軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

一周年記念番外編「二人の異世界旅行前編⑤・遊園地」

昼食を終えて再び来るまで移動し、俺とクロは目的地である刀剣博物館に到着する。

「……あれ?」

「うん? どうしたの、カイトくん?」

「いや、なんでもない」

いくつか並ぶ建物と刀剣の里と書かれた看板……あれ? こんな感じだったっけ? もっと小ぢんまりした、博物館だけがあるような場所だったような気がしたけど……勘違いかな?

う~ん、まぁ、俺が以前ここを訪れたのは小学校低学年のころ……それこそ10年以上前なわけだし、改装していてもおかしくはない。もちろん、単純に俺の記憶違いという可能性もあるが……。

ともかく、予想していたよりいろいろ見て回れそうな場所が多いのはいいことだ。

駐車場からすぐ前には売店らしき建物があるが、まずは博物館の方を見てみようと木造りの門をくぐって博物館の方向へ向かう。

すると案内の矢印が見え、右が『備前長船刀剣博物館』、左が『今泉俊光刀匠記念館』となっていた。今泉俊光って誰だろう? この辺の地域出身の偉人かな?

記念館の方はあとで回るとして、まずは刀剣博物館へと入る。チケット売り場で大人用のチケットを2枚購入する。幸いここではクロの見た目に関してツッコミは入らなかった。

チケットは刀の鞘のようなデザインになっており、流石に芸が細かい。

入口にあったパンフレットを見る限り、この博物館には刀の展示室だけでなく、刀が作られる工程を紹介している『刀剣の世界』というエリアがあるみたいだ。

まずは基礎知識からということで、刀剣の世界というエリアに向かう。

「へぇ、カタナってこういう風に出来るんだね」

「うん、俺も詳しく見たのは初めてだけど……一本の刀を作るにも、いろいろな専門家がいるみたいだね」

日本刀を鍛造する刀匠、刀身を研ぐ研師、刀身に模様などを彫る彫金師、はばきという刀身の根元付近に付ける部分を作る白銀師、鞘を作る鞘師、様々な金具を作る金工師、鞘に漆などを塗る塗師、鍔を作る鍔工、柄に巻く紐などを作る組紐師、実際にそれを巻く柄巻師……ここのパネルに書いてあるだけでも、それだけ多くの人の手が加わり日本刀というものは作られるらしい。

「あれ? そういえば、これだけ手間のかかる日本刀作りだけど……ノインさんの持ってる日本刀は誰が作ってるの?」

「シャルティアだよ」

「……あぁ、なるほど……」

まぁ、確かにアリスなら一人で全部できちゃうか……まぁ、アレは完全に例外なので置いておくとしても、刀作りというのは本当に大変なものだ。

この刀剣の世界には、ミニシアターみたいな場所もあり、映像付きで刀の作り方を学ぶことが出来た。少し日本刀について詳しくなった気分だ。

すると、まぁ、用意のいいことで……『刀言葉・名工とんちんかんゲーム』なるものが置いてあった。

「……ちょっとやってみようかな」

「うん、ボクはニホンの言葉には詳しくないから、カイトくんのを見てるよ。頑張れ、カイトくん!」

「よし……」

手元のボタンを見る限り三択形式で出題されるらしい。って、あれ? 刀言葉クイズと名工ゲーム? ああ、二種類あるんだ。てか、とんちんかんって問題出すんじゃなくて、刀を作るゲームなのか……じゃあ、とりあえず先にクイズの方からいこう。

付け焼刃ではあるが、クロも見てるんだし少しはいいところを……さて第一問目……ふむふむ、鍔迫り合いが……ふむ……なるほど……。

「……」

「カイトくん?」

サッパリ分からない。あれ? これ結構難易度高くない? と、とりあえず、一問目は分からないので適当に……運よく正解。

どういうことだ? 二問目もさっぱり分からないんだけど……適当にポチっと……。

三問目……あっ、これなんだったっけ? えっと、どっちだったかな……た、たぶんこれ……よし合ってた。

とまぁ、そんな感じでしばらくクイズに挑戦した結果……。

「おぉ! すごい、カイトくん! 全問正解だよ!」

「……う、うん。ど、どど、どんなもんだい」

冴えわたった……『運』が……適当に押したのが全部正解だったおかげで、全問正解という結果になったが……いいところを見せれた気はしない。まぁ、クロが喜んでるしいいかな?

刀剣の世界で一通り知識を付けたあとは、いよいよ展示室に向かう。

「うわっ、おっきいね~」

「すごいな……大太刀?」

展示室の入り口に飾ってあった俺の身長より大きい刀に圧倒される。こんな馬鹿みたいにでかい刀なんて、振れるんだろうか? まぁ、俺の隣に居る幼女は軽々と振り回すだろうけど……。

少しその大太刀を眺めたあと展示室には言ってみると、沢山の日本刀が展示されていた。

……正直違いがイマイチ分からない。いや、なんか模様とか形とか、微妙に違う気がするし隣に解説らしきものもあるんだけど……う~ん、難しい。なんか凄いなぐらいしか、感想が出てこない。

もっと日本刀に詳しい人が居ればいろいろ教えてくれたんだろうけど……最有力候補のノインさんも、何故か日本刀のことも詳しそうなアリスも居ない。

まぁ、こういうものは詳しいアレコレは分からなくても見て楽しむものだし、大丈夫だろう。

「……ノインが持ってるのを見た時も思ったけど、ニホントウって綺麗だよね」

「確かに、鏡みたいに磨かれてて、綺麗だよな」

「うん、それに光の当て方が上手だよね。ハモンがよく見えるよ」

「……へ?」

「これはチョウジハモンかな? ケショウトギでちょっと見えにくいけど……。それにナカゴも細かくてすごいよね」

「く、クロ……さん?」

あれ? どういうこと? なんかクロの方が詳しそうなんだけど!? 専門用語っぽいのがガツガツ出てるんだけど!?

どういうこと? 一体クロになにが……。

「うん? どうしたの?」

「い、いや、なんでそんなに詳しいの?」

「あぁ、ほら、さっきのエリアに本がいっぱいあるスペースがあったでしょ?」

「あ、あぁ、資料室みたいな感じの場所があったな……」

「そこにあった本、『全部覚えた』!」

「……」

クロが笑顔で告げる言葉を聞いて、俺は絶句した。あの量の本を全部覚えた? いつの間に? あぁ、そう言えばさっき、クロが本を手にとってから棚に戻すって不思議な行動をしていたような……まさか、あの時に全部? し、信じられない高スペックである。

「……というか、いままであまりに普通にしてから気付かなかったけど……そもそも、クロって日本語読めたっけ?」

「へ? あっ、そっか……カイトくんは翻訳魔法に慣れてるから気付かなかったかもしれないけど、ボクこっちに来てからずっと『ニホンゴ喋ってる』よ」

「……は?」

なんとか、叫び出すのだけは我慢した。いまは他に人が見当たらないとしても、ここは展示室……大きな声をあげてはいけない。

そ、それにしても……クロが日本語喋ってたの? いや、まったく気付かなかった。あまりに流暢に喋ってて、普段翻訳魔法で聞こえてくる日本語との違いにまったく気付かなかった。

「ボクにはシロや地球神の翻訳魔法が効かないからね。カイトくんは大丈夫でも、お店の人とかには通じないから……覚えてきたよ。発音が難しくて、まだ完璧とは言えないけどね」

「ぜ、全然気付かなかった……」

「そう? 上手く喋れてる?」

「う、うん。まったく違和感ないよ」

「ホント? よかった~」

いやはや、本当にすさまじいものだ。まぁ、アレだけの本を一瞬で暗記できるクロにしてみれば、日本語を覚えるぐらい簡単な話か……なんか、帰るころには地球の主だった言語全部覚えてそうな気さえする。

クロの衝撃の発言に驚愕したが、特に不都合があったりするわけでは無いのでそのまま見学を続行する。

博物館の二階には『瀬戸内刀工会』という刀鍛冶がごく最近に作った刀が展示されており、その精巧さに感動した。

二階の展示室には刀だけでなく、槍や薙刀なども置いており、知識を身に付けたクロのお陰で分かりやすく眺めることが出来た。

そのあとは博物館を出て、『備前長船刀剣工房』という、実際に刀を作っている現場を見学できる場所に移動した。

日本刀を打つ鍛錬場などでは少しだけ作業を体験出来たりもするらしい。今日は残念ながら職人さんのほとんどはお休みみたいで、直接作業を見ることは出来なかった。

しかし初めて見る道具などが置かれている工房は見ごたえがあり、ここには作業についての解説パネルもあって、クロの解説も合わさり、しっかりと理解しながら見学することが出来た。

なんか、工房にサイン色紙らしきものがいっぱい飾ってあった気がするけど……刀剣に関係する人達のサインかな?

そのあとは『今泉俊光刀匠記念館』に立ち寄ってみた。日本刀の名工の記念館であり、自作の道具などが置かれていた。

細かな違いはあれど、基本的に先程見学してきた工房にあったものに似ており、そいう意味でも技術がしっかりと継承されている……なんというか、歴史というものを感じた気がした。

最後に『ふれあい物産館』に立ち寄り、日本刀の製法で作られた包丁や……ちょっと変わったところで組紐などを手に取ってみた。

岡山のお土産なども置いており、日本刀デザインの鋏なんかはちょっと面白かった。

せっかくなので記念に、日本刀の鍔をクロとひとつづつ買って帰ることにして……刀剣の里見学は終了となった。

帰り道、覚えたての刀剣知識でクロと会話をしながら、想像していた以上に楽しめたことが実感できた。本当に来てよかったと思う。

機会があればまた来てみたいものだ……。