作品タイトル不明
フェイトと旅行③
釣り上げた巨大魚は食用には適さないということでリリースし、その後はフェイトさんと共に湖の近くにある大きな木の下に移動して座る。
のんびりするという本来の目的と相反する魚との激闘があったので、少々休憩を兼ねてという感じだ。
まぁ、釣りに関しては大きな魚を釣り上げたので十分満足である。
フェイトさんが巨大化させた宙に浮かぶクッションに座り、先ほどまでと同じようにお菓子を食べながら雑談する。
少し固めのクッションに変更してくれたみたいで、まるでソファーのような座り心地が素晴らしい。
「ん~木陰もいいね。昼寝したくなっちゃうよ」
「たしかに気温もいい感じですしね。まぁ、寝るとちょっともったいない気もしちゃいますけどね」
「分かるなぁ。ホントいい場所だよね。カイちゃんはどうやってここ見つけたの?」
「あ~えっと、この雑誌に載ってたんですよ」
マジックボックスから高級観光地特集が載っている雑誌を取り出すと、お菓子が乗っているのとは別のテーブルが現れた。
たぶんその上に広げて欲しいということだと分かったので、該当のページを開いてテーブルの上に置く。
「へ~なるほど。綺麗な絵も載ってるし、久しぶりに見たけど最近の雑誌はずいぶん華やかなんだね~」
「フェイトさんは、あんまり本とかは読まないんですか?」
「う~ん、ほぼ読まないね。前に雑誌呼んだのも、だいぶ前だしね。久しぶりに見て見ると面白いね~」
「結構いろんな観光地が載ってますけど、なんとなく他の観光地はフェイトさんは面倒くさがりそうだなぁって」
「うん。さすが、カイちゃん。あんまゴチャゴチャしてるとこは面倒だよね~」
クッションに寝っ転がったままで雑誌を見ているフェイトさんは、なんというか完全にくつろぎモードである。
ふたりでひとつの雑誌を覗き込んでいるという関係上、結構体が近くなるし、なんならフェイトさんの長い髪が手などに触れていたりするので、結構ドキドキする。
「うん?」
「ああ、いえ、この後はどうしようかなって」
不意にフェイトさんが不思議そうな顔でこちらを振り返ったので、少し慌てながら言葉を返す。
「あ~そうだね。もう釣りするって感じじゃないし、室内に移動する? テラスみたいな場所もあったっけ? そこで遊ぶのもいいね」
「それもいいですね。でも、そろそろいい時間なので先に昼食ですかね」
「へ? あっ、そっか……いや、私は普段食べないからうっかりしてたよ」
そろそろ昼時なので昼食の用意をと考えていたが、基本的に食事はしないフェイトさんにはお昼時という発想があまりなかったみたいで、一瞬キョトンとした表情を浮かべていた。
「まぁ、用意といってもいろいろ買ってきてますから、すぐに終わるんですけどね」
「ふむふむ……アレだよね。確かコテージには食材も用意されてるんだっけ?」
「ええ、最高級の食材が備え付けの大型マジックボックスに保存されていて、そこから自由に出して食べていいみたいですよ」
コンセプトが静かな空間でのんびりと過ごすことなので派手さはないが、それでもこの観光地は超が付く高級観光地なので、そう言った細かな部分へのサービスは沢山ある。
コテージにはワインセラーとかもあって、自由に飲んでいいみたいだし、使用後に清掃と補充が入るので後片付けとかも必要ない。
用意されている食材や、家具の類も最上級のものばかりだし、高級な魔法具も多数備え付けられている。
俺の言葉を聞いたフェイトさんは、なにやら少し考えるような表情を浮かべて沈黙する。なにか食事のリクエストでもあるのかと首を傾げつつ待っていると、少ししてフェイトさんが口を開いた。
「……ねぇ、カイちゃん。せっかくだしさ、お昼ご飯、私が作ってあげよっか?」
「え? どうしたんですか、フェイトさん……物凄くらしくないこと言ってますよ」
「いや~私も自分で言っておきながら、結構違和感あったね」
筋金入りの面倒くさがりであり、なおかつ食事を必要としないフェイトさんに料理という言葉は、失礼だけど似合わない。
というか、本人も似合わないことを言っている自覚はあるのか、なんか微妙そうな顔をしていた。
「いやさ、今回いろいろ企画してくれたのもカイちゃんだし、お菓子とかもカイちゃんが用意してくれたわけじゃん。私の方もなにかしてあげたいな~って思ったわけだよ」
「フェイトさん……」
「まぁ、それにのんびりするとは言っても、恋人らしいこともしたいしね。だから、私がお昼を作ってあげるよ。簡単なものになるとは思うけどね」
そう言ってニッコリ笑うフェイトさんを見て、こちらも幸せな気持ちになる。こちらのためになにかをしようとしてくれているという、その気持ちそのものがとても嬉しい。
「……ちなみにフェイトさん、料理経験は?」
「逆に聞くけど、あると思うの?」
「ですよね」
「まぁ、なんとかなるでしょ……たぶん」
うん、なによりもフェイトさんの気持ちが嬉しい。たとえどんな料理が出てきても、しっかり完食しようと、俺はそう心に誓った。