作品タイトル不明
フェイトと旅行②
フェイトさんとお菓子を摘まみながら楽しく雑談しながらの釣り、正直いい天気の大自然の中でのんびり他愛のないことで盛り上がれている時点で十分幸せなので、魚が釣れる必要はない。
しかしまぁ、せっかく釣竿とかも買ったんだし、一匹ぐらい釣れたらいいなぁ……。
「うん? いま、竿が動いたような――うぉぉっ!?」
ピクッと釣竿が動いた気がしたので、手を伸ばして釣竿を持った瞬間、ものすごい引きが襲い掛かってきた。
釣竿は折れるんじゃないかというほどしなり、気を抜けば竿ごと持っていかれそうな凄い力で引っ張られる。
えぇぇ、な、なにこの引き!? アニマと一緒にやった時と全然違うんだけど……こ、これもしかして、かなり大物なんじゃ……。
「くっ、うっ……つ、つよっ」
「お~これ、結構凄いのが釣れるんじゃない? カイちゃんふぁいと~」
大物ってこんなに凄い引きなのか……というか、俺は釣りに関しては素人もいいところなんだけど、こんな凄まじい引きの魚を上手くあしらうようなテクニックないよ!?
こ、これ、糸とか切られるんじゃ……というか、引きが強すぎてリールを巻けないんだけど……ど、どうすればいいんだ?
「フェ、フェイトさん、これって、ここからどうすればいいと思います?」
「え? 分からないけど、魚疲れさせたりとか、そんなんじゃないっけ?」
「あ、あぁ、そういえば、どこかでそんな話を聞いたような……な、ならしばらくこのまま持ちこたえればいいんですかね」
たしかに、魚を疲れさせてから糸を巻くみたいなのはどこかで聞いたような気がするし、このまま持ちこたえれば動き回っている魚も疲労するはずだ。
釣竿はせっかくだからとかなりいい値段のやつ買ったから、たぶん折れたりはしないと思うけど……糸はこれ、無理なんじゃないかな? いまのところ切れてないけど……。
「ぐっ、左右にかなり動いて――ッ!?」
そんなことを考えていた直後、魚が水中を左右に動いたことで、横方向に力がかかってグラっと体のバランスが崩れるのが分かった。
足の力が一瞬抜け、勢いよく引っ張られる形で湖に向かって体が傾く。
「……よっと」
落ちると思った瞬間、スッと横からフェイトさんが片手を俺の胸の前に差し出して支えてくれた。
……凄いなこれ、こんな細い腕なのに、完全に固定された鉄の棒かと思うほどの安定感なんだけど、さすが最高神。
「あ、ありがとうございます」
「まぁ、焦らずじっくりやってよ。頑張ってるカイちゃんはカッコいいし、私はのんびり応援してるからさ」
「……手伝ってはくれないんですか?」
「いや、私が手を出しちゃ面白くないでしょ。まぁ、いまみたいに危なそうなら助けるから、安心して頑張れ~」
必死に魚と格闘する俺とは対極に、フェイトさんはゆる~い感じだ。まぁ、たしかにフェイトさんが参加すれば、一瞬で釣れてしまうだろうし……いまみたいにサポートはしてくれるみたいなので、頑張ってみよう。
「……ああ、糸も『切れないことにした』から、大丈夫だよ~モグモグ」
「お菓子食べてるっ!?」
……う~ん、たぶん運命の権能を使ったんだろうけど、糸は切れない。バランスを崩したらフェイトさんが助けてくれる。
なるほど、これならド素人の俺でもこの大物を釣り上げることが出来そうだ。というか、失敗するほうが難しい……フェイトさんの言う通り、焦らず確実に行くことにしよう。
そのまましばらくの間、フェイトさんの声援を聞きながら魚と格闘し、ついに釣り上げることに成功した。
「つ、釣れたぁ……」
「お~凄いね。1mぐらいあるんじゃない?」
「いや、本当に凄い大物ですね。どう考えても、用意してるバケツに入らないですね。えっと、マジックボックスに……」
釣り上げた魚は本当に引きの通り凄まじいサイズだった。見た目はブラックバスとかに似てる気がする。
大きさはフェイトさんの言う通り1mぐらいあり、本当に圧巻である。まさか、自分の釣竿を買って初めての釣りで、こんな大物が釣れるとは……。
「ねぇ、カイちゃん。この魚って食べれるの?」
「いや、俺にはサッパリ……あんま、食用っぽい見た目じゃない気はしますけど……」
「私も魚とか知らないしなぁ……よし、ちょっと待ってね。えっと……あっちかな? あっちっぽいね」
「うん? なにがですか?」
突然キョロキョロと視線を動かしたあと、フェイトさんは明後日の方向を向きながら呟いた。
「いや、気を使ってシャルたんかなり離れてるみたいだから……お~い、シャルたん~! この魚って食べれるの~?」
ああ、なるほど、アリスを探してたのか……フェイトさんが大きな声でアリスを呼ぶと、直後にアリスが姿を現して俺の釣った魚を見る。
「あ~この魚は、いちおう食べれることは食べれますが、身が硬くて味も泥臭いので他の魚食べたほうがいいですよ」
「そっか~残念。教えてくれて、ありがと。シャルたんなんでも知ってるから、調べものに便利だよね」
「人を便利な検索ツール扱いするのやめてください。じゃ、私はこれで」
笑顔のフェイトさんに呆れたような表情を浮かべつつ、アリスは再び姿を消した。
「……なんだかんだ言って、聞いたらちゃんと教えてくれるから優しいよね」
「根本的に、面倒見がいいんですよね」
アリスらしい様子を見て、俺とフェイトさんは顔を見合わせて苦笑した。