軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

海水浴後編①

昼食のバーベキューは、以前クロと行った串焼きタイプではなく、網や鉄板の上で焼いている様々な食材を、各々自由に取る形式だった。

調理を担当しているのはアリス……の分体であり、サメの着ぐるみを着ている。バーベキューとサメとの関連性はさっぱり分からない。

まぁ、それはそれとして……食材はどれも超一級品だし、料理上手なアリスが絶妙な焼き加減にしてくれているので、どれを食べようかと目移りしてしまう。

アリスが用意してくれた紙皿と割り箸でバーベキューを楽しみつつ視線を動かし、他の皆の様子を見ると……何気にそれぞれ食べているものに個性が出ていて面白い。

ジークさんとアニマは主に魚貝類を食べているように見える。以前アリスから聞いた話ではあるが、海から離れているシンフォニア王都では魚は中々の高級品らしい。

リグフォレシア出身で現在はシンフォニア王都に住んでいるジークさんはあまり魚介類を食べる機会が無いので、せっかくの機会ということで魚介類を中心に楽しんでいるらしい。

そしてアニマは言わずもがな、魚が好きなのでそういったものを中心に食べている。

アイシスさんは、野菜を中心に食べているみたいだ。別に肉が嫌いというわけではないのだろうが、どちらかと言えば野菜や果物の方が好きなのかもしれない。

対照的にアリスの本体は、ガッツリ肉中心である。まぁ、アリスはなんでもよく食べるんだけど……野菜や魚よりは肉が好きなイメージがある。

リリアさんとクロは、肉、野菜、魚貝とバランスよく食べている感じに見える。特に特定のものを好んで食べているような様子もない。

シロさんは一切こだわりはないみたいで、適当に目についたものを取っている感じだ。こういう食事風景一つとっても各々の個性が出るのはなんだか面白い。

……まぁ、それはそれとして、ひとりだけこの楽しいバーベキューで顔色の悪い人物がいる。そう、フェイトさんである。

フェイトさんは先ほどからチラチラとシロさんの方を見ており、シロさんが一度も箸をつけていない食材は絶対食べないなど、とにかく気を使いまくっている感じだ。

……失念していたけど、シロさんはフェイトさんにとっては絶対的な上司ともいえる存在であり、普段ならこうして一緒に食事する機会などない。だから、フェイトさんにしては珍しく焦り全開の表情で食事を行っていた。

「……フェイト」

「はっ!」

「貴女も自由に食べなさい。せっかくの機会です、多少のことで咎めたりはしません。そのように難しい顔をしていては、かえって周りが気を使ってしまうでしょう」

「うっ……はい」

フェイトさんの緊張はとても分かりやすかったこともあり、俺がなにかをする前にシロさんが直接フォローを入れてくれた。

やっぱり最近のシロさんは、周りの感情の機微によく気付いてくれるというか、本当に頼もしい。

シロさんの言葉を受けてフェイトさんが先ほどまでよりは幾分かリラックスした表情で食材に手を伸ばし、ソレを見てからシロさんはチラリと俺の方に視線を向けて独り言のように呟いた。

「ひとりだけ緊張していては、今回の趣旨から外れてしまいますからね」

「そうですね」

「ところで、快人さん、あ~ん」

「ああ、どうも――うん? あれ?」

なんかいま、ものすごく自然な動きで肉が目の前に差し出されたので、つい反射的に食べてしまったが……話の前後がまったくつながっていないのではないだろうか?

そう思いつつシロさんの方を見ると、シロさんは何事もなかったかのように……いや、少しだけ楽し気な表情で食事を再開していた。

う、う~ん……不意打ちではあったけど、まぁ、シロさんが楽しそうならそれでいいか……。

「ちょっとクロさん、いま取り出した見覚えのあり過ぎる袋……ただちにしまってください」

「え? で、でもほら、バーべーキューと言えば……やっぱりベビーカステラは定番じゃないかな?」

「んなわけねぇでしょうが!? よほどの異常事態でもない限り、バーベキューとベビーカステラが巡り合うことなんてないんですよ!!」

おっと、シロさんに気を取られている間に、こっちはこっちでおかしな事態が発生しているみたいだ。というか、やり取りだけですぐわかってしまった……クロの悪い病気がまた顔を出したらしい。

そういえば前に一緒にバーベキューやった時も、途中でベビーカステラ串に刺して焼いたたような気もする。

「ともかく、私が仕切っている場でそんな暴挙は許しませんからね」

「い、いや、でもねシャルティア……せっかく『焼きベビーカステラ』が食べられる貴重な機会なわけだし……」

「すでに焼いてあるものをさらにバーベキューしようとしている時点で、おかしいことに気付けぇぇぇぇ!?」

「で、でも、ほら……ベビーカステラにはその……無限の可能性がね……」

「いや、いま可能性の話してねぇっすから。はい、没収」

「あぁぁぁぁ、返してぇぇぇ!?」

なんだろう、今日のアリスは本当に頼もしい。なんというか、安心感が違う。少なくとも彼女が仕切っているこの昼食では、変なゲテモノ料理が登場することはないと確信できた。