軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

一周年記念番外編「二人の異世界旅行前編④・遊園地」

クロと共にやってきた岡山。ブラジリアンパーク鷲羽山ハイランドで遊んだあとは、ホテルに一泊して再び観光に繰り出すことにした。

昨日は遊ぶことを重視して遊園地に行ったので、今日のメインは観光である。ネットで検索したところ、岡山にはそれなりに観光地が存在している。

日本三名園に数えられる後楽園、古き良き日本の街並みが残る倉敷美観地区、ももたろうのモデルになったとも言われている吉備津彦命伝承の残る吉備津神社、少し遠出をするならば湯原温泉なんてのも選択肢に上がる。

そんな多くの観光地の中で、今日の目的地に選んだのは……長船刀剣博物館だった。

少しマイナーとも言えるその場所を選択したのは、ひとえにクロがそこを希望したから。クロの家族であるノインさん。元日本人である彼女が武器にしている刀に興味があるということで、それを見に行くことにした。

刀剣博物館には、俺も小学校1年か2年のころに母さんに連れられて行った覚えがあるが、もうほとんど忘れてしまっているので、結構楽しみではある。

ただ、この刀剣博物館……アクセスがイマイチ悪い。電車で行くのなら最寄り駅は赤穂線の長船駅になるのだが、そこからかなり距離があり、バスなども出ていない。

長船駅からタクシーという手もあったが、途中でクロが興味を持った場所にも寄れるようにと、レンタカーを借りることにした。

免許自体は持っていたけど、長く運転していなかったので少し心配だったが……体はちゃんと覚えていたみたいで、問題無く運転できている。

「ねね、カイトくん。ここはどの辺りなの?」

「えっと、もうすぐ西大寺……ここまで来れば、刀剣博物館までそう遠くないよ」

「ふむふむ……でも、このジドウシャってのは本当に面白いね。魔法具で再現してみたいけど……地球神との約束があるから、難しいかなぁ……」

「エデンさんとの約束?」

「うん、キカイセイヒンとかをあまりコピーしないようにって……カガクだっけ? 確かにそれは、あくまでこの世界で発展してきた技術だからね。シロと地球神の間にいろいろ協定があるみたいだよ」

そういえば、勇者召喚でも機械製品の類は預けることになってたんだっけ? 俺の場合は、一番初めに預けたスマホが……エデンさんにより電池切れ無し、圏外無しに魔改造されて手元に帰ってきてるけど……。

「なるほど……っと、そういえばそろそろ昼時だし、なにか食べようか?」

「あれ? もうそうな時間になってたっけ?」

「途中ちょこちょこ寄り道してたからな」

さてなにを食べようかと考えていると、ふとカーナビに表示されている店が目に止まった。

「クロ、ハンバーガーでもいい?」

「うん!」

「じゃあ、ドライブスルーで買ってもいいけど、そんなに急いでるわけじゃないから店内で食べようか」

「う、うん?」

ドライブスルーの意味が分かっていないのか、首を傾げるクロを見て微笑んだあと、目的のハンバーガー店に向かう。

出来れば岡山の名物料理とか食べたかったが、それっぽい店が付近に見当たらないので仕方ない。まぁ、クロにとってはハンバーガーチェーン店も新鮮だろうしいいかな?

ハンバーガーチェーン店というと、有名なのは三種類だろう。その中で今回俺とクロが訪れるのは、値段は一番高く、出てくるのもやや遅いが美味しい店だ。

いや、どの店もすごく美味しいんだけど、このチェーン店は他に比べて高級志向のような気がする。

「いらっしゃいませ」

「えっと、このセットでドリンクはアイスコーヒー……クロはなににする?」

「う~ん、どれも美味しそう……全部!」

「……えっと、バーガー単品で全種類ひとつずつと、サイドメニューもひとつずつ、あとドリンクはオレンジジュースのLで……」

「は、はい……よろしいのですか?」

「大丈夫です」

唖然とした様子で訪ねてくる店員に対し、俺は苦笑を浮かべながら大丈夫だと答える。

クロやアリスのように高位の存在は、食べたものを即座に欠片も残さず吸収して魔力に変えてしまえるらしく、食べようと思えばいくらでも食べられる。

まぁ、マグナウェルさんみたいに食事自体をしない方や、メギドさんのように酒ぐらいしか口に入れない方もいるけど、クロとアリスはよく食べる。

アリスは言わずもながだが、クロも食べ歩きが趣味であり……食べること自体が好きなので、この手の珍しい店に来ると一通り注文する。

ちなみに昨日いったお好み焼屋でも……全種類食べた。

昼時とはいっても、まだ11時半ぐらいなので、席もある程度空いており、俺とクロは窓際のテーブル席に移動して注文した商品を待つ。

クロの全種類ひとつずつは時間がかかりそうなので、出来たものから持ってきてくださいと伝えてある。

「美味しい! このオコメで出来たハンバーガーは初めてだけど、すごく美味しいね! 帰ったらノインにも教えてあげよう」

「あはは、まぁ、気に入ったならなによりだよ」

「……カイトくんも、一口食べる?」

「……へ?」

「はい、あ~ん」

「……あ、あ~ん」

……恥ずかしい。とても恥ずかしい。いや、本当に他の客が少なくて助かった。認識阻害の魔法があるとはいえ、最悪の場合ロリコン認定もありえる。

まぁ、クロはエデンさんから貰った免許証を持っているので、いざ厄介事になっても切りぬけることはできるけど……うん、視線が痛い気がする。

「カイトくん! これもすごく美味しいよ、ほらほら、食べてみて!」

「……う、うん」

満面の笑顔でハンバーガーを差し出してくるクロを見ながら、俺の心の中で……ドライブスルーにしておけばよかったと、若干後悔した。