軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

認識が噛み合わなかった

アリスとアイシスさんが雑談をしてるのを見ながら、俺はガイドブックを見て次にどこに行くかを考えていた。

腹ごなしもかねて、なんかアトラクション的なものがあるところがいいな。かといって、激しい運動系のは俺が付いていけないし……出来れば、祭りの屋台みたいなものがあればいいんだけど……。

そう考えながらガイドブックのページをめくっていると、ふとある文字が目に止まった。

輪投げか……懐かしい。ここからもわりと近いし良さそうだ。けど、地図を見る限りやたら広いスペースになってる気がする。よっぽど巨大な輪投げなのか?

「……アイシスさん、次はこの輪投げをやりに行きませんか?」

「「なっ!?」」

「……え?」

ごく普通に提案したつもりだったが、なぜかアイシスさんとアリスは驚いた様子で俺の方を向く。アイシスさんにいたっては、目が大きく見開かれ動揺しているように見えた。

「……駄目……カイト……危ないよ」

「……あ、危ない? 輪投げが、ですか?」

「カイトさん……そんな装備じゃ『命にかかわります』。せめてこの甲冑を……」

「ノインさんが着てるみたいなやつでてきた!?」

「素材は『オリハルコン』です。これなら、なんとか……」

え? オリハルコンの全身甲冑? なんでそんな伝説の装備みたいなのが登場するの?

「え、えっと……ふたりとも、輪投げだよ? なんで、そんな決戦に赴くような……」

「……カイトの魔力じゃ……『WANAGE』は……難しいと思う」

「そうですね。素人同士の戦いならともかく……せめて『音速機動』ぐらいは出来ないと、『ランカー』とは戦えませんよ」

「音速機動!? それにランカーって……え? 輪投げにそんな、ランキングみたいなものが存在するの?」

な、なんか話の流れがおかしいぞ? 輪投げだよね? あの棒に輪っかを投げて引っかける遊びだよね?

もしかして、俺が知らないだけで世の中には輪投げのランキングとかが、当り前に存在してるのか……いやいや、そんな馬鹿な。

「……プロの『ナゲリスト』達は、一筋縄ではいかない強敵ぞろいですよ」

「なんか知らない単語が次々出てくるんだけど!? ちょっと、まって!? 輪投げの話だよね?」

「……うん……」

「ええ、『超エキサイティングバトルスポーツWANAGE』の話ですよ」

「……バトルスポーツ!?」

厳密に輪投げがスポーツかどうかは置いておくとしても、どこにバトル要素が? あれかな? 点数を競い合うとか、そういうことなのか?

「……WANAGEは……互いに15発ずつ……輪っかを持って……戦う……相手の防御を……掻い潜って……得点を多く取ったら……勝ち」

「……」

「輪っかから『衝撃波を放つ』のは初歩。中には『残像で相手を撹乱』したり『投げた輪っかを分裂』させたりといった、上級テクニックも存在します」

「……俺の知ってる輪投げと違う……」

う、うん。分かった……いやまるでわけは分からないけど、この世界の輪投げは俺の知ってるものとは違うことは分かった。

ともかく非常に危険なアトラクションらしいので、俺が挑戦するのは自殺行為らしい。

「……じゃ、じゃあ、輪投げは止めて……金魚すくいとか?」

「「金魚すくい!?」」

「……」

うん、もうなんとなく分かった。その金魚すくいも危険なんだね。確かにガイドブックで見る限り、こっちもかなり巨大なスペースだし……アレでしょ? 金魚が滅茶苦茶デカイとか、そういう感じでしょ?

「……な、なら射的は?」

「……でも……カイトは……『魔力弾』……使えないよね?」

「仮に使えたとしても、『空中戦』に入ると、得点するのは難しいでしょうね」

「……か、型抜き……」

「……それなら……大丈夫」

「ですね。『障害』はアイシスさんが居れば安全でしょうし、後は手先の器用さですね」

おかしいな、さっきからひとつとして俺の知ってるものと、イメージが一致しないんだけど? やっぱりものによっては、クロが変な知識を持ってたみたいに、妙な伝わり方をしているのかもしれない。

「……ヨーヨー釣りは?」

「「ヨーヨー釣り?」」

無いのか!? ヨーヨー釣り……なんで金魚すくいや型抜きまであるのに、ヨーヨー釣りは伝わってないんだ!?

「……いや、うん……えっと……なんか安全なアトラクションは?」

「そうですね~う~ん……」

「……シャルティア……『リングターゲット』とか……どう?」

「ああ、いいですね! アレなら、子供でも出来ますね!」

もう自分で考えるのは止めにして、お勧めのアトラクションを聞くことにした。

するとリングターゲットという聞き覚えの無い名前が登場する。名前を聞く限りでは、的当てのようなものだと思うけど……。

「リングターゲット?」

「ええ、わりとお祭りでは定番の遊びなんですけどね。名前の通り、リングを使います」

「……少し離れた場所から……リングを投げる」

「うん? あれ?」

「ターゲットは点数の付いたポールですね。10点、30点、50点、100点と4種類です」

「……リングを投げて……ポールに引っかけて……設定された得点以上なら……景品が……もらえる」

「……」

ふむ、つまり、要約すると……少し離れたところから、点数の付いたポール……棒に、リング……輪っかを投げて引っかける。

「……輪投げじゃねぇか!?」

「なに言ってるんすか、カイトさん? WANAGEとは別物ですよ」

「……うん」

「いや、だから、そうじゃなくて……ああ、もうっ!?」

伝わらないこの気持ち……うん、もう、諦めよう。

拝啓、父さん、母さん――俺は今日、この世界に来て初めてある事態に遭遇した。本来ならもっと序盤で遭遇するはずの問題だが……。そう、文化の違いにより、いくら話しても――認識が噛み合わなかった。