軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

閑話・ノイン~相談事~

ある日ノインさんに手紙で相談事があると言われ、クロの居城にあるノインさんの部屋にやってきた。

クロの居城に住む家族にはそれぞれ部屋が与えられているのだが、時空間魔法で空間を拡張しているため部屋とは言ってもかなり広い。

ノインさんの部屋に至っては、入ると砂利道があり平屋まである始末である。部屋の中に家というのも不思議な構図ではあるが、どうしても縁側が欲しかったとのことで庭と家を作ったみたいだ。

まぁ、元々部屋にしては広すぎるぐらいの空間だった上、壁にも魔法で細工をして青空や夕日が映し出されているので、本当に言われなければ部屋の中であると忘れてしまいそうだ。

そんな家の縁側に面した部屋で、簡素ながら整っている庭を眺めていると、ノインさんが緑茶俺の前のテーブルに置いてくれた。

「粗茶ですが」

「ありがとうございます」

「今日は突然お呼びして申し訳ありません」

「いえ、気にしないでください……相談があるってことでしたけど?」

畳の間でお茶をいただくという、なんとも和風な雰囲気に浸りつつも本題である相談事について尋ねると、ノインさんはなにやら神妙な表情を浮かべた。

これは、思った以上に重要な相談かもしれない……心して聞かないと……。

「ええ、実は……『私もなんらかの収入を得る手段が欲しい』のです」

「……うん?」

「快人さんもご存知だとは思うのですが、私は現在クロム様からのお小遣いで金銭を得ているのです」

「そんな話を前に聞きましたね」

ノインさんは……というか、クロの家族には毎月クロからお小遣いを渡される。定期収入があるという理由で貰ってない方が大半らしいが、ノインさんは基本的にクロからお小遣いをもらっている。

本人も結構気にしているみたいで、初めに聞いた際には滅茶苦茶言い辛そうにしていた。どうやら、今回の相談はその現状を改善するためのものということみたいだ。

「……ちなみになんで俺に?」

「家族以外で、あまり知り合いがいないもので……家族に相談すると、その、簡単な手伝いでお駄賃を貰うような形になってしまうので……」

「あ~なるほど」

ノインさんは現在クロの家族の中で末っ子であり、かなり可愛がられているというのはクロからも聞いたことがある。

ノインさんにお駄賃を上げたいためだけに、あえて凄く簡単な手伝いをお願いする人もいるとか。

「事情は分かりましたけど、結構難しいですね。けど、そういえば、クロに聞いたんですけど……度々ノインさんは、クロの護衛として同行したりしてるんじゃなかったですっけ?」

「……快人さん、クロム様に護衛が必要だと思いますか?」

「……思いません」

「私が気にしてるのを知っているクロム様が、気を使ってくれてるだけなんです……」

「なるほど…‥う~ん」

ノインさんの望みは分かったが、正直これはなかなかに難しい。家族の手伝いとか以外で収入を得ようとすると、どうしても顔を明かせない事情が足を引っ張ってくる。

初代勇者であるノインさんは世界でも屈指というレベルで有名人なわけだし、そもそも生存していることが知られれば大騒ぎになりそうだ。

ノインさんは認識阻害魔法とかもあまり得意ではないみたいなので、顔を知られずかつ家族の手伝い以外の仕事となると、かなり難しい。

「……いっそ何かを作って売ったりするのはどうですか? 販売だけ、利益の一部を渡す形でゼクスさんとかに委託するとか」

「よい案だとは思うのですが、私は剣術ぐらいしかやってこなかったので、手に職と言われてもなにも無いんですよね」

「あ~たしかに、なんだかんだで売れるレベルのものを作るのって大変ですしね」

パッと思いついたにしてはいい案だと思ったが、たしかに皆が皆アリスみたいに器用なわけでもないし難しいか……イメージ的にはノインさんて、結構いろいろ作れそうな感じもするが……。

どうしたもんかと考えながら視線を動かしていると、ふと部屋の壁に掛けられていた掛け軸が目に留まった。かなり達筆で見事なものだが……なんか違和感が……あっ、そうか!

「ノインさん、あの掛け軸って『漢字』が書かれてますけど、どこかで販売してたんですか?」

「え? ああ、いえ、アレは私が作ったものです。あまり和室に合うインテリアが見つからなくて、自作しました。嗜む程度ですが書道をやっていましたので」

「手紙の字とかもかなり達筆ですもんね。思ったんですけど……アレって売れるんじゃないですか?」

「掛け軸が、ですか?」

「ええ、異世界の文化に興味を持ってる人って結構居ると思うんですよ。俺の知り合いも、縁側を作ったりしてましたし……なので、異世界の文字が書かれた掛け軸も売れるんでは?」

「な、なるほど……たしかにソレなら、ものすごく沢山売れるものでも無く、興味のある方にのみ売れるものなので、個人製作でも十分間に合いそうですね」

「値段は高めでいいと思いますよ。あとは、こんな言葉を異世界の文字で書いてほしい~とかの注文を受けて作るのもありかもしれませんね。まぁ、具体的な売り方はクロとかに相談するのがいいと思いますが……」

正直我ながらなかなかいいアイディアだと思うし、ノインさんにも好感触だったみたいで、真剣な表情で考え込んでいる。

掛け軸って個人的にも結構カッコいいと思うし、洋室に合うかどうかは置いておいて、実際に販売されたら応援の意味も込めて何個か買うことにしよう。