軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

さすがに想定外だ

目の前にそびえ立つ小さな箱の山……これ、崩れたら雪崩が起きそうだけど、その辺は大丈夫なんだろうか? いや、まぁ、そこは六王祭だし魔法的なアレコレで保護されているのかな?

さて、この手のくじというのはどうも穿った見方をしてしまう。この巨大な山の一番中心とか、手が届かない位置にある箱が当りなんじゃないかと……。

しかし、どうもこの魔物くじはマグナウェルさんが監修しているらしく、配置は完全にランダムらしい。

となると、誰でも特賞を手に入れられる可能性があるわけだが……まぁ、数万……或いは数十万の中で、特賞はたったの一個、まず当らないだろう。

俺が狙うのはこの山の中の一割……魔物の卵が入っているもの。出来ればジークさんが喜んでくれるものを引きたいが……。

リリアさんたちの視線を背負いつつ、俺は箱の山に近付く。完全にランダムで、箱の重量もランダムボックスなので変わらない。となれば、選んで取るという行為は無意味だろう。

こういうときは余計なことは考えずに、適当に……よし、コレだ!

とりあえずひとつだけ箱を取り、箱の山を囲むように配置されている係の人に箱を見せる。係の人が手に持っていた魔法具らしきものを俺に向けると、そこに『1』と表示された。

たぶん、不正防止用の魔法具だろう。このランダムボックスの反応を検知して個数を調べる感じかな? ともかく俺は金貨一枚を係の人に手渡してから、リリアさんたちの居る場所へ向かう。

ジークさんの予算は金貨三枚……つまりくじは三回ほど引けることになるのだが、卵が三つ当ったりしても困るだろうし、ひとつずつ持っていって中身を確かめるつもりだ。

希望的観測だが、この一個で魔物の卵が当たれば、金貨二枚は手元に残るわけだし、飼育費用を考えるとその方がいいだろう。

「……お待たせしました。どうぞ、ジークさん」

「は、はい」

俺の差し出したランダムボックスを緊張した様子で受け取りってから、ジークさんは目を閉じて深呼吸をする。

最近金銭感覚が麻痺しつつあるが、金貨一枚というのはジークさんにとってかなりの大金だ。いつか魔物を飼うことを夢見て、コツコツと貯め続けていたのだから、その緊張は当然のものと言える。

「で、では、開けます」

十秒ほど深呼吸をしたあと、ジークさんは周囲を見渡し、リリアさんたちが頷くのを確認してから、ランダムボックスを地面に置いて、軽く手で触れた。

すると眩しい光がランダムボックスから放たれ、それが収まると……そこには1mほどの巨大な卵が現れていた。

「お嬢様! これは……」

「ええ、このサイズは間違いありません! 『大型種』です!」

ルナさんとリリアさんが興奮気味に告げる言葉を聞くと、どうやらこの魔物の卵は大型種のものらしい。魔物は基本的に小型種より大型種の方が高い。

ちなみに、竜種はほとんど大型種に分類されるので、この卵はドラゴンの可能性もある……リリアさんが興奮するのは無理はない。

「カイトさん、ありがとうございます! 本当に、ありがとうございます!! このお礼は必ず」

「い、いえ、気にしないでください」

俺はむしろ、魔物の卵が引けたことにホッとしていた。あとは、ジークさんが気に入ってくれる魔物が生まれるかどうか……。

「で、では、続けて……『孵化』させますね」

「え? 孵化? そんなにすぐに孵化するんですか?」

「あっ、そっか、ミヤマくんは知らないよね。魔物の卵って言うのは少し特殊で、魔力を注ぐことで孵化するんだよ。そして、魔力を注いだ相手を親って認識するんだ。ちなみに、魔法が使えない人のために、孵化用魔法具なんてのもあるよ」

「……なるほど」

「まぁ、ベルちゃん……ベヒモスみたいに、卵生じゃない種類もいるけどね」

首を傾げた俺にフィーア先生が分かりやすく説明をしてくれる。魔力を注いだ相手を親と認識するか……なるほど、だから魔物の卵は育てやすくて人気なのか……。

俺が納得して頷くと、それを確認したジークさんが卵に触れる。リリアさんたちだけでなく、周囲の注目も集まる中で、ジークさんの魔力が注がれた卵は何度か発光し、殻にヒビが入り始める。

そしてしばらくすると、中から70cmほどの『ドラゴン』が顔を出し、ゆっくりと翼を広げた。

まるで夜空のような黒い体にエメラルドの如く輝くたてがみ……広げた翼は、濃く深い『虹色』で……黒い体と相まって、オーロラのように美しかった。

……これ、もしかして……。

「お、おお、お嬢様!? こ、ここ、これは、まさか!?」

「え、ええ……いえ、私も希少すぎて本物を見たことはないのですが……文献では、レインボードラゴンは『虹色の翼』を持つドラゴンだと……」

やっぱり、これって特賞のレインボードラゴン!? ま、マジで……。

「……違う」

「「「「「え?」」」」」

ルナさんとリリアさんの言葉を聞いてレインボードラゴンが当ったのかと思っていたが、直後にフィーア先生が真剣な表情で違うと呟いた。

「……え? フィーア先生……俺はよく知らないんですけど、これって、レインボードラゴンじゃないんですか?」

「……い、いや、レインボードラゴンなのは間違いないよ。だけど、その……普通レインボードラゴンって『白い体』をしてるんだよ。それに翼膜の色合いもここまで濃くハッキリとはしてなかった……」

「……つ、つまり?」

「……たぶん、だけど……『いまだかつて一度も確認されてないレインボードラゴンの特殊個体』だこの子……」

「「「「「えぇぇぇぇ!?」」」」」

拝啓、母さん、父さん――もちろん、いいものが引ければいいなぁとは思っていた。一発で魔物の卵を引けたのは、まさに僥倖……だけど、うん。史上初の特殊個体が出てきたのは――さすがに想定外だ。