軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

しっかりと話し合う必要がありそうだ

かつてないほどの羞恥プレイを、率先して行ってしまうという自爆をした後、俺は即座に逃げ出した。

そして出来るだけ人のいない方に、人のいない方にと考え……ようやく広場のような場所で一息ついた。

「……はぁ……アイシスさん、すみません。急に移動して……」

「……ううん……カイト……重くない?」

「いえ、ビックリするぐらい軽いです」

反射的にお姫様抱っこで連れ去ってしまったアイシスさんに謝罪をするが、アイシスさんは俺を咎めたりはせず、むしろ心配してくれた。

とはいえ、アイシスさんの体は本当に軽く……非力な俺でもお姫様だっこで走れるぐらいだ。いや、本当に比喩ではなく軽い。

いや、だって……体感だけど、アイシスさん30kgぐらいしかない気がする。食事も基本的に食べないって言ってたし、もしかすると人間とは多少体の造りが違うのかもしれない。

ともかく、ここまで来れば大丈夫だろう。先程の区画には近づかないようにしようと考えつつ、アイシスさんを降ろそうとすると、なぜかアイシスさんの手が俺の首の後ろに回された。

「……カイト……もう少しだけ……こうしてて……いい?」

「……は、はい」

「……ありがとう……カイト……大好き」

お姫様だっこの状態で、俺の首に顔を寄せて甘えてくるアイシスさんは殺人的に可愛らしかった。

しばらくお姫様抱っこして、アイシスさんが満足したところでゆっくりと降ろす。

「……そ、それじゃあ、この辺を回ってみましょうか? あっちにも少ないですけど、出店があるみたいですし」

「……うん」

先程の件と合わせて妙な気恥しさを感じつつ、アイシスさんを手を繋いで少し離れたところにある出店へ向かう。

ここは大きな通りからは外れており、あまり人通りは無い感じだが、それでも数点は店がある。

そのうちのひとつ、小さなアクセサリーなどが並んでいる店を通りががったところで、不意に声を掛けられた。

「おや、素敵なカップルですね! いまなら、お二人にピッタリの品――ふぎゃっ!?」

声をかけてきた『うしの着ぐるみ』の顔に、流れるように拳を叩き込んだ。

「ちょ、ちょっと、カイトさん!? いま、ゲンコツじゃなくてグーパンでしたよ!? 最近私の扱いが雑じゃないっすか? アリスちゃんは、可愛い恋人ですよ!?」

「……いや、というか、お前なにしてんの? 修復作業はどうした?」

「いやいや、アレは本体アリスちゃんの案件ですから。『出店用商売アリスちゃん86号』には関係ないんですよ」

「そ、そうか……」

うしの着ぐるみの馬鹿……もとい分体のアリスの言葉に、俺は呆れながらもとりあえず頷いておく。

確かに考えてみれば、あのアリスがこんな商売のチャンスを逃すわけがないか……出店用に分体のひとつやふたつ用意しててもおかしくないよな。

86号って番号が気になるけど、まさか都市のあちこちに80人以上の着ぐるみが居るんじゃないだろうな? ま、まさかな……。

「……シャルティア……私達にピッタリなものって……なに?」

「ふふふ、コレです!」

「……なに……これ?」

「これは異世界から伝わった由緒正しい品です」

重々しい口調でアリスが取り出したのは……神社とかで売ってるお守りだった。いや、まぁ、確かに異世界の文化と言えば文化だけど……。そのお守りに関係する神様、こっちに居ないからね? 御利益とかまったく無さそうなんだけど?

「なんと、コレを持っていると……『恋人と超ラブラブ』になれるんです!」

……『商売繁盛』って書いてあるんだけど?

「なっ!? ……か、買う!」

「……アイシスさん」

「さらにさらに、この水晶玉も買うことで、効果は驚きの『三倍』に!」

「……そ、それも……買う!」

「まいどあり~では、金額の計算を……」

その三倍というのは、一体なにを基準にした数値なんだ? いや、まぁそれはいいとして……。

「……アリス。一言だけ言っとくぞ?」

「……へ?」

「純粋なアイシスさんを騙して、高い買い物させたら……『当分お前とは口きかないからな』……」

「……や、やだな~アイシスさん! ジョークですよ! アイシスさんとカイトさんにこんなもの必要ありません!! こんなおもちゃなくても、ずっとラブラブです!! なんの心配も要りません!!」

「……え? ……でも……」

俺の言葉を聞いたアリスは、着ぐるみの状態でも分かるほど慌てた様子で、持っていた水晶玉を叩き割った。

「いま思い出しましたけど! コレ商品じゃありませんでした!! だから売れません! 絶対に売れません!!」

「……カイトと……超ラブラブ……」

「そういえば! 実は、最近作った『1/5サイズのカイトさんぬいぐるみ』があるですけど!」

なにかいま、聞き捨てならない商品名が聞こえた気がするが、それより早く出店の前には山のような白金貨が出現した。

パッと見1000枚はありそうな白金貨を出したのは、もちろん……。

「買う! 全部買う!!」

「……い、いや、これ試作品なんでまだひとつしかないですし……値段は300Rですから、その白金貨ひっ込めてください」

「……うっ……じゃあ……ひとつ買う」

「はいはい、どうぞ~」

「……ありがとう……お釣り……いらない」

もの凄い勢いで買い占めようとしていたアイシスさんだが、ひとつしかないことを聞くと、それを受け取って白金貨一枚をアリスに渡した。

3万円の商品に1000万……もしかしてだけど、アイシスさん。白金貨以外の硬貨持ってない?

い、いや、この際それはどうでもいい。問題はそのデフォルメされた俺のぬいぐるみだ。

両手で幸せそうにそれを抱きしめているアイシスさんから取り上げるのは無理だが、ちょっとこの件に関しては諸悪の根源と話し合う必要がある。

「……アリス……ちょっと、後で話がある」

「……え?」

「正座する準備してからこい」

「…………え?」

拝啓、母さん、父さん――なんというか、やっぱりアリスが登場すると途端に騒がしくなる。まぁ、そういう馬鹿なところもアリスの魅力だとは思うけど、俺のぬいぐるみだの等身大人形だの作ってる件に関しては――しっかりと話し合う必要がありそうだ。