アリスとアニマがやや呆れたような表情を浮かべているが、雰囲気自体は悪くない。
アリスもなんだかんだでシロさんには敬意をもって接しているし、アニマの方もシロさんに対しては信仰心を持ち合わせているような気がする。
たぶんというか、確実にアニマを転生させたのがシロさんだからだろう。初めて会った時から、他の人に関しては『殿』なのに、シロさんのことだけは一貫して『様』付けで呼んでいる。
ともあれ、当初はやや不安要素もあったシロさんやフェイトさんもしっかりと周りと馴染んでいるみたいだし、本当によかったと思う。この分であれば、午後も楽しく遊ぶことができそうだ。
「あっ、そうだ! せっかくだし午後は皆で遊ぼうよ。ビーチバレーとかいいんじゃないかな?」
タイミングを見て告げたクロ言葉を聞き、皆の視線がクロに集まる。たしかに午前中はバラバラに行動していたし、午後は皆で遊べるものをというのはとてもいい考えだ。
他の皆も乗り気な感じだし、ワイワイと楽しく遊べ……。
「でも普通にやるだけじゃ面白くないし、午前中に組んだペア同士で対戦してみよう! カイトくんのペアはその時々で、対戦相手じゃない誰かが担当する感じで!」
……なるほど……それはなかなかいいバランスだな。圧倒的というほど突出しているペアはないし、なかなかいい勝負になりそうだ……上位じゃなくて下位に突出している俺という存在を除けば……。
というかこの面子とビーチバレーで対決って……死ねってことかな? 身体能力が違い過ぎるんだけど!? アレだよね、ちゃんと俺にはハンデあるよね!?