作品タイトル不明
薔薇姫の来訪⑦
ロズミエルさんとの雑談は楽しく、あっという間に時間は過ぎていき、そろそろロズミエルさんは帰るということになった。
するとちょうどそのタイミングで、見計らったかのようにネピュラが手提げ袋を持ってやってきた。
「主様、お土産の砂糖のアソートをお持ちしました。こちらを主様からロズミエルさんにお渡しください」
「ありがとう、ネピュラ……あれ? もうひとつの袋は?」
ネピュラの手にはふたつの袋があり、ひとつはなんと言うかお洒落な感じでお土産用だと分かる袋だ。もうひとつは柄のないシンプルなデザインでチラッと見た感じ、どちらも中には同じぐらいのサイズの箱が入っていた。
たぶんどちらの袋にもアソートの砂糖が入っているんだろうが、なぜふたつ?
「ひとつは、主様の分です。他の種類にも興味があるみたいだったので」
たしかに、他の種類があると聞いた時に他のものがどんな感じなのか興味を持ったが、それを察したネピュラがわざわざ俺の分もアソートで用意してくれたみたいだ。
「そっか、たしかに俺も欲しいと思ったけど、ネピュラにはお見通しだったか」
「妾は絶対者ですからね!」
「あはは、そっか……やっぱりネピュラは凄いな、ありがとう」
可愛らしく胸を張るネピュラの頭を優しく撫でると、ネピュラは嬉しそうに微笑んだあとで俺に袋を渡して家の中に戻っていった。
ロズミエルさんに気を使ってくれたのだろう。直接渡すのではなく俺を経由するあたりも、ネピュラはかなり的確にロズミエルさんの人見知りを把握しているみたいだ。
「それじゃあ、ロズミエルさん。これをどうぞ、今日は本当に楽しかったです。ありがとうございました」
「う、ううん、私の方こそありがとう。お礼に来たはずなのに、逆にいっぱい貰っちゃって申し訳ないけど……私も今日は、凄く楽しかったよ」
「そう言ってもらえると、俺も嬉しいです」
「も、もし、カイトくんさえよければ、今度は私の家に遊びに来て。私の家にある花も見て欲しいから」
「それは、楽しそうですね。では、次の機会には是非」
「うん」
今日の雑談の中で聞いた話では、ロズミエルさんの家はユグフレシスの近くにある場所で『万花の園』と呼ばれている場所らしい。
ただ、基本的に一般人は結界で立ち入ることができないらしく、幻のスポットとして有名らしい。
なお、なぜ一般人が入れないのかというと、それは言わずもがなだろう。万花の園はロズミエルさんが管理している花畑なのだが、当然人見知りのロズミエルさんが観光地としてそこを解放できるわけもなく、ロズミエルさんの知り合い以外は立ち入り禁止とのことだ。
今後の楽しみがまた一つ増えたことを嬉しく思いつつ、手を振って帰っていくロズミエルさんを、同様に手を振って見送った。
ユグフレシスの近くにある万花の園、その中心にある薔薇姫ロズミエルの家では、ロズミエルが上機嫌に部屋に置いている花の手入れをしていた。
今日快人と過ごした時間は非常に楽しく会話も弾んだことで、いまの気持ちはとてもよかった。
そんなロズミエルの家のベルが鳴り、来客を知らせる。
「……失礼しますね、エリィ」
「リア? いらっしゃい」
やってきたのは同じ七姫でもあり、親友でもあるカミリアであり、軽く首を傾げつつも迎え入れる。
そして席に座ったカミリアの前にローズティーを用意して置いた。
「ありがとうございます。突然すみません、エリィ」
「ううん、でもこの時間に来るのは珍しいね。どうしたの?」
カミリアの向かいの席に座りながらロズミエルが尋ねると、カミリアはどこか心配そうな表情を浮かべて口を開いた。
「いえ、一応確認をと思いまして」
「確認?」
「ええ、『明日』なんですが……本当に私が付いていかなくても大丈夫ですか? いくらカイトさんと話せるようになったとはいえ、家には他の人もいるでしょうから心配で……」
「……え? あし……た?」
カミリアが告げた言葉を聞いて、ロズミエルは驚いたような表情と共に聞き返す。
「うん? いえ、ですから、明日……天の月15日目に、カイトさんの家にお礼に伺うんでしょ? それの確認を……」
「………………ね、ねぇ、リア……ひとつ聞いていいかな?」
「なんですか?」
「今日……って、そ、その……天の月14日目、だよね?」
「え? ええ、その通りですか?」
カミリアの言葉を聞いて唖然とした表情を浮かべたあと、ロズミエルは壁に付けているカレンダーに視線を向ける。
そのカレンダーの天の月15日目のところに印がしており……それを見てようやくロズミエルは、快人との約束の日にちを勘違いしていたことに気付いた。
「あわ、あわわわわわ……」
「エ、エリィ? ど、どうしたんですか?」
「ややや、やちゃった……わわ、私……今日カイトくん家に行っちゃった!?」
「えぇぇぇ!?」