軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

引かせてください

昼食を終えたあとは、腹ごなしも兼ねてのんびりと祭りを見て回る。今日の祭りは大型の魔物などもペットとして参加できるからか、通りは非常に大きく作られていてベルを連れて歩いても結構余裕があっていい感じだ。

リンは、お腹が膨れておねむタイムに入ったみたいで、俺の服に潜り込んだまますやすやと寝息を立てている。なんとも器用な寝方だ。

そのままのんびりと、特に目的も持たずに祭りを見て回っていると、ふとフィーア先生がなにかに気付いた様子で足を止め、視線を右に動かしてから口を開いた。

「……あれって、ルーちゃんたちじゃない?」

「……え? いや、距離が遠くてよく見えないです」

「確かにリリア公爵方ですね。なにか、悩んでいるように見えます」

……いや、フィーア先生とノインさんには見えているかもしれないけど、俺には遠くに白い山みたいなものが見えて、その麓に沢山の人が集まっていることしか分からない。

「う~ん。なにかの縁だし、ちょっと声かけていこうよ」

「賛成です」

「俺も……どこに居るのかまだ見えないですけど、賛成です」

ノインさんが告げた「悩んでいるように見える」というのも気になり、フィーア先生の提案に賛成する。そして俺たちは、進路を左に変え、リリアさんたちが居る……らしき場所に向かう。

だんだんと距離が近付いてくると、俺にもようやくリリアさんたちの姿が見えてきた。

リリアさん、ルナさん、ジークさんの三人が、白い山……10cm四方くらいの箱が、文字通り山のように積み上げられたナニカの前に居る。

ノインさんが言った通り、三人はなにやら真剣な表情で話し合っていた。

さらに距離が近付いていくと、三人が離している内容が少しだけ聞こえてきた。

「私は、攻めるべきだと思いますが……」

「ルナ、無責任ですよ。確かにリターンは大きいですが……リスクも……ですよね? ジーク」

「……はい。悩みどころです」

ハッキリと姿が見えるぐらいには近付いたはずだが、三人はよほど真剣に相談しているのか、こちらに気付いた様子はない。

なんというか、真剣すぎて声をかけ辛いな……。

「お~い、ルーちゃん、リリアちゃん、ジークちゃん」

「「「フィーア先生!?」」」

俺がそんなことを考えているうちに、フィーア先生が一切躊躇なく切り込み、三人は驚いた様子でこちらを振り向いた。

「こんなところで会うなんて、奇遇だね。なにか真剣な顔で相談してたみたいだけど、どうしたの?」

さすがフィーア先生……コミュ力高い。俺も最近結構コミュ力ついてきたと思ってたけど、こういう軽快な切り込みを目の当たりにすると、まだまだだと思い知らされる。

明るい笑顔で告げるフィーア先生の言葉を聞き、リリアさんたちはほぼ同時に後ろにある白い箱の山を指し示した。

「……うん? なになに……『六王祭限定魔物くじ 1回・金貨一枚』?」

「ええ、コレをジークが引くかどうかで……」

フィーア先生が白い箱の山の前にある看板を読むと、リリアさんが口を開いて説明を始めた。

魔物くじ……ああ、なるほど、あの白い箱はランダムボックスと同じで使い捨てのマジックボックスなのか! にしても、とんでもない数……数千個、いや数万個はあるんじゃないかこれ?

しかも一回100万円ときたか……なんて高いガチャだ。

「ジークちゃんが?」

「実はジークは魔物を飼いたいみたいで……」

「ええ、ですが……ジークが可愛いと思う魔物はどれも予算オーバー……お嬢様がお金を貸すとも言ったんですが、ジークは出来れば自分のお金で買いたいらしいんです」

リリアさんの説明をルナさんが補足する。今朝会った時に、魔物を買うと意気込んでいたジークさんだが、どうやら魔物の値段が高くてなかなか手が出ないでいるみたいだ。

「……それで、探し回っているうちに偶然見つけたのがコレなんです」

「魔物くじ……引けばランダムに魔物が当たるってことですか?」

「ええ、正確には……『魔物の卵』が当ります」

「え? でも、確か卵って高いんじゃ……」

ジークさんが悩むような表情で呟いたので尋ねてみると、意外な言葉が返ってきた。

「はい、その通りです……だから、ですかね? この魔物くじには……外れがとても多いんです」

「外れ? ですか?」

「魔物の卵ではなく、飼育道具だったり模型だったり……卵が当たる確率は1割ほどらしいです」

「ふむ……」

ジークさんの説明を聞いて、俺は納得したように頷く。ガチャと考えれば1割は良心的な気もするが……一回引くのに金貨一枚と考えると、かなり高い買い物……ジークさんの用意したお金では、三回ほどしか引けない。

するとそこで、ここまで会話に参加していなかったノインさんが白い箱の山を見詰めながら口を開いた。

「……くじ、というからには……当りはかなりいい魔物ということですか?」

「はい、なんと……特賞は竜種の中で最も美しいと言われる『レインボードラゴン』なんです!」

「えぇぇ!? れ、レインボードラゴン? す、凄いね……」

「ええ、しかも一等も『ブラックメタルドラゴン』ですし、二等は『グラップテール』です!」

「……流石、マグナウェル様主催の祭りですね」

……うん、リリアさんが興奮しながら話しているということは、相当凄い魔物なんだろう。フィーア先生とノインさんも驚いてる……でも、よく知らない俺にはいまいち凄さが伝わってこない。

すると、そのタイミングでルナさんが俺の様子を察したのか、近付いてきた。

「レインボードラゴンは、とにかく希少な竜種です。現存する個体は『世界に5体ほど』と言われており、桁外れに高価です……まず売りに出ることはありませんが、出れば『白金貨1000枚』は軽く越えるでしょうね」

「そ、そんなに……」

「レインボードラゴンの尻尾には『至高の宝石』と呼ばれる『レインボーダイヤモンド』が生成されます。採取しても1年ほどで再び生成されるので……白金貨1000枚ならすぐに取り戻せるでしょうね」

「な、なるほど……」

「正直私も驚いています……レインボードラゴンの卵……希少なんてレベルではありませんよ」

う~む、どうやら相当凄い賞品らしい。だから、こんなに沢山の人が挑戦してるのか……どこの世界でも、ガチャというのは闇が深いものだ。

そんなことを考えていると、リリアさんとジークさんは再び困ったような表情を浮かべる。

「……当りを引ければ、ジークの予算でも……それこそ竜種を手に入れるのも不可能ではありません。ですが、外れると……」

「う~ん。確かに悩みどころだよね。ものすごい数だし……『よっぽど運がよくないと』……あれ?」

「「「「……運?」」」」

「……へ?」

フィーア先生が難しい表情で呟いた直後……全員の視線が俺に集中した。

「……どう思います? ルナ」

「ミヤマ様の運は人外のレベルだと認識しています」

「たしかに、ミヤマくんなら……勝算あるよね?」

「ええ、私も快人さんならいけるのではないかと……」

「……え? いや、えっと……」

あれ? これ、もしかして……いや、もしかしなくても俺が代わりに引くパターン? い、いやいや、流石にプレッシャーが大きすぎる!? だって、外れだったらジークさんの夢を壊しちゃうわけだし……。

俺が戸惑っていると、ジークさんが俺の前に来て、金貨を三枚差し出しながら深く頭を下げてきた。

「……お願いします。カイトさん……私に……力を貸してください」

「……ま、マカセテクダサイ」

……可愛い彼女の願いである。ここで応えないのは男が廃る。う、うん。最悪外れたら……自腹を切って追加で引こう。

拝啓、母さん、父さん――まさかの流れで、俺がジークさんの代理で魔物くじを引くことになった。正直尋常ではないプレッシャーである。神様お願いします。なんとか、ジークさんが喜んでくれる魔物を――引かせてください。