軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

フェイトと旅行④

コテージに戻り、フェイトさんが昼食を用意してくれるとのことなので、俺は静かに料理の完成を待っていた。

フェイトさんに料理経験はなく、一応先ほど「レシピとか料理本とかは?」と尋ねたのだが、「そんなのないよ。まぁ、なんとかなるでしょ」と力強い返事で失敗フラグを建てていた。

うん、覚悟を決めよう。なによりも面倒くさがりなフェイトさんが料理を作ってくれるということが素晴らしいのであって、味は二の次でいいだろう。

そんなことを考えていると、十分もしないうちにフェイトさんがキッチンから皿を手に出てきた。

「できたよ~」

「え? 早くないですか?」

「ああ、一部時間操作したしね。はい、どうぞ」

そう言いながらフェイトさんが俺の前に置いてくれたさらには……綺麗な焼き色のオムレツ……いや、オムライスが乗っていた。

「お、美味しそうですね」

「なかなかいい出来でしょ、あっケチャップでハート書いてあげるよ……はいっ、これで完成!」

「それじゃあ、いただきます」

意外ではあるが、予想とは違って普通に美味しそうな見た目だ。少なくとも焦げていたりだとか、そんな感じはまったく無く綺麗に作れているように思える。

フェイトさんがケチャップを付けてくれたのを確認して、一口食べると……。

「……美味しいです。卵もふんわりしてますし、中も具沢山で……普通にというか、かなり美味しいですね」

「私もなかなかやるもんでしょ。まぁ、美味しかったんならよかったよ」

想像よりも遥かに美味しいというか……これたぶん俺が作るより上手いと思う。中のチキンライスの味もぼやけずしっかりしているし、卵の焼き加減なんて本当に絶妙だ。味付けも薄すぎず濃すぎず丁度いい。

「フェイトさんって料理したことないんですよね? え? それでこんなに美味しく……」

「ふふふ、カイちゃん。私は最高神だよ……やればできるの、やらないだけでね」

なるほど基本的にハイスペックだからか、それにしても料理がおいしいのもそうだが、料理のチョイスが意外だった。

いや、たしかにオムライスは比較的簡単に作れると言っていい料理だが、ご飯自体がマイナーなこの世界でかつほぼ食事をしないフェイトさんがオムライスという選択をしたことに驚いた。

「というか、オムライスなんてよく知ってましたね?」

「なんかどっかで聞いた覚えがあるんだよね。まぁ、それはいいじゃん! カイちゃん、せっかくだし私が食べさせてあげるよ。はいっ、あ~ん」

「え? あ、はい……あーん」

笑顔でオムライスを食べさせてくれるフェイトさんの表情は、なんだかいつもより少しテンションが高く、楽し気な感じがした。

快人とフェイトの旅行より数日時は遡り、その日アリスの雑貨屋に訪れていたフェイトは、アリスに対してこう切り出した。

「ねぇ、シャルたん……料理教えてくれない?」

「え? なにいきなりらしくないこと言ってんすか? 熱でもあります?」

「いや、私も言ってて結構違和感あったけど……とりあえず、一品教えて欲しいんだよ。カイちゃんが喜ぶ料理で……あんま作るのが面倒じゃないやつ」

「……最後に付け加えた言葉はフェイトさんらしいですね」

筋金入りの面倒くさがり屋であるフェイトが料理を覚えたいというのは、長い付き合いの親友であるアリスにとっても驚くべき発言だったようで、どことなく驚いたような表情を浮かべていた。

しかし、特にその願いを断る理由もなく、アリスはフェイトに料理を教えることになった。

ただそれでも、途中で面倒くさがって止めるかとも思っていたが、フェイトは意外にも真面目に料理を行っていた。

元々スペック自体は非常に高いため、アリスが一度やり方を教えればすぐに出来るようになり、一通りの指導を終えるころにはかなり完成度の高い品が作れるようになっていた。

「……こんだけ作れれば十分だと思いますけど……本当に、どうしたんすか?」

「いや、別に大した理由は無いんだけどさ~今回はカイちゃんがいろいろ準備してくれたみたいだし、ほら、私の方もなんかしてあげたいじゃん」

「それで、料理っすか……けど、フェイトさんなら権能使えば、わざわざ練習しなくても料理はできるでしょ?」

そう、フェイトには運命を司る権能があり、それを使えば『上手く料理ができる未来』などを確定させることも出来る。

そんなアリスの問いかけを聞いて、フェイトは苦笑を浮かべながら言葉を返す。

「そりゃできるよ。美味しい料理が出来る未来を確定させたりとかね。でもそれってさ、つまりは料理の作り方もなにも知らない私が、『適当にやったら偶然美味しくできた』って結果になるだけでしょ……なんか嫌じゃん、そういうの……別に他のことなら適当でもいいけどさ、カイちゃんにしてあげることが適当なのは、なんかやだなぁってね」

「……なるほど」

「いやさ、本当に私らしくないんだけどね。けどまぁ、カイちゃんのために頑張るのは、別に面倒だとは思わないんだよね……なんてね」

そう言って苦笑するフェイトは、言葉通り快人のために料理の練習をするということを楽しんでいるように見え、フェイトをよく知るアリスはその変化を感じ、微笑まし気な表情を浮かべていた。