軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

遊びに来たいって思えたよ

リグフォレシアに来て四日目の朝。俺はジークさんと一緒に台所に立っていた。

「……どうですか? ジークさん?」

「ええ、上手ですよ。ただもう少し、焼き色を付けた方が……」

「成程」

ジークさんにアドバイスを貰いながら、朝食の調理を進めていく。

現在作っているのは、目玉焼き……だが、卵がなんか違う。物凄く大きくて、なんていうか、まるでダチョウの卵みたいだ。

現在俺とジークさんが料理をしているのは、レイさんとフィアさんへのお礼みたいな感じだ。

正直俺の料理の腕は、本当に素人同然でフィアさんの料理の腕には遥かに及ばないと思うが、朝食を作ることを提案するとレイさんとフィアさんは本当に喜んでくれた。

まぁ、例によって例の如く、「夫婦の共同作業」がどうだとかおおはしゃぎして、ジークさんに叱られていたのはご愛敬だろう。

なんだかんだで、たった四日の筈なのに、随分いろいろな事があったなぁ……宝樹祭でもそうだったけど、リグフォレシアに来ると一日が濃い気がする。

初日は俺がリグフォレシアで有名になってしまっていて、本当に物凄い歓迎の雰囲気で驚いたものだ……後から聞いた話だが、俺が来た夜に街をあげての大宴会をしようとエルフ族のお偉方が企画していたらしいが、それはレイさん達が断っておいてくれたらしい。本当に助かった。

そして二日目は、なんと言ってもジークさんとの関係が大きく進展し、恋人同士になった事が印象深い。

あの時はどう答えて良いか凄く迷ったものだが、今こうしてジークさんと並んで料理をしていて……穏やかな幸せを感じている。

本当にジークさんみたいな素敵な女性と恋人になれて、俺は幸せ者だと思う。

三日目は、とにかくレイさんとフィアさんが大暴走だった。

俺とジークさんが恋人になった事で、二人のタガが外れたのか……服装をペアルックにしようとしたり、街中に自慢してこようとしたり、わざとらしく俺とジークさんを二人っきりにさせようとしたり、一緒にお風呂に入れさせようとしたりと物凄くグイグイきていた。

まぁ、その暴走した数だけジークさんから鉄拳と説教を受けていた訳だけど……あの二人の事だから、懲りたりはしないと思う。

本当にこの四日間は一日一日が濃厚で、今日帰ると思うとなんだか寂しい気分になってしまう。

「おぉ、よく出来てるね」

「本当、美味しそうね」

半分以上ジークさんのお陰ではあるが、なんとか見栄えよく朝食が出来上がり、テーブルの上に並べるとレイさんとフィアさんが楽しそうに笑顔を浮かべる。

そして四人でテーブルにつき、朝食を食べ始める……うん、まぁまぁの出来だと思う。

「へぇ、ミヤマくんも料理が上手なのね」

「いや、ジークさんが居なければとてもこんなには……」

「そんなことないですよ。カイトさんは器用ですから、どんどん上達していますよ」

「ありがとうございます」

穏やかに褒めてくれるフィアさんとジークさんにお礼を言って、そのまま雑談を交えながら朝食を食べる。

「……そう言えば、二人はいつ頃王都に戻るんだい?」

「えっと、昼ぐらいの予定ですけど……転移魔法の魔法具で帰るので、時間は割と調整がききます」

「え? ミヤマくん、転移魔法の魔法具を持ってるの? 凄いわね……ここから王都まで転移出来るレベルとなると、白金貨10枚以上……かしら?」

「再使用可能時間で変動するけど、下は1200000Rあたりからが相場だが、それ以上に転移魔法の術式は複雑で難しいからね。ツテが無いと中々手に入らないんで貴重だね」

やっぱり転移魔法の魔法具というのは非常に高価らしく、リグフォレシアと王都を行き来出来るものは最低でも1億2千万円以上……俺が腕に付けてるのは、どれぐらいになるのやら……

「えっと、俺は知り合いに作ってもらったので……」

「「知り合い?」」

「クロ……冥王です」

「「ぶっ!?」」

俺の転移魔法の魔法具はクロから貰った事である事を説明すると、レイさんとフィアさんは大きく目を見開いて驚愕する。

そしてしばらくそのまま硬直していたが、少しして弾かれたように動きだした。

「……い、いや~流石はミヤマくん。まさか冥王様に魔法具を作って頂いたとは……」

「そ、そうね。冥王様と親しい……恋人だって聞いてはいたけど、改めて驚いてしまうわね」

「ちなみに、父さん、母さん。今カイトさんが左腕に付けているブレスレットが、その魔法具です」

「……え? いや、なにを言ってるんだジーク? いくら冥王様の術式が、無駄なく素晴らしいものだとしても……転移魔法の消費魔力は大きい、そんな小さな魔水晶ではとても……」

信じられないと言いたげなレイさんの思いはよく分かる。だって、確かこの魔水晶って、全く新しい性質を持った物質らしいからね。

レイさんの反応が正常である。シロさんが規格外なだけ……

「ちなみに、その魔水晶は、カイトさんが創造神様から下賜されたものです」

「……は? い、いや、な、なにを馬鹿な……」

「そ、そうよ、ジークちゃん……創造神様が何かを下賜するなんて、今まで聞いた事……」

「……信じられない気持は分かります」

「「……マジ?」」

「はい」

「「えぇぇぇぇ!?」」

創造神であるシロさんが人間に何かをあげるというのは、異例中の異例……というか過去に前例が無いらしい。

なんかこうして物凄く驚かれているのを見ると、シロさんは改めて凄い存在なんだと実感するが……やっぱり俺にとっては、ちょっと天然の凄い方ぐらいのイメージしかない。

(私もお土産はフルーツスティックで良いです)

なんで今それ言った!? 昨日お土産買いに行ったの知ってるでしょ!? なんでその時に言ってくれなかったんですか!!

(さあ?)

……訂正しよう。物凄く天然の凄い方だ。

朝食の席で色々慌ただしくなり、説明とかしていると、いつの間にか帰る予定の時間が近付いて来ていた。

「それじゃあ、レイさん、フィアさん、お世話になりました」

「ああ、私達も楽しかったよ」

「ええ、またいつでも遊びに来てくれて良いからね」

「……ジークとも正式に付き合った訳だし、私達は君の事を家族のように思っている。遠慮などせず、気軽に顔を出してくれ」

「……はい。ありがとうございます」

ふざけたり暴走したりする所はあるけど、やっぱりレイさんもフィアさんも凄くいい人だと思う。

暖かく響く言葉に少し目尻が熱くなるのを感じながら、深く頭を下げてお礼の言葉を告げる。

そして玄関まで付いて来てくれ、大きく手を振る二人に見送られながら、ジークさんと共に家を後にした。

ちなみに、シロさんへのお土産はちゃんと、帰る前に買う事にした……なんだかんだでいつもお世話になってる訳だし、当人からの要望があるなら買わない理由はない。

ただ、これ、どうやって渡すんだろう? シロさんがまた人界に来るって事かな?

(では、神界へ招待します)

へ? あ、ちょっ……いきなりなにを? てか、そんな簡単に行けるものなんですか?

(時空神に手配をさせます)

そしてやっぱり、その手の役割を丸投げされるのはクロノアさんらしい……本当に不憫である。

拝啓、母さん、父さん――こうして、俺の二度目のリグフォレシア訪問は幕を閉じた訳だけど……大切な思い出が沢山増え、心から、またここに――遊びに来たいって思えたよ。