軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

桜花の侍姫③

テンションがグンと上がったブロッサムさんに若干気圧されつつ、俺はなんとかブロッサムさんの誤解を解こうとする。

「いや、ブロッサムさん俺はサムライマスターではなくて……」

「なるほど、ところでサムライマスター、部屋や庭などの改善点はありますか? 是非その辺りも聞いてみたいのです!!」

……いまなんに対して「なるほど」って言ったの!? 駄目だこの人、カミリアさんの言ってた通りテンション上がるとこっちの話をまったく聞いてくれない。

「えっと、部屋や庭についてもアドバイスしますので、とにかくサムライマスターという呼び方はやめてください」

「分かりました! それで、『マスター』、本場の方から見てどのあたりを改善するべきでしょうか?」

……確かに、やめたね。俺の要望通り、サムライマスターという呼び方はやめたね……サムライが消えただけだけどね!?

駄目だ。もうテンション上がりまくってる感じがするし、いま直させるのは難しいかもしれない。先にブロッサムさんの質問に答えることにするか……。

しかし、正直その辺の和風関連に関してはアドバイザーとしてノインさんあたりに来てほしいところである。侍うんぬんに関しては、ノインさんも聞かれても困るだろうけど……庭とか部屋とかに関しては、絶対ノインさんが強いはずだ。

「とりあえず俺の印象としては少しものを置きすぎかと……いろいろ置きたいという気持ちは分かるんですが、わびさび……質素で静かな雰囲気も大切ですし、もう少しものは減らしたほうがいいかと」

「ふむふむ、なるほど! 勉強になります!!」

滅茶苦茶真剣な表情でメモを取っていらっしゃる。根は凄く真面目で真っ直ぐな人なんだよなぁ……ブレーキは壊れてそうな感じだけど……。

「あと……あの掛け軸の文字は?」

「アレは異世界でサムライを意味する字を調べて拙者が書きました!」

「……間違ってますよ」

「そうなのですか!?」

掛け軸に書かれているのは、侍ではなく待だ。侍を待に直すのは一画足せばいいので可能だろうが、その逆の修正は無理だろう。

とりあえず正しい侍という漢字を書いて見せて、間違いを教えるとブロッサムさんはグッと拳を握りつつ悔しそうな顔を浮かべる。

「やはり、書も一日にしてならずなのですね! 異世界の文字が書かれたカッコいい掛け軸を飾りたかったのですが、それらしいものが見つからず自作しましたが……字が間違っていたとは! 不覚!!」

「まぁ、漢字ってややこしいですからね……ひとつ確認しますが、欲しいのは掛け軸であって、必ずしも侍って字が入っている必要はないんですか?」

「ええ、拙者が知っている異世界独自の言葉で調べやすかったのがサムライだったというだけです」

ブロッサムさんが侍という字にそれほど強い拘りは無いことを確認したあと、俺はマジックボックスから一枚の掛け軸を取り出す。

「……俺の知り合いが書いたものなんですけど、いりますか?」

「こ、これは掛け軸、しかもなにやら異世界の文字が……これはなんと書かれているのでしょうか?」

「えっと、ちょっと待ってくださいね。その知り合いに、貰ったメモが……えっと『 面壁九年(めんぺきくねん) 』といって、ひとつの目標に向かって粘り強く月日をかけて努力するっていう意味の言葉らしいです」

「……か、かっこぃぃ……」

掛け軸を見てキラキラと子供のように目を輝かせるブロッサムさん、どうやら気に入ってもらえたらしい。

ちなみに俺が取り出した掛け軸は、ノインさんが書いたものだ。なぜそんなものを俺が持っているかというと、話は六王祭が終わって数ヶ月経った辺りにまで遡る。

美味しい茶菓子が手に入ったということでノインさんが招待してくれ、クロの城にあるノインさんの部屋で一緒に茶を飲んだ時にある相談を受けた。

というのも、ノインさんは現在これといった仕事はしておらず、基本的にクロからのお小遣いや家族の仕事を手伝ったりした際のお駄賃によってお金を得ている。

しかし、ノインさんとしてはその現状を変えてなんとか自身でも収入を得たいとのことだったが……ここで問題となるのが、ノインさんが世界的に有名かつ死亡説や生存説も多くあるような初代勇者であるということ。

少なくともどこかの商会に入って~などというのは難しい。ノインさんは認識阻害魔法も苦手みたいなので、就ける仕事は限られてしまうので、どうするかと悩んでいたのだ。

その時にたまたまノインさんが書道も嗜んでいることを知り、掛け軸とかが売れるのではないかと提案したことがある。

実際ブロッサムさんのように異世界の文化に興味のある人は多かったみたいで、結構安定して売れているとのことだ。

ちなみにこの掛け軸は、シンフォニア王国にある店舗でもノインさんの掛け軸が販売されると聞いて買ってきたものである。まぁ、書いてる四字熟語の意味は分からず、ノインさんに聞いたのだが……。

「こ、ここ、このような逸品をいただいてもいいのですか!?」

「ええ、というか……これ一般販売されてますし、他にもいろいろな種類がありますよ」

「そうなんですか!? い、いったいどこでこのような素晴らしい品が……」

「また今度、売ってるお店を教えますよ」

実際日本文化に興味津々のブロッサムさんと、ノインさんの相性はよさそうな気がするし、茶飲み友達とかにもなれそうな気がする。

また今度、ノインさんにも相談して紹介することにしよう。