軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

出歩けないレベルなんだけど!?

デコピン(強)の衝撃からも復活し、改めてアイシスさんと一緒に祭りへ戻ってきた。

「……なんか、変にドタバタしたせいで喉が渇きましたね。なにか飲みませんか?」

「……うん……あそこに……出店……ある」

「おっ、じゃあ、俺が買ってきますよ。アイシスさん、どれがいいですか?」

アイシスさんが指差した先には、果物のジュースらしきものを売っている店があった。パッと見た感じ、ジュースの種類を書いたお品書きもここから見えるし、容器もサイズを分かりやすいように並べてある。

アイシスさんの分も買ってくるつもりで声をかけると、アイシスさんは少し考えるような表情を浮かべてから口を開く。

「……カイトは……どれにするの?」

「俺は、えっと……リプルのジュースですかね」

「……じゃあ……アレで……買ってきて欲しい」

「へ? え、えっと、アレって言うと、もしかして、もしかすると……一番右の『大きなカップにストローがふたつ』のやつですか?」

「……うん……カイトと……一緒に……飲みたい」

アイシスさんが希望したのは、どう見てもカップル用の容器だった。う、うん、いや、まぁ……カップルであることは間違いないわけだし、アレを選択すること自体には問題はない。

しかし、この場は祭りの真っただ中……人は非常に多い。な、なんか、バカップルみたいで恥ずかしい。

「……カイトは……私と飲むの……」

「嫌じゃないです! すぐ買ってきます!」

「……あっ……うん!」

だがしかし、そんな俺の羞恥心なんて、アイシスさんの笑顔の前には無力である。俺の恥ずかしさなんて、アイシスさんが喜んでくれることを考えれば安いもの……天秤にかける必要すらない。

俺は即座に了承を伝え、出店でリプルのジュースを購入する。もちろん容器はアイシスさんが希望したカップルサイズのものだ。

「買ってきましたよ」

「……ありがとう……嬉しい」

「え、えっと、じゃあ、飲みましょうか?」

「……うん!」

非常に喜んでくれるアイシスさんを見て、俺は少し気恥ずかしくなりつつも、片方のストローに口を近づける。

すると、アイシスさんも同じように動き、俺達の顔が近付いていく。

な、なんというか……キスだってしたことある筈なのに、こういういかにもカップルみたいなイベントは、キスとはまた違った恥ずかしさがある気がする。

顔が近付いていながら、キスの時のように目を瞑るわけでもないので、アイシスさんの顔がすごくよく見える。

艶のある柔らかそうな唇がストローを咥え、ルビーのように美しい瞳が俺の目を真っ直ぐ見つめてくる。

向い合うような形でジュースを飲み始めると、アイシスさんは本当に嬉しいみたいで、頬を微かに染めて微笑みを浮かべていた。

その顔を間近で見て、また妙に胸が高鳴るのを感じる。

しばらくして、容器の中のジュースを飲み終えてからも、互いになかなかストローから口を離さない。

アイシスさんが口を離してから、俺も続こうと思ってはいるが……どうやらアイシスさんも同じことを考えているみたいだ。

互いに動きだすタイミングを見失い。言葉を発することもなく見つめ合う。

こうして間近で見ると、アイシスさんは改めて絶世の美女だということを実感する。雪のように白い肌も、儚げな雰囲気も、全てがアイシスさんという存在を引き立てているような、そんな気さえした。

そして、見つめ合う視線に、少しずつ熱が籠っていくのを感じる。アイシスさんの瞳からは、俺に対する溢れんばかりの愛情が見て取れ、アイシスさんを愛おしいと思う感情がどんどん強くなる。

果してそれは、どちらからだったのだろうか? 自然とストローを咥えていた口が離れ、アイシスさんとの距離がさらに近付く。

華奢な手がゆっくりと俺の背中に回され、俺もアイシスさんの小さな背中に手を回す。

少しずつだが確実に……どちらともなく顔を近付け……そして、俺とアイシスさんの距離はゼロになった。

いま、この瞬間、まるで世界に二人だけしか存在しないように感じた。腕に抱くアイシスさんの体から、少しずつ体温が伝わり、さらに強くその体を抱きしめようとして……地面に落ちた容器の音で我に帰った。

「……」

重なっていた唇を離し、俺はどんどん血の気が引いていくのを実感しながら、壊れたブリキ人形のような動きで周囲を見渡す。

見渡す限り、人、人、人……遠巻きに円を作り、驚くほど大勢の人達がこちらを食い入るように見つめていた。

改めて確認するが……ここは六王祭という大きな祭りが行われる会場であり、人通りはとてつもなく多い。

つまり、どういうことか? 俺とアイシスさんは、公衆の面前で抱き合い、熱い口付けを交わしたわけで……。

「あっ、あぁぁぁ……あ、アイシスさん!?」

「え? きゃっ……か、カイト?」

血の気の引いていたはずの体から、血液が爆発するような熱さと恥ずかしさが込み上げてきた。

……そこからの俺の行動は早かった。流れるようにアイシスさんの体を、お姫様抱っこで担ぎ上げ……過去類を見ない速度で、その場から走り去った。

拝啓、父さん、母さん――あぁぁぁぁ!? や、やってしまったぁぁぁぁ!? つい、アイシスさんが愛しくて、いい雰囲気になって……うわぁぁぁぁぁ!! やばい、尋常じゃないほど恥ずかしい!? も、もうこれ――出歩けないレベルなんだけど!?